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変な体験談

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記事一覧

肛門科看護士に告ぐ

肛門科看護士に告ぐ

立ったままこれを書いている。
痔になったからだ。
痔にも色々あるが、ぼくのはいわゆるイボ痔で、医学的には外痔核という外側に出てくる奴のことだ。15年以上前に似たようなイボ痔になったことがあり、その時のことは過去記事「大丈夫よ、みんな一緒だから」に書いた。

その後、今までたまに脱肛になったりしたことはあるが、帰宅を促すとだいたいすんなり帰ってくれた。
それが、1週間前に
「来ちゃった、、、」
と元

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一瞬のナンパ師

一瞬のナンパ師

真夏の九州の空港に降り立ったその日は、出張の移動日で仕事は何もありませんでした。空港でレンタカーを借りてホテルへ向かおうとしたんですが、まだ昼過ぎだったのでこのままチェックインしてもつまらないなと。また、その受付の子がちょっとかわいかったんですね。気づけば、口が勝手に動いていました。

「何時に仕事終わるの?」

誤解のないように言っておきますけど、ナンパなんてしたこともないし、生来シャイでそんな

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モンキーマジック

モンキーマジック

某ブラック系運送会社に勤めるMから聞いた話。仕事のキツさと長時間労働では定評のあるその会社は慢性的な人手不足で忙しい。そのため、「世間的にはかなり問題のある人でもけっこうクビにならずに働ける」とのこと。

「今度おれの部署に来た人はさ、忙しくなってテンパるとまともに喋れないし、ブツブツ独り言言いながら自分の世界に入っちゃったりして、もうほとんど“猿”になるんだ。」

「“猿”?」

「『◎◎さん、

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マニラに高飛びしたくなった日

マニラに高飛びしたくなった日

ちょっと前、フリマアプリで不要品を処分していた時のこと。

モノは良いけど、かなりガタがきてメンテの必要なロードバイクを出品すると、すぐに応募があった。

車で引き取りに来たHさんはすこぶる感じの良い初老の男性だった。自分で修理できるというので交渉成立し、引き取ってもらうことに。

いざ自転車を車に積み込むという時になって、Hさんは言った。

「ちょっとまけてくれませんか?」

来たよ、来たよ。ア

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サウナで”ととのう”人

サウナで”ととのう”人

サウナに行くと”ととのう”と言う人がいます。この感覚がぼくにはよくわからない。熱いサウナで極限まで我慢した後で水風呂に入り、外気にあたるとそんな感じがすると言う人もいるのでやってみたこともあるけど、やっぱりよくわからない。
先日こんなことがあった。

けっこう広めのサウナに入ると、先客が二人いました。一人は腰掛ける場所に横になっていました。仰向けで顔に腕をかぶせているので表情は見えません。もう一人

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あなたは昨日の私

あなたは昨日の私

駅前のカフェで待ち合わせの相手を待っていた時のことです。目の前にタクシーの待機場所があり、そこを囲む形でバス停がぐるっと円状に並んでいます。バス待ちの人たちをぼーっと見ていました。

バスが次々と来ては人を吐き出し、また収納して去っていきます。並んでいて乗らない人はけっこういて、同じバス停でも始発のバス停なので海廻り、山手廻りなどとルートの違う複数の路線が一つのポールに並ぶようところもあるからです

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分別のある戦争

分別のある戦争

ある日、井上家の前に「持ち主不明」の紙が貼られたゴミ袋が置かれた。おそらく分別がいいかげんだったゴミ袋が井上家の出したものだと誤解されたのかもしれない。

やがて井上家が「うちのゴミではありません」と貼り紙をして応戦する。誰だって他人の無分別なゴミを家の前に置き去りにされたら憮然とする。わけもなく右の頬を打たれたのに黙って左の頬を差し出すような人間はそういない。

井上家の主も清掃業者も一歩も譲ら

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おばあちゃんの妙な知恵袋

おばあちゃんの妙な知恵袋

※全国の鍋島姓のみなさま、この投稿は鍋島姓の方に対する偏見を助長する意図はありません。

Aくんは、小さい頃からおばあちゃんに繰り返し言われるセリフがあった。
曰く、

「鍋島にゃ気ばつけれ(鍋島には気をつけなさい)」

このおばあちゃんというのが、戦国時代の武将であり肥前は佐賀藩の立役者・鍋島直茂によるお家乗っ取り騒動に絡んで実際に不利益を被ったか、逆恨みしている家の血筋を引いていたそうな。

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昼下がりのサタン

昼下がりのサタン

とある夏の日の昼下がり、インターホンが鳴った。当時ぼくが住んでいた都内のマンションにその人はやってきた。その頃深夜の仕事をしていたので昼過ぎまで寝ているのが常だった。
寝ぼけていると、また、インターホンが鳴った。

「はい、どなた?」

「最近、世界各地で戦争とかテロとかよくありますよね?」

「・・・。」

開口一番こんなセリフもなかなか聞けない。まだドア開けてない段階でいきなりこれだもんな。宗

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きよし この夜

きよし この夜

ある冬の晩、ぼくは東京郊外の高尾とかあの辺にいた。あたりは山に囲まれていて民家も少なく、ろくに街灯もなかった。道にはスピードを上げた大型のダンプがたまに通るぐらいの辺鄙なところ。静かな夜だった。

ちょうど夕飯時で腹が減っていたぼくと彼女は、「もう、あそこでいいよね?」という感じでやっと見つけたごくごくフツーの大衆食堂に入った。

広い店内には先客が二人いた。彼らは店の真ん中に並んで座って、隅にお

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「大丈夫よ、みんな一緒だから」

「大丈夫よ、みんな一緒だから」

ごめんなさい。純粋でまっすぐな下ネタです。

イボ痔になって肛門科に行った時のことです。恥ずかしいので出来れば行かないで済ませたかったのですが、なかなか治らなくてやむなく駆け込んだのです。その医者がネットで調べて男性であることはわかっていたので、割と安心して行きました。

で、いざ診察室に入ると、おばちゃん看護師さんが医師の隣に、バイクのサイドカーみたいにピッタリ寄り添ってるじゃないですか!考えて

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そしてぼくは途方に暮れる

そしてぼくは途方に暮れる

随分昔のことでどこの駅だったか忘れてしまったけど、東京郊外のJRの駅での話。
夕方のラッシュアワーにはまだ早く、人影もまばらな駅の構内。階段を下りてホームに立つと、前方30メートルぐらいのところにスマホをいじる女子高生が立っている。黄色い線のすぐ内側ぐらいに立っている彼女は画面に釘付けで全く周りを見ていない。
「そろそろ電車が来るけど、まあ、まだ先っちゃあ、先の話だよね」ぐらいの余裕のあるアナウン

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鑑別所で言われた「“あ”はいらねぇ!!」

鑑別所で言われた「“あ”はいらねぇ!!」

その時ぼくは家庭裁判所の一室にいた。18歳だった。目の前には法服ではなく黒いスーツを着た銀行員みたいな裁判官がいた。額の生え際の両サイドがとんがっていて鬼のツノのように見えなくもなかった。彼は憎々しげにぼくを睨むと言った。
「あなたには鑑別所に行ってもらいます!!(怒)」
その思いっきり私情の入ったドヤ顔は今でも覚えている。ぼくの罪状は傷害のように被害者が出るようなものではなかったから、どうしてこ

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植木屋最大のタブー?を知った日

植木屋最大のタブー?を知った日

こないだ植木屋をやっている親戚の仕事を手伝った。現場は戸建住宅での植木の剪定。途中でどうしても小便がしたくなったので親方にそのことを伝えると、
「うん、そしたらその辺で…」
と、けっこう大きな声で言いかけた親方は急に辺りをはばかって口をつぐんだ。そして、ぼくの肩を抱きながら裏庭に誘導しつつ、こう言うのだった。
「この業界では“ポイント”って言うんだけど…ほら、そこに俺のした跡があるからさ」
指差さ

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