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曖昧なガールフレンドがいた話
魔法にかけられたような7ヶ月が呆気なく通り過ぎて行く。
とても長く短い、そして険しかった道程を歩き切って気付くのはそれが恋だったということ。
閉鎖的な高齢者と馬鹿な大学生しかいないあの町から出て名古屋へとやってきた。
思いのほか寒さが厳しかった冬に僕らは出会い、その溢れる爛漫な笑顔から見える矯正器具は繊細に輝く。
透明な笑い声は僕の体を突き抜けて、珍しく降った雪のなかへと消えてしまった。
初めて
彼女のくしゃみすら聞かないまま
「ジャニス・ジョプリンって知ってる?」知らない。「ジミ・ヘンドリクスは?」知らない。「カート・コバーン、ジム・モリソンはどう?」知らない。
ロックスターはさ、27歳で死ぬんだよ。だから俺の余命もあと半年無いんだ。
「でもロックスターじゃないでしょ。」
ごもっともだった。
27歳にもなって好きだとか恋だとか言うのはダサすぎて、そうなるくらいなら本当にこの歳で死にたいと思っていた。それでも
バーの店員とホテルに行って勃たなかった話
五感のうちで一番記憶を呼び覚ます能力が高いのは嗅覚だという。
僕が生活をするたびに指に染み付いた君の味気ない密の香りが鼻に入る。いつもは半分だけ吸う煙草を今回も根元まで吸い尽くした。食事をとる時、歯を磨く時、全ての場面で一昨日に見た暗い部屋のベッドのなか隣で息を吐く君の横顔を思い出す。
君はいつも母親がつくるという耳飾りをしていた。初めて会ったときも。最後に会ったときも。それは大仰すぎず控え