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伊藤智彦「HELLO WORLD」
京都に越してきて一年半あまり、カメラを始めて半年あまり、ということで、京都を舞台にした、しかも私たちプログラマにとっては、特別な熟語であるタイトルを帯びた作品ということで、まぁ、観てきたのであった。
結論からいえば、たいへん雑で稚拙な作品であった、というよりほかないだろう。主たる舞台に京都という土地を選択した必然はほぼ皆無と言ってよかったし、HELLO WORLD という語句の解釈はともかく、そ
ポール・ダノ「ワイルドライフ」
ひさびさに映画館で映画を観た。近くのイオンでこうした単館上映系の作品がかかるのは珍しいが、まぁ、ようするにスタッフとキャストのネームバリューということだろう。
出来は、まぁ、普通によくない。ポール・ダノの初監督作品ということもあって、低予算で製作されているのだろうが、まぁ、単純に撮影下手だよね、という感じであるし、演出もこなれていない。やりたいことはわかるのだが。
まぁ、なんだろう、ようするに
濱口竜介「寝ても覚めても」
カメラもウィッチャー3もひと段落してきたので、また別の趣味を再構築しようということで、映画も再開してみんとす。
そうしたときに観る最初の一本というのはわりと大事ではあるのだが、ちょうど濱口竜介の作品が観れるようになっていたので、これにしたのだった。彼の初商業映画である。
端的にいって、ひじょうに素晴らしかった。完全な意味でのカンヌ的作品であった。ただ、それは現代の日本においては、このように微温
Leica CL + Summicron-TL 23mm F2.0 ASPH + Nokton 50mm F1.4 ASPH 2ヶ月目
さて、Leica CL を買ってから丸二ヶ月が経ったのである。ふた月目のトピックとしては、はやくもふたつめのレンズ、Voigtländer Nokton 50mm F1.5 Aspherical を購入した点だろう。
私の買ったのは、この VM マウントのものではなくて、さらに古い Leica L39 マウントのものである。なぜこれを選んだのかといえば、Leica CL は L マウントだが、こ
廣木隆一「彼女の人生は間違いじゃない」
さて、ひさびさに映画を観たのである。まぁ、なんだろう、日本の伝統的な小品を観たかったから選んだ、というわけなのだが、そうした意味では適切な選択であった。
何がよいかといえば、これはまず撮影がよい。新しいカメラでまっすぐに撮っている。この手の地方の生きづらさを描く作品では、フィルム的なテイストを出そうとするのが定番だが、本作ではバキっとデジタル一本で撮り、きちんと作品になる水準に仕上げている。冒頭
山本七平 日本はなぜ敗れるのか 敗因21ヶ条
さて、こちらは Kindle で読んでいたのであるが、たいへん興味深い内容であった。
小松真一なる化学技術者の南方での従軍経験を綴った『虜人日記』を底本に、そこに注釈を加えていくといった形で、日中戦争および太平洋戦争における日本軍ないし日本国の敗戦の要因について分析するといったものである。
まずは私としても、小松の挙げている敗因21ヶ条を素朴にコピペしたい。なぜなら、山本も指摘するように、これ
山本七平 「常識」の研究
さて、私は今年は山本七平に傾倒してみようと思っているわけなのだが、そのためには、彼の考えにどの程度(日本的なスコープにとどまるが)普遍性があり、現代でも適用可能なのか、ということを知る必要がある。
その点で、このエッセイ集はちょうどよいものであった。話題も多岐に渡り、当時の日本でどういった事柄が社会問題として扱われており、山本七平がそれをどのようにピックアップし、そこからどのような普遍性を抽出し