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わたしの うた。

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徒然なるままに…
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オモイデコインランドリー

オモイデコインランドリー

看護師も駆け出しの私が田舎の国立療養所(結核と重症心身障害児)にいた頃「挨拶は人間関係の全ての基本。誰にでも挨拶をする。知らない人にも、プライベートでも」っていう伝統みたいなのがあって、若かったからいつの間にかそれが当たり前の習慣になって、都会と呼ばれる街に移り住んだあとも時々うっかりその習慣が出て怪訝な顔をされる事があった。

雑多な下町とターミナル駅がある街の境目に住んて

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愛とは言えずと風は吹く

愛とは言えずと風は吹く

Bitter & Sweet chocolate「あげる」

そういって彼がくれたものは、ぱきんと半分に折ったチョコレート。

特に高級ってこともない、明治のファミリーパックに入った小さなビターチョコをさらに半分にしたそれは、真冬なのに口の中ですぐにとろりと溶けて消えた。

職場の裏口から出たところにある、風がぴゅーぴゅー吹き込む喫煙所にはプラスチックの椅子がみっつあって、その上に座布団よろしく

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answer

answer

朝の光は何もかもをリセットする力を持つという
例えば眠れない夜の代償としての真昼の闇を

まだ私がひとりぼっちを楽しんでいた頃の
「カーテンを閉めきった室内で何ルクスの光を何分浴びたら体内時計はリセットされるのか」についての研究
あれは入院患者が対象だったけど
どんな効果があったんだっけ

わたしは薄暗い非常階段のカチカチ点滅する壊れた誘導灯を見ていたら
何時間でも起きていられるのにな、なんて思っ

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願わくは/願えども

願わくは/願えども

いつも雨だった

幾多の問題をクリアして
やっと会える日が近づくと天気予報の降水確率はぐんぐんと上がっていく

アメオトコ×アメオンナ
ふたりを知る数少ない友人は
僕たちをアメフラシって呼んでいたんだ
非定型な僕たちにぴったりだと
密かに気に入った呼び名だった
奴には言ってやらなかったけどね

僕たちは雨が好きで
何故ならひとつの傘で
人混みでひとつになれるからさ
アメフラシみたいにグロテスクにな

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蒼の日の夢、雪

蒼の日の夢、雪

東京、1月某日、雪

2年ぶりに引っ張り出してきたスノーブーツで、都会の雪を歩く
積雪は4センチメートル
途中から雨に変わったせいで、踏みしめた感覚はいまひとつだな

雪かきのタイミングは
‘ご近所さんがはじめたら’
これがこの辺りのお約束
先頭を切るのは面倒くさいから
一旦家に引っ込もう
10メートルも歩かないうちに踵を返す

息が白い
冬だな、ようやくだ、と思う

振り返ると、庭先で昨日まで咲

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あした咲かずと知りながら/桜よ(re:post)

あした咲かずと知りながら/桜よ(re:post)



移り変わる心も、枯れてしまえばいい

**********

これを書いたのは、1年ちょっと前の事。
暗いなぁ(笑)

作品を作る、という事に近づいたり離れたり
馴れ合いが楽しかったりしんどかったり
noteとの距離感も時々により変わりましたが
沢山の方と交流でき、作品や時にはプライベートをアップして沢山の方に読んでいただけて、またコメントでの感想も本当に嬉しく思います
ありがとうございました

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木曜日に思い出を。

木曜日に思い出を。

  ❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆

「今度連れてけよ」
 
目の前にいるのは殆どヤクザみたいな見た目の男。
性格だってドSだし。
てか命令?ぶつぶつ。

連れて行けと言われているのは、さっき見せたスフレパンケーキの写真の店。
焼き上がりまで30分位待つんだけどね、ホントにふわふわで美味しいんだ。
バターを一欠片、メープルはたっぷりね。
柔らかいパンケーキに染みこんで、それがまたとろけて。

星乃珈

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アキソラブルーに赤い靴、365日の秋。

アキソラブルーに赤い靴、365日の秋。



「あふれる涙は流れるままに
決して拭ってはいけない」

明日の瞼のコンディションを
どう保つかの知恵だとか
そんなどーしようもない事ばかり身に付いた恋だった

女のさみしさを埋める穴は
男の快楽を誘う穴で
男と女の深い穴は
入りたいのか
抜け出したいのか
絡みつく雫は
まとわりついて濡れる

とろり

もうあなたに、胸は痛まない
ひと回りした季節を想う
365日目の、秋

真っ赤な林檎
ひとく

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桜が過ぎて 花水木 空を見上げる きみを見ている

桜が過ぎて 花水木 空を見上げる きみを見ている



あなたの好きなもの
教えてくれるその殆どを
私は何も知らなくて
なんとなく高尚な雰囲気
気後れしてる画面越し
うまい言葉も出てこない

急に少し小さくなる
遠い 
って思う
傍観者になって
そっと、みつめる

私の好きなもの
ピンク色で可愛くて
簡単で単純な
捻りなんていらないの
日本語のリズム 優しい歌

あなたが毛嫌いするような
結末の見え透いた
あの物語を繰り返し

Love’s inv

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さよなら、歌舞伎町

さよなら、歌舞伎町

午後13時
新宿駅東口
こんな時間に待ち合わせたのは初めてかもしれない

人の波に紛れて
追いつけないスピードでのろのろと階段を昇る

11センチヒールは封印した
歩きやすくて疲れない
ピンクの靴紐
スニーカーを履いて

あの人と会う時はハイヒール
そんな私でなければ
相応しくないと思っていた
きっとあの人も
それが当然と思っていただろう

肩で風を切る
いつもそんな風に
あの人はスピードを緩めな

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桜 さくら

桜 さくら



桜と月を見るふりで
あなたをみてる

あなたはこっち見て笑う
こうしてるふたりが不思議だって
不思議だね
不思議だよね
笑うふたり

不思議じゃないよ
あたりまえって思える
そんな空気
きっとあなたも
少しは感じているでしょう?

ねぇ
ちょっとだけ触れたい
そんなにギュッと隠さないで

手を伸ばしたら
桜が舞って
瞬き
なごり雪


紅月
あなた

それでいいって思う
桜と月を見るふりで

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無機質と束の間の永遠

無機質と束の間の永遠



もう遠い過去のようで
まだそばにある吐息の気配

翼を得たの
わたしの言葉
その腕の中で

永遠の泉のように
絶え間なく溢れ
愛と闇と束の間を唄う

矛盾

束の間を
永遠と願う罪が
わたしの言葉
翼を無くし

無口な罫線が
わたしに問いかける

もう遠い過去なのよ
歩きなさい
進みなさい

振り向けば海は鳴る
激しい波も
消し去る無機質
コンクリート

歩きなさい
進みなさい

耳を塞いで

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すずらんとセンチメンタル

すずらんとセンチメンタル



3割増しで綺麗に残る思い出よりも
悲喜交々のいまを生きたい
戻りたい場所も時間もない
あなたに出会わない人生に
どんな平穏を約束されたとしても

わたしの人生から
悲しみを消し去る魔法などいらない
例え結末を知っていたとして
戻りたい場所も時間もない
あなたに出会わなかったわたしになんて

木曜日は雪の予報
通勤の足を気にしてみたり
今日の夕飯のメニューを
冷蔵庫とにらめっこして考える

そう

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