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はじめに・作品リスト
「死ぬまでに観たい映画1001本」という本を知ってますか?
映画黎明期から現在までの世界中の名作と呼ばれる1001本の作品を厳選して、紹介するというとてつもなく手間がかかった本です。
リストはどのレンタルショップにも置いてある名作からすでに廃盤、未だにDVD化どころかソフト化すらない、日本未公開映画などバラエティーに富んでます。
そんなわけで第1版発売から今まで全部レビューした人は少ないし、挫
#65 プリシラ(1994)
最初に、LGBTに理解ある良識な人間と言うつもりはなく、否定も肯定もしない。世間的には理解ある方がメリット大きいだろうが(過激派が怖い、、フラットでいい、フラットがいい)。
3人のゲイ。どう見ても無骨な男。
最初はグロテスクだとさえ思った。
しかし見ている内に爽やかな気分になる。
彼らが美しく見える。
生きざま、砂漠の風景が美しい
彼らは都会から逃げたいと思っていた。しかし旅の途中でその都会
#64 野生の葦(1994)
同性愛的な絆で結ばれた3人の高校生が1人の少女をめぐり心の痛みを分かち合うアンドレ・テシネ監督の自伝的作品。
元は十代体験を素材にする、ダンスパーティーを入れる条件以外は自由にしていいテレビ映画の企画だそう。近年だとフランソワ・オゾンがSummer of 85でこの作品に敬意を込めた(エンドロールで監督の分身?フランソワを演じたガエル・モレルの名前があった)。
フランス作家の思春期を綴るって1
#62 エレファント(2003)
1999年のコロンバイン高校銃乱射事件を題材にガス・ヴァン・サントの銃乱射そのものではなく、日常に潜む狂気をしっかりつかまえてる視線の鋭さが光る名作。
特筆すべきは現役高校生を起用して日常の平凡さ退屈さ、悩み不安、いじめなど学生時代に感じた雰囲気を静かに描いている点。
後半の救いもない不条理さとの対比が効いてくる。喪失感がじわじわと来てしんどい。架空ながら物語性を極力なくしてるから映画は複雑な
#61 ナチュラル・ボーン・キラーズ(1994)
目まぐるしい暴力。
35ミリ、16ミリ、8ミリと次々変わるカメラに白黒・カラー・アニメ・サブミナルetcの多動的な編集の闇鍋に呑まれるトリップ映画。カップルが人を殺しながらアメリカを横断する…まあ地獄の逃避行だが、本作はメディアリテラシーが強く打ち出されている。
オリヴァー・ストーンの言葉で1番気になったのは「重要なのは忘れないこと。だがテレビの制作者はその逆を期待する。」
オリジナル脚本を書
#60 太陽の中の対決(1967)
先住民に育てられた白人ジョンは馬を買いに行く旅の途中で、公金を横領した博士と同じ駅馬車に乗り合わせたために強盗に襲われる……。
ポール・ニューマンの主演の中でも地味な扱いの作品。しかしハッドと同様マーティン・リットが監督しており、ある問いを投げかける。
序盤は静かな西部劇。
強盗襲われる中盤以降は敵が強く、炎天下の砂漠の中、水が重要になるサバイバル逃亡劇。
終盤は小屋での籠城戦。
ここでの会
#59 ハッド(1963)
一代で大牧場を築き上げた父と、気ままに暮らす息子。ある日、父が大事にしている牛が口蹄疫感染の疑いが出てくる。ハッドは病気が証明される前に売ろうと提案する。牧場をめぐってふたりの意見は対立、溝は深くなっていった……。
鳥インフルエンザのニュースが出る度に思い出す映画でもある。
自分がこの映画を気にかけるのは粗暴なハッドの奥底にある実像に共鳴してしまうからか。
父と兄弟。
率直で力強いストーリー
#58 卒業(1967)
大学を卒業したばかりで、人生の目的を見つけられないベンジャミンはロビンソン夫人に誘惑され不倫の関係を続けていくが、その後、彼女の実の娘と恋に落ちてしまう。
久々に再鑑賞する機会があったので。
あまりにも有名なラストシーン。
自由を手に入れたのも束の間、ラストカットの二人の真顔が色褪せない魅力の一つでしょう。
大人になったら何をすべきかなんて本当は誰にもわからないから……
何回観てもダスティ
#57 コラテラル(2004)
ロサンゼルスで12年、タクシー運転手を仮の仕事としてきた男が、意図せず殺し屋を車に乗せる。非情なその男に脅された運転手は、一晩限りの専属ドライバーとなり、その日5人を殺害する予定である彼を運ぶことを余儀なくされる。
抑圧からの解放。
遠いようで近い寓話。
空撮でのロスの夜景、トム・クルーズのガンアクション、タクシー中でのマックスとヴィンセントの緊張感ある言葉のやりとりが素晴らしい。
もう公開か
#56 ロープ(1948)
ニューヨークのアパートの一室。大学を出たばかりのブランドンとフィリップは同級生を絞殺し、その死体をチェストに隠す。動機は自分たちが他者より優れている事を証明するためだった。2人はさらなるスリルを求め被害者の恋人、両親、恋敵、大学時代の恩師を招きパーティーを開く。
実話が元となった舞台劇を始まりから終わりまでワンショットで撮ろうとした実験作。当時10分以上続けてフィルムを回す事が不可能な為、つなぎ
#55 縮みゆく人間(1957)
海で放射能と思われる霧を浴びたスコットは自分がどんどん縮んでいくのに気づく。世間からの好奇な目、家庭の不和。孤独になる主人公の見る世界とは?
宇宙大作戦のパイロット版のような哲学的な話にもっていくSFに滅法弱い。状況的にはカフカの変身と似て居場所がなくなる話。
前半は悲劇を丹念に描き社会からも縮んでいく人間ドラマ、後半は誰にも姿や声が届かない状態で地下室に閉じ込められた主人公が生きようとするア
#54 救命艇(1944)
第二次世界大戦のさなか、一隻の客船がドイツ軍のUボートに撃沈された。生き残った8人は小さな救命ボートでの生存を余儀なくされる。そこへ生き残りがもう一人乗り込んでくる。それは彼らを沈めたドイツ軍のUボート乗組員だった。
ほぼ狭いボートの中だけでカメラを回して終始する作品で「ロープ」と並んで全編通して映画的テクニックに挑戦した意欲作。
何となくヒッチコックは円熟期の50年代、絶頂期の60年代よりハリ
#53 パサジェルカ(1963)
今触れるべきか悩んだが、やはり唐突に、少し触れたくなった。
去年観た旧作の中で一番思い返す。
話は豪華客船で数十年ぶりに母国に帰郷する、かつてアウシュビッツの看守だったリザがガス室へ送られたはずの囚人マルタを船上で見かける。
何年も隠し続けた過去を夫に打ち明けるリザ。
マルタを手厚く看護したり助手にしようとし、恋人との密会を見逃し、ガス室送りからも救おうとした。
戦時下におけるギリギリの善意
#52 バンド・ワゴン(1953)
過去の人となったミュージカルスターの再起物語。
本作といえば夜の公園で優雅に踊るダンシング・イン・ザ・ダーク。
フレッド・アステアとシド・チャリシーのセッションはとにかくずっと見ていたい。ここだけでミュージカルベストに入れたくなる。踊ってない所での身のこなしも素敵。
振り付けが斬新なフィルム・ノワールのパロディ、ガールハント・バレエ。こんなイカす舞台のオープニングならぜひ通いたい。話はよくわか
#51 巴里のアメリカ人(1951)
愛すべきナンセンス、古き良きMGMミュージカルの名作。
この映画といえばガーシュウィンの美しい楽曲と、失恋した主人公が人生に求めていたもの、過去の残像を表した約17分もの長いダンスシーン。
純粋に芸術的なダンスで泣くという初めての経験でうちのめされた。
途中まで話も心情もいまいち惹かれなかったにもかかわらずだ。
映画は減点方式が通用しないと教えてくれる。1952年のアカデミー賞の作品賞も納得。