坂本龍右

奈良出身、スイス・バーゼル在住のリュート奏者。ヴィオラ・ダ・ガンバも弾き、たまに歌いま…

坂本龍右

奈良出身、スイス・バーゼル在住のリュート奏者。ヴィオラ・ダ・ガンバも弾き、たまに歌います。何よりもルネサンス音楽、そしてポリフォニー音楽が好き。趣味は仏像彫刻・鉄道・図柄集めなど。リュートのソロを含めCD録音多数。公式サイト:http://ryosukesakamoto.com/

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記事一覧

ちょうど30年前(1994年)の古楽コンクール

若い音楽家たちにとって、とりわけソリストを志す者たちにとって避けて通れないもの・・それがコンクールです。 私もご多分にもれず、ソロ・アンサンブルともに国内外のコ…

坂本龍右
3週間前
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あこがれの名器で新しい挑戦!

新しい年度が始まってから、もうそろそろ一か月。 今までとは違った環境で、新しいことにチャレンジしておられる方も多いことでしょう。 私のほうでは、今年に入って大き…

坂本龍右
3週間前
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恩師への恩返し

2023年の大きな出来事・・それはコロナ渦前から数年を費やして翻訳にあたっていた書籍が、ついに日本の出版社から出たことです! その原書は、こちら。 私の音大時代の恩…

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坂本龍右
4か月前
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雑誌『Early Music』創刊から半世紀!

さて、2023年も残すところ少なくなってまいりました。 個人的に今年は、公私ともにいろんなことが起こりすぎて、年明けから順に起こったことを振り返る余裕すらないという…

坂本龍右
4か月前
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【全文公開!】ジョアン・ボロナート・サンス(チェンバロ/オルガン奏者)へのインタビュー

数年前から続けてきている『De Missione Musicorum 音楽と宣教の旅』、そしてこの度の『ぐるりよざ!海を越えた音楽』のプロジェクトにおいて、大きな役割を果たしてくれて…

坂本龍右
5か月前
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海を渡ったルネサンス音楽

みなさんはルネサンス時代のヨーロッパ音楽が、当時の日本にも伝わっていたことをご存じでしょうか? それは戦国時代の終わり頃から信長・秀吉が君臨した安土桃山時代を経…

坂本龍右
5か月前
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失敗を共有するということ

スイスの音大の学期は先週で一区切りとなり、待ちに待った夏休みに入りました。 対して、ドイツの私の勤務先では大学のスケジュールはほぼ1ヶ月遅れで、まだ全ての授業や…

坂本龍右
10か月前
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あっという間に

このほど、節目の誕生日を迎えました。 端的に言うと10の位の数が一つ増えました。まさしくあっという間に・・ バーゼルに住む音楽仲間たちが、サプライズでこんなものを…

坂本龍右
1年前
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Ars longa, vita brevis

坂本龍一氏が、長い闘病の末に亡くなりました。 スイスでも「教授」の死去は大きく報じられたようで、つい先日には、訃報を伝えるドイツ語の新聞記事を、こちらに住む方の…

坂本龍右
1年前
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【リュートタブ譜公開!】William Byrd: Mass for Three Voices/ Intabulation for Renaissance lute by Ryosuke Sakamoto (2023…

先日YouTubeチャンネルで公開した、ウィリアム・バード作曲による3声のミサ曲のリュートソロ用編曲について、楽譜の購入希望を何件かいただいたので、このたびnoteの有料記…

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坂本龍右
1年前
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【お知らせ】4月以降の記事について

日本では、もう年度末になりましたね。 コロナ禍を機に始めたnoteも、早いもので3年目へと突入です。 今月だけで一気にまとめて記事を書きましたが、これまた自分にとっ…

坂本龍右
1年前
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形あるものはやがて滅びる

物心ついた頃から、いまだに頭の片隅にこびりついて離れない一文があります。 「形あるものはやがて滅びる」 私がこの言葉を聞いたのは、国民的作家として知られる井上靖…

坂本龍右
1年前
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ウィリアム・バードのミサ曲が弾きたい!

今年もまた、3月21日の「古楽の日」がやってきたので(この日についての記事はこちら)、それに合わせて久しぶりに自分のYouTubeチャンネルを更新しました。 こちらが新し…

坂本龍右
1年前
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スイス最大のお祭り!バーゼルのファスナハト

スイスでも特に有名なお祭りがあります。 それが、私の住んでいるバーゼルの町を舞台に、つい先週月曜日から水曜日にかけて盛大に行われた「ファスナハト Fasnacht」。 …

坂本龍右
1年前
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リュートを携えて未踏の地へ

ここ数日、朝晩を中心に冷え込むことも多くなり、日中に散歩に出てもすっかり秋の風を感じるようになりました。 さて皆さま、しばらくご無沙汰しております。 7月そして…

坂本龍右
1年前
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私のパリ散歩2022【後編】

後編は、さらに現地で撮った画像が多めでまいりましょう。 前編はこちら。 https://note.com/contrapvnctvs/n/ncc4303225b5f 前回の記事の最後の地点、すなわち「クロー…

坂本龍右
1年前
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ちょうど30年前(1994年)の古楽コンクール

ちょうど30年前(1994年)の古楽コンクール

若い音楽家たちにとって、とりわけソリストを志す者たちにとって避けて通れないもの・・それがコンクールです。

私もご多分にもれず、ソロ・アンサンブルともに国内外のコンクールには何度か挑戦しましたが、最後にエントリーしてから随分と年月が経ちました。
年齢的に考えて、この先コンクールに挑戦することはまずないと思います。

したがって今では、コンクールの話題になると完全に傍観者の立場です。
この4月上旬に

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あこがれの名器で新しい挑戦!

あこがれの名器で新しい挑戦!

新しい年度が始まってから、もうそろそろ一か月。
今までとは違った環境で、新しいことにチャレンジしておられる方も多いことでしょう。

私のほうでは、今年に入って大きな節目となる出来事がありました。

長い間、ずっと手に入れたいと思っていたあこがれのモデルのリュートが、ひょんなことから自分の元にやってきたのです。

その楽器がこちら。

17世紀初頭の英国モデルの9コース・リュートです。

この

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恩師への恩返し

恩師への恩返し

2023年の大きな出来事・・それはコロナ渦前から数年を費やして翻訳にあたっていた書籍が、ついに日本の出版社から出たことです!

その原書は、こちら。

私の音大時代の恩師であるアン・スミス(Anne Smith)氏が2011年にオックスフォード大学出版局から出版した、16世紀の音楽の演奏法に関する書籍 『The Performance of 16th-Century Music: Learning

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雑誌『Early Music』創刊から半世紀!

雑誌『Early Music』創刊から半世紀!

さて、2023年も残すところ少なくなってまいりました。

個人的に今年は、公私ともにいろんなことが起こりすぎて、年明けから順に起こったことを振り返る余裕すらないというのが正直なところですが、せっかくなのでもっと大きいスパンで、今年を象徴する出来事を一つご紹介することにします。

私の専門であるヨーロッパの古楽と呼ばれる分野で、最も権威ある学術雑誌と見なされている『Early Music』(アーリー

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【全文公開!】ジョアン・ボロナート・サンス(チェンバロ/オルガン奏者)へのインタビュー

【全文公開!】ジョアン・ボロナート・サンス(チェンバロ/オルガン奏者)へのインタビュー

数年前から続けてきている『De Missione Musicorum 音楽と宣教の旅』、そしてこの度の『ぐるりよざ!海を越えた音楽』のプロジェクトにおいて、大きな役割を果たしてくれているジョアン・ボロナート・サンスへのインタビューが先日活字化されました。

ReRenaissanceの運営チームが聞き手となり、毎回初出演となる出演者に生い立ちや興味ある音楽活動、その他のことについて質問していく形を

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海を渡ったルネサンス音楽

海を渡ったルネサンス音楽

みなさんはルネサンス時代のヨーロッパ音楽が、当時の日本にも伝わっていたことをご存じでしょうか?

それは戦国時代の終わり頃から信長・秀吉が君臨した安土桃山時代を経て、江戸幕府の第三代将軍家光の治世に、いわゆる鎖国体制が完成するまでの約半世紀強の間のできことです。

いわゆる南蛮文化が花開いた時代、またはキリシタン(切支丹)の時代です。

ポルトガル人の種子島上陸による鉄砲伝来(1543年)、イエズ

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失敗を共有するということ

失敗を共有するということ

スイスの音大の学期は先週で一区切りとなり、待ちに待った夏休みに入りました。

対して、ドイツの私の勤務先では大学のスケジュールはほぼ1ヶ月遅れで、まだ全ての授業や試験は終わっていないため、これから今月末までにまだ何回か出かけることになります。

このところ暑い日が続いていて、町を歩くと連日ライン川へ泳ぎに繰り出す人たちでいっぱいなのを見ると、自分もついバカンス気分になってしまいます。

バーゼルの

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あっという間に

あっという間に

このほど、節目の誕生日を迎えました。

端的に言うと10の位の数が一つ増えました。まさしくあっという間に・・

バーゼルに住む音楽仲間たちが、サプライズでこんなものを用意してくれました。

レトロなトラムを貸し切って、車内パーティー!

『Extra Wagen』、つまり『特別車両』と書かれたプレートが掲げられていますね。
いかにも時代を感じさせてくれる車両は1900年製造で、なんとバーゼルに残る

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Ars longa, vita brevis

Ars longa, vita brevis

坂本龍一氏が、長い闘病の末に亡くなりました。

スイスでも「教授」の死去は大きく報じられたようで、つい先日には、訃報を伝えるドイツ語の新聞記事を、こちらに住む方のお宅を訪ねた際に切り抜きでもらいました。
その際、「もしかして君はこの人と親戚?」と聞かれましたが、残念ながら違います!

何しろ漢字で書くと自分とは一字しか違わないので、生前この人の名前をテレビやら新聞記事やらで目にすると、いつもちょっ

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【リュートタブ譜公開!】William Byrd: Mass for Three Voices/ Intabulation for Renaissance lute by Ryosuke Sakamoto (2023)

【リュートタブ譜公開!】William Byrd: Mass for Three Voices/ Intabulation for Renaissance lute by Ryosuke Sakamoto (2023)

先日YouTubeチャンネルで公開した、ウィリアム・バード作曲による3声のミサ曲のリュートソロ用編曲について、楽譜の購入希望を何件かいただいたので、このたびnoteの有料記事の部分に、リュート・タブラチュアに浄書した全曲の譜面へのリンクを掲載することにしました。

譜面は全部で7ページ、PDF形式です。バードの時代に英国のリュート奏者たちが使用していたのと同じ譜面、すなわち現代では一般にフランス式

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【お知らせ】4月以降の記事について

【お知らせ】4月以降の記事について

日本では、もう年度末になりましたね。
コロナ禍を機に始めたnoteも、早いもので3年目へと突入です。

今月だけで一気にまとめて記事を書きましたが、これまた自分にとっては長引く海外生活の中、日本語でまとまった文章を書くリハビリとして立派に機能しています。
お読み下さった皆様、そして高評価をつけていただいた方々には心より感謝を申し上げます(この前のファスナハトの記事は、note公式から週間の注目記事

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形あるものはやがて滅びる

形あるものはやがて滅びる

物心ついた頃から、いまだに頭の片隅にこびりついて離れない一文があります。

「形あるものはやがて滅びる」

私がこの言葉を聞いたのは、国民的作家として知られる井上靖(1907~1991)の口を通してです。

NHKの30分番組『国宝への旅』で、法隆寺金堂の仏像を取り上げた回がありました。
その番組内で、井上靖がこの言葉を発していたのが強烈に印象に残っています。

ネット上でデータを確認すると、この

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ウィリアム・バードのミサ曲が弾きたい!

ウィリアム・バードのミサ曲が弾きたい!

今年もまた、3月21日の「古楽の日」がやってきたので(この日についての記事はこちら)、それに合わせて久しぶりに自分のYouTubeチャンネルを更新しました。

こちらが新しい動画です!

今年没後400年を迎えたウィリアム・バード(1540頃~1623)のミサ曲を、リュート独奏用に編曲しました。
暗いところから蝋燭に火をともしたり、曲の切れ目にオリジナルの楽譜を表示したり、画角にもできるだけ凝って

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スイス最大のお祭り!バーゼルのファスナハト

スイス最大のお祭り!バーゼルのファスナハト

スイスでも特に有名なお祭りがあります。

それが、私の住んでいるバーゼルの町を舞台に、つい先週月曜日から水曜日にかけて盛大に行われた「ファスナハト Fasnacht」。

要するに謝肉祭で、特にバーゼルで行われるものは「バズラー・ファスナハト Basler Fasnacht」と呼ばれて長く親しまれてきました。

バーゼルの町には、「クリッケ Clique」と呼ばれるファスナハトのための組合、昔流に

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リュートを携えて未踏の地へ

リュートを携えて未踏の地へ

ここ数日、朝晩を中心に冷え込むことも多くなり、日中に散歩に出てもすっかり秋の風を感じるようになりました。

さて皆さま、しばらくご無沙汰しております。

7月そして8月と、夏休みの間にこちらの記事を更新できずにいたのは、この期間限定で週2ペースで収録していたラジオ番組(!)の編集作業に、PCに向かう時間の大半を費やしていたためです。
これからはまた、暇を見つけて投稿していきたいと思います。

とこ

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私のパリ散歩2022【後編】

私のパリ散歩2022【後編】

後編は、さらに現地で撮った画像が多めでまいりましょう。

前編はこちら。

https://note.com/contrapvnctvs/n/ncc4303225b5f

前回の記事の最後の地点、すなわち「クローヴィス通り」を、「デカルト通り」との交差点を過ぎてさらに歩いて行くと、これが出現します。

ジャジャーン!
中世のパリ市街を囲んでいた城壁が、見事に「それらしい形で」残っている箇所。

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