記事一覧
ここんとこ書いたものは全部クソだ。全部消しちまおうかと思ったけれど、逆に戒めのために残すことにする。こんなクソをお前は書いてたんだ。しゃっきりしろ。上等とはいかないまでも、目を覆いたくなるものを惰性で書くな。そんな真似するくらいなら死んだほうがマシだ。
連載小説「孤児たち」第一回
彼女が死んでしまったのではないかと思った。
ドリンク二人分(ぼくのコーラと彼女のオレンジジュース)を手に戻ると、彼女はデッキチェアの上に身を横たえ、パラソルの作る影の中、死んだ小動物のように丸くなっている。水着に包まれた腹は呼吸に軽く上下しているように思えるが、さだかではない。
グラスを傍らのテーブルに置き、彼女の口元に耳を近づける。微かな息の音が聞こえた。彼女は生きている。眠っているだけだ。
ピンチョンについての何か文章を書こうと思う。とはいえ、専門家でもなんでもないので、丁寧に読み、何かしらの感想か何かを書こうと思う。まず最初に取り上げたいのは『ヴァインランド』、おそらくピンチョン入門としてはうってつけ、というか僕がこれでピンチョンの魅力と読み方を学んだ。
「いつでもないいつか、どこでもないどこかで」 Vol.1
夏のはじまりのこと
彼女が死んでしまったのではないかと、ぼくは思った。
ドリンク二人分を手に戻ると、彼女はデッキチェアの上に身を横たえ、パラソルの作る影の中、死んだ小動物のように丸くなっていた。水着に包まれた腹は呼吸に軽く上下しているように思えたが、さだかではなかった。ぼくはドリンクのなみなみと注がれたグラスを傍らのテーブルに置くと、彼女の口元に耳を近づけた。微かな息の音が聞こえた。彼女は生きて
ショートショート「運命」
彼はなぜその人物との面会に臨まなければならないかわからなかった。しかし、面会の日取りは知らないうちに決まっていたし、彼もそれはそういうものだと不思議と納得していた。そして向かった、面会相手の待つ監獄へ。
「お知り合いで?」看守は尋ねた。
「いや、まさか」彼は答えた。「あんな悲惨な事件を起こす極悪人と知り合いなわけないでしょう」
看守はいぶかしげに彼を見た。「では、なぜ面会に?」
彼は肩をす