島 裕之 Hiroyuki Shima

台湾で建築コンサルタントの仕事をしている建築士です。仕事のかたわら、台北のジャズライブ…

島 裕之 Hiroyuki Shima

台湾で建築コンサルタントの仕事をしている建築士です。仕事のかたわら、台北のジャズライブに頻繁に足を運んでいます。 ほかにも、街歩き、ハイキングと本屋巡りなどを楽しんでいます。

マガジン

  • 明清交代人物録

    台湾に関わりを持つようになってから、言葉の勉強を兼ねて中国語による台湾の歴史の本を読むようになりました。その中で特に興味を持ったのは歴史家曹永和氏の著作です。17世紀の台湾の歴史を、オランダの資料を基に再構築し、台湾の歴史を台湾島の歴史としてとらえ直しています。 ここからスタートして、明朝末期から清朝の初めにかけての様々な歴史資料を読んできました。日本ではこの時代についての詳しい書籍はあまり多くないので、この様な読書経験から、日本ではあまり触れられていない面白い人物を知ることになりました。その中から、僕が興味を持っている人物をピックアップして紹介していこうと考えています。 第一部【鄭芝龍】 第二部【フランソワ・カロン】 第三部【フレデリック・コイエット】 第四部【洪承疇】 第五部【陳永華】

  • 台湾のジャズを聴くようになって

    2018年に台北に派遣されてから、この街ではジャズの音楽活動がとても盛んなことを発見しました。そして,多くのジャズミュージシャンの友達ができ、台湾ジャズを紹介するFBのグループを作ったことから、さらに深く広く台湾のジャズに関わっていくことになりました。その結果、僕自身の生活が、東京で暮らしていた時と全く異なったものになってしまいました。 そんな、僕が台湾のジャズと関わることになってからの出来事をここで紹介します。

  • 台湾のジャズライブ

    台湾で実際に足を運んで聞いた、特に特徴のある興味深いジャズライブの内容を紹介していきます。ミュージシャン、音楽の特徴、ライブ会場等について触れます。 FBで"台湾ジャズ指南"というグループを作っていて、こちらではタイムリーな台湾のジャズライブの情報などを発信しています。FBを利用している方はこちらもご覧ください。 https://www.facebook.com/groups/576457089563845

  • 台湾の面白い建物

    僕は台湾の設計事務所で働いたこともあり、日本の設計事務所で台湾の建築師とJVを組んで一緒に設計業務に臨んだこともあります。そんなことから、台湾の現代建築をとても興味深く見ています。それで、暇をみては台湾のあちこちの面白い建物を見学に行ってます。 そんな中でも特にこれは面白いと思ったものをNoteで紹介します。日本では現在建築デザインが非常に保守的になっていると思いますが、台湾ではたくさんのおおらかなデザインの建物が実現しています。

  • 徒然の記

    Noteではテーマを4つ選んで文章を書いています。建築/音楽/歴史/中国語ですが、そのいずれにも当てはまらない記事もありますので、それをここにまとめておきます。 台湾で暮らしている中で遭遇した、あるいは感じた面白い出来事を紹介します。

記事一覧

固定された記事

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謝明諺の6月の日本ツアースケジュール

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2024年6月の、謝明諺の日本ツアーのスケジュールです。

謝明諺

台湾で最もアグレッシブにジャズの活動を繰り広げているサックス奏者です。毎年2回ほど日本でのツアーを行っており、2週間ぐらい東京関東近辺を中心にライブを行っています。

FBでの案内

6月11日

6.11 w/吉本章紘, 瀬尾高志, 落合康介 @代々木上原 hako gallery

6月12日

6.12 w/豊住芳三郎 @

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【明清交代人物録】洪承疇(その十九)

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ここから、清が明の残存勢力を倒し、中国全土の制覇を進めて行くフェーズに入って行きます。
初めに、この明の勢力のことを概観しておきます。この王朝を中国史では南明と言います。鄭芝龍が当初その軍勢を投入し勢力を拡大したのも、南明においてです。

この南明政権については、日本語ではあまりまとまった書籍をみることはありませんが、中国語ではとても多くの本が出版されています。これは、清という満州民族の政権に抵抗

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【台湾のジャズライブ】Jamsession on Sappho

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2024年3月のSapphoのLate Night Jamsessionでのホストバンドの演奏です。この日は、普段からここのJamsessionで鳴らしている若手ミャージシャンがホストバンドを勤めていました。

 ピアノ:詹宗霖
 ギター:趙阿蘭
 ベース:李成員
 ドラム:林加恩

Anthropology

【台湾の面白い建物】南埕衖事

【台湾の面白い建物】南埕衖事

台南に、藤本壮介氏の設計したリノベーション案件があるというので見に行ってきました。場所は林百貨店のすぐ近くです。

この建物は、不思議なことに用途はアイスクリーム屋さんです。元々の建物は著名なホテルとして使われていたものを、オーナーが藤本壮介に惚れ込んで、彼に自由に設計させ、それを苦労して実現したというものです。この空間を体験してもらうためのインスタレーションと言った様相の建物になっています。

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台湾の神様に助けられた話(その四)

台湾の神様に助けられた話(その四)

農安街に、たまに顔を出す"塵世音樂酒吧"というバーがあります。普段あまりお客さんがいないことが多いので、一人でカウンターでママさんともう1人のスタッフとお喋りしていることが多いのですが、その日は奥にもう1人のお客さんがいました。

農安街のバーで

いつものように、お店のキーボードを借りて何曲か弾いて遊んでいたら、そのお客さんが声をかけてきました。
彼は宜蘭から台北に出てきていて、タイに来ているミ

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西郷隆盛の遺児が宜蘭に?

西郷隆盛の遺児が宜蘭に?

2023年11月、台北で西郷隆盛のひ孫に当たる西郷隆文氏の講演会がありました。西郷隆文氏は陶芸家として名をなしている方ですが、併せて西郷家の事績を顕彰するための様々な活動を行っています。
この時の西郷隆文氏の話に、台湾に関わるとても興味深いエピソードがあったので紹介します。

西郷菊次郎

西郷隆文氏の祖父である西郷菊次郎は、京都市長として活躍し、琵琶湖疏水を政策として立案した人物として知られてい

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【台湾のジャズライブ】Sameka & Interesting Quartet

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2024年3月にとても面白いバンドのコラボレーションがありました。ドイツのフュージョンバンドSamekaと、台湾のジャズストリングスカルテット玩弦四度が一緒にステージに立つというものです。

このプロジェクトは、Sameka Bandが元々ドイツで弦楽カルテットと一緒にアルバムを作成していて、その新作の発表を台湾では玩弦四度と一緒にやろうとしたことから実現したのだそうです。
僕はこの演奏をSapp

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学生時代のヨーロッパ旅行(その二十、イタリア)

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Lago MaggioreのGianniのところで、旅の準備を整えた後、ミラノからジェノヴァへと旅を進めました。イタリアでは行く先々で友達に連絡をとって、週末を一緒に過ごしています。ジェノヴァではRobertoを訪ねました。

ミラノ

ミラノにはLago Maggioreで知り合った2人の友人が同行してくれました。そして、Gianniと同じ様に、あちらこちらの名所に連れていってくれ、食事は一緒に

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「Cross-Border 1624」

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少し前のことですが、台南の国立歴史博物館で開催された「跨•1624:世界島臺灣國際特展」に行ってきました。1624年というのは、オランダ人が明の時代に澎湖島を占拠しようとして失敗し、その代わりに大員(Tayouan)の地、現在の台南にゼーランティア城を築いた年です。
この時代の歴史には特に関心を持って勉強してきたので、このテーマの展覧会は見逃すわけには行きません。3月中旬2人の友達に声をかけて台南

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【台湾のハイキングコース】七星山

【台湾のハイキングコース】七星山

台北の街は盆地なので、四方を山に囲まれ、台風や暴風雨から守られているというメリットはありますが、その分空気が澱みやすいというデメリットもあります。そんな時に陽明山に登ると、高度がある為温度が下がるのと、下界と比べると風の流れがあるのでさらに涼しく感じます。それで、夏の暑い日には陽明山によくハイキングに行きます。

実は、陽明山にはこの名前の山はありません。いくつもの山のある陽明山系で、最高峰は七星

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【台湾建築雑観】音に対する感覚

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日本から台湾に来ると、生活する際の音に対する感覚の違いに気がつきます。これは、基本的に住宅地の環境が日本の様に住居専用地域となっていないことが大きいのだと考えています。台湾の多くの都市は商業地域であり住居地域である、商住混合の用途地域の中にあります。このために、日本の様な静謐な住居環境は、都会では望むべくもありません。

ここでは、台湾で感じる様々な騒音について書いてみます。

ライブハウスにて

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台湾のジャムセッションスポット(2024年)

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一年前に同じタイトルの記事を書きましたが、この間に、いくつかのお店が閉まり、また新しくジャムセッションを始めるお店が開店しています。
情報更新の記事です。

【台北】

台北にはたくさんのライブハウスがあり、ミュージシャンも多いので、毎日の様にジャムセッションが行われています。レギュラーのもので、毎週火曜日/木曜日/金曜日/土曜日にあり、それ以外にもイレギュラーなジャムセッションが何カ所もあります

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【台湾のジャズライブ】Amanda & Ryan Folk Songs Feat. Jens Bunge

【台湾のジャズライブ】Amanda & Ryan Folk Songs Feat. Jens Bunge

ジャズヴォーカリストのAmandaは、学生時代は淡水で中国語のポピュラーソングを歌っていたそうです。この日はそのレパートリーを前面に出して、ギタリストのRyanとのデュオで演奏していました。たまたま、この日はドイツからハーモニカ奏者のJens Bungeが来ていてsit inしていました。

雅痞書店では、週に4日程午後2時から2時間のライブを行なっています。この時間帯には比較的お年寄りが多く、昼

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【明清交代人物録】洪承疇(その十八)

【明清交代人物録】洪承疇(その十八)

ここで、僕がこの人物に興味を持つきっかけとなった、晉江の黃家が洪承疇にアプローチして、明朝の行く末を占っていたのではないかと言う想像について書いてみます。

政商

中国の封建時代の商売というのは、皇帝専制政治の元で行われるとても人治的要素の強いものでした。ですので、商売を行うためには地方政府から中央政府、表に出てくる官僚、その裏で暗躍する宦官と東廠(秘密警察)との繋がりを保つ必要があります。彼ら

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【台湾の面白い建物】高雄港旅運中心

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この建物のことが気になり出したのは、2018年のことです。高雄の臨海地区には多くの新しい施設が建設されています。高雄展覧館、高雄の流行音楽中心、高雄市図書館總館など。それらの中でも特に異彩を放って工事中だった建物が、この"高雄港旅運中心"です。高雄港の新しいクルーズ船用ターミナルです。

工事中から、この複雑な形状は明らかだったので、鉄骨の架構が出来上がった状態でも、その特殊な外観はとても人目を引

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【台湾の水利施設】二重疏洪道

【台湾の水利施設】二重疏洪道

台北の洪水対策施設として、一つは既に紹介した瑞芳にある"員山子疏洪道"があります。これは豪雨の際、基隆河に集まる膨大な雨水を、下流の瑞芳以降に流さず、その上流でトンネルを掘り、そこから直接海に放水するという排水施設です。
台北にはもう一つ大量の雨水が流れ込む大河があります。大漢渓です。今回は、この大漢渓に設けられた放水路を紹介します。

大漢渓は、歴史的にその流路を変えている不思議な河です。その大

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