記事一覧
アートの深読み15・「ローマの休日」1953
ウィリアム・ワイラー監督作品、アメリカ映画、原題はRoman Holiday、グレゴリー・ペック、オードリー・ヘプバーン主演、アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞。これまで何度となくくりかえしみてきた映画だが、オードリー・ヘプバーンの魅力が全開している(上図)。映画の筋立てとは逆に、ハリウッドの大スターが、デビュー間もない新人女優を、優しくエスコートしている。
アメリカの通信社の記者(ジョー・ブ
アートの深読み14・フェデリコ・フェリーニ監督の「8 1/2」1963
フェデリコ・フェリーニ監督作品、イタリア映画、原題はOtto e mezzo。8.5本目の監督作品だということでつけられたタイトルであることから、自伝的色彩を強く感じさせるものだ。映画監督(グイド)が制作を続けられない苦悩をかかえながら、プライベートとの板ばさみで、ギリギリの状態で命を終える話。イタリア人だとすぐにわかる無駄なおしゃべりが延々と続き、ストーリーを追いかけていれば、破綻をきたすが、
もっとみるアートの深読み12・フランソワ・トリュフォー監督の「大人は判ってくれない」1959
フランソワ・トリュフォー監督作品、フランス映画、原題はLes Quatre Cents Coups。カンヌ映画祭監督賞受賞。3人家族でのひとり息子が、少年院に送られ、脱走するまでの話。小学校高学年あたりのとしごろである。タバコを吸ったりもしているので、もう少し年長かもしれない。教室での態度が悪くて、立たされるところからはじまる(上図)。次にズル休みをして、仲間と遊びに出かける(下図)。
仲間
アートの深読み6・ルドンの「眼=気球」
サンボリスム(象徴主義)自体は、文学とも歩みを共にして、フランス語での名称が一般化されており、フランスが中心での展開だった。重厚な壁に塗り込められた退廃の美は日当たりの悪い都市の裏通りに巣くう甘美な幻想に結晶する。オディロン・ルドン(1840-1916)の「眼=気球」(1878)[上図]では目玉が気球に乗って浮遊する。目のシンボリズムは頻繁に登場する。目玉は絵画のことであり、眼の人クロード・
アートの深読み 1・荻原守衛の「女」
荻原守衛(1879-1910)のデスペア
ロダンを象徴主義に位置づけるとすると、その影響下にあった彫刻家の立ち位置が定まってくる。日本から旅立った荻原守衛もまたそのひとりである。その存在は、みごとに日本彫刻史に輝いている。31歳で没した無念が、明治期のまだ初々しい日々の日本の将来を切望する。フランスに渡り、7・8年の滞在ののち帰国して、二年ほどの制作期間で終えてしまう短命の話である。若い才能の