マガジンのカバー画像

競馬を愛する人

19
私の書いた記事で、競馬に関するものをまとめています
運営しているクリエイター

記事一覧

宮本輝「不良馬場」あの日の仁川の阪急杯 競馬の持つ悲しみについて

宮本輝「不良馬場」あの日の仁川の阪急杯 競馬の持つ悲しみについて



宮本輝 短篇集『星々の悲しみ』より

「不良馬場」

ある春先の休日、河野勲は雨の降りしきる中、阪急電鉄今津線のとある駅に降り立つ。それは入院中の同僚、寺井隆志を見舞うためであった。

寺井は若くして肺病に冒され、すでに2年もの間この病院内の隔離施設への入院を続けていた。

河野と寺井は大学時代から苦楽を共にし、会社の同期でもある深い仲だ。

だが、河野は友人にして同僚である寺井を見舞うことを

もっとみる
【エルムS・レパードS】ダート重賞ウィークにダート種牡馬を勉強しよう

【エルムS・レパードS】ダート重賞ウィークにダート種牡馬を勉強しよう

なかなか暑さの収まらない8月第一週。

今週はダート重賞ウィーク。
新潟で3歳限定重賞G3レパードS(1800m)、札幌でG3エルムS(1700m)が開催される。

じつはJRA開催週でダート重賞のみ、というのは1年でもこの週だけ。
ダート重賞がふたつ、という特異な週末となるが、どうせならこの二つのレースを利用して、ここで日本競馬のダート血統について学習してみよう。

※なお、芝を中心とする競走馬

もっとみる
オーギュストロダンに突き刺さるアイルランド・カラ競馬場スタンドの大屋根

オーギュストロダンに突き刺さるアイルランド・カラ競馬場スタンドの大屋根



競走馬オーギュストロダン(愛)が、英ダービーに続いてアイルランド・ダービーも勝利した。
オーギュストロダンは、2019年に死亡した種牡馬ディープインパクトのラストクロップ(最終世代)。

日本国内に6頭、国外6頭、計12頭しかいない僅かな産駒の中から、欧州ですでにG1三勝を挙げる歴史的な名馬が誕生した。

オーギュストロダンはこの後キングジョージから秋には英インターナショナルSに向かうという報

もっとみる
ノリ「あいつはマジで“ヤバい”」横山武史はダービーで頂点まで届くか?

ノリ「あいつはマジで“ヤバい”」横山武史はダービーで頂点まで届くか?

盛り上がりを見せる2023年のクラシック戦線

私の記憶が間違いではなければ、春先まで今年の牡馬クラシック世代は低レベルだと言われていたはずだ。
「スター不在」そんな言葉が飛び交っていたように思う。

それがどうだ。

混戦模様だった皐月賞で豪脚を繰り出しソールオリエンスが勝利。
4角後方17番手から他馬をゴボウ抜きした末脚は、ライバルが止まって見えるほどだった。

さらに直線の伸びる東京競馬場で

もっとみる
2023年のオークス ゴルシ牝馬、ここで買わなきゃどこで買う!?

2023年のオークス ゴルシ牝馬、ここで買わなきゃどこで買う!?

ゴールドシップといえばGⅠ6勝の実績とともに、とんでもないズブさで騎手泣かせ、気分によっては全く走らないなど、エピソードには事欠かない稀代のクセ馬だが、種牡馬となってからもその個性を存分に発揮している。

ゴールドシップ産駒の2020年~2022年の3年間での芝・平均勝ち馬距離は2,013m。

これは種牡馬の中でも群を抜いて高い数値で、長距離馬を多数輩出した父ステイゴールドの上を行く数字だ(ステ

もっとみる
吉永みち子『気がつけば騎手の女房』女性競馬記者とミスターシービーの三冠ジョッキー

吉永みち子『気がつけば騎手の女房』女性競馬記者とミスターシービーの三冠ジョッキー

V.S.O.P 吉永正人との出会い

そう声を掛けられたのが、みち子と吉永正人の出会いだった。

みち子が競馬専門紙の記者を辞め、タブロイドの夕刊紙の編集に移ったばかりの頃だった。

『日刊ゲンダイ』の新企画、騎手へのインタビュー第一弾として吉永正人とのアポイントメントを取付けたものの、みち子は折からの多忙によって疲れ切っていた。

夕刻、京王東府中駅に着き、車で迎えに来るという吉永を待つ間に、み

もっとみる
59キロで勝っちゃったヴェルトライゼンデ。日経新春杯とテンポイント

59キロで勝っちゃったヴェルトライゼンデ。日経新春杯とテンポイント

JRAの新規定 負担重量の増加

今年2023年から、JRAの負担重量の基準が変わり、より重い斤量負担が強いられることになった。
その基準は各条件によって細かく規定されているのだが、大まかに言って古馬G1などの別定重量は基礎重量が58キロに統一されることになった。

その理由として、昨年10月17日に行われたJRAの定例会見では「騎手の健康と福祉、および将来にわたる優秀な騎手の人材確保の観点から」

もっとみる

人生で初めて当たった馬券 マグナーテンはまだ元気

誰しも、自分が初めて当たった馬券というのは、忘れられないものだと思う。

私の馬券が初めて当たったのは、2003年のアメリカジョッキークラブカップ(AJCC)だった。

初めて馬券を「買った」のは、2か月半前の天皇賞(秋)。
珍しく中山競馬場で開催された天皇賞で、私はナリタトップロード‐ダンツフレームの馬連500円の一点買い。
結果は3歳馬シンボリクリスエスが勝ち、ナリタトップロードは2着になった

もっとみる
2020年代日本競馬の血統学 血統入門の決定版 吉沢譲治『競馬の血統学』を引継いで

2020年代日本競馬の血統学 血統入門の決定版 吉沢譲治『競馬の血統学』を引継いで



吉沢譲治『競馬の血統学』の概要
吉沢譲治『競馬の血統学』。

1998年、JRA賞馬事文化賞受賞作である。
しかし、そんな煌めくような額面などなくとも、一読すればこの著作の価値は分かる。

競馬は古くはブラッドスポーツと言われ、父と母から受け継ぐ血脈が、生まれてくる競走馬の能力を先天的に大きく左右する。

17世紀イギリス、産業革命の始まりと軌を一にして始まったサラブレッドの生産は、わずか数百

もっとみる
カルストンライトオ JRA史上最速の韋駄天 2004年スプリンターズステークス

カルストンライトオ JRA史上最速の韋駄天 2004年スプリンターズステークス

2004年 雨の中のスプリンターズステークス

個性派の、他から抜きん出た特徴をもった馬というのは、なかなか忘れがたいものだ。

2004年スプリンターズステークスの覇者、カルストンライトオはまさしくそんな馬だった。

彼にこそ、韋駄天という二つ名がふさわしい。
カルストンライトオが「JRA史上最速の馬」であったことに異論を差し挟む者は、競馬ファンの中には少ないだろう。
彼は本当に速かった。

もっとみる
清水成駿◎ボールドエンペラー 1998年日本ダービー 成駿はホントは何と言っていたのか

清水成駿◎ボールドエンペラー 1998年日本ダービー 成駿はホントは何と言っていたのか

今年もダービーウィークとなった。2022年5月29日、東京競馬場では第89回の東京優駿が開催される。
ダービーといえば、今でも語り草となっているのが1998年スペシャルウィークが優勝した第65回だ。1着こそ1番人気のスペシャルウィークだったものの、2着に14番人気のボールドエンペラー、3着に15番人気のダイワスペリアーが飛び込み、馬連は13,100円の万馬券となる大波乱となった。

当初スペシャル

もっとみる
「オークスは馬体重の軽い馬を買え!」格言は本当か?

「オークスは馬体重の軽い馬を買え!」格言は本当か?

今年はもう済んだ話になってしまうのだが、オークス(優駿牝馬)の話である。

今回(2022年)の第83回オークスで、私が狙ったのはピンハイであった。結果、4着に敗れた。とはいえ、13番人気だったピンハイが4着にまで順位を上げたのだから、なかなかに善戦したと言える。これで桜花賞5着、オークス4着と連続して掲示板に載り、牝馬クラシックでなかなかの結果を出していることになる。

さて、チューリップ賞2着

もっとみる
やはりディープインパクトは最強馬!? 東スポ調教評価9点の謎を追え!

やはりディープインパクトは最強馬!? 東スポ調教評価9点の謎を追え!

東京スポーツ紙を、買っているだろうか?
私は毎週金土曜日には欠かさず買っている。それはもちろん競馬欄のためだ。
夕刊紙の中では情報量が抜きん出ていて、しかも競馬専門紙と比べて格段に安価である。前日夜から時間をかけてゆっくり予想をしようという競馬愛好家にとっては、東スポはこの上ない情報紙だと思う。

東スポの調教評価

東スポの競馬欄の馬柱には、一番下段の方に調教欄があり、調教メニューとタイム、そし

もっとみる
ヒシミラクル、奇跡の記憶 宝塚記念予想(2022)

ヒシミラクル、奇跡の記憶 宝塚記念予想(2022)

春のG1シリーズを締めくくる宝塚記念。このレースは、年末の有馬記念に比肩するグランプリレースを関西にも、ということで阪神競馬場の改修が完了した1960年に創設された。
八大競走ではない後発のレースだったことから、当初は一流馬を集めることもままならなかったが、G1に指定され、イナリワン、タマモクロス、メジロマックイーンが勝利を挙げるなど次第にレースの格付けも上がっていき、現在では春競馬を締めくくる中

もっとみる