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先端技術

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30年の企業経営の経験から、様々な”ニッチな先端技術”に注目し私見を記しています。
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#技術

弁柄

弁柄

弁柄の歴史は古い。弁柄とは古来から使われている赤色顔料のことである。

75000年前のアフリカの洞窟壁画や15000年前のアルタミラ(スペイン)でも弁柄の赤が用いられていた。磁硫鉄鉱石から得られる赤は魔除けの意味と、旺盛な生命力の象徴の意味があって古来尊重されてきた。
日本でもBC7000年ころからあり、飛鳥奈良のころには社寺を美しく彩った。近世岡山の銅鉱山で銅の採掘の時に、一緒に出てくる硫化鉄

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超耐熱合金

超耐熱合金

ジェットエンジンの高温タービンは機密の塊である。

英米は海外にノウハウが流出しないように国をあげて情報を囲い込み、多くの日本人技術者が占め出されているのが現実である。エンジンタービンの耐久温度が40度C上ると、航空機の燃費は1%向上する。

物質・材料研究機構がこの秘密の扉を開けて、純国産エンジンの実現を可能にした。材料センターのパソコンはインターネットと接続できないようにして、貴重なデータを管

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機能ロープ

この写真は何だろう?左は海草?右は??

実はこれはロープである。 

ポリプロピレンなどのロープの芯のまわりに多数のループ状繊維を立体的に編み込んだものだ。吸着性能は1mにつき1㎡以上の接触面積をもつので、抜群に高い。用途は下水処理や河川の浄化、海水から微小金属採取など多方面である。ニュースになったのは、原発周辺の放射性物質の吸着回収に使われていることだった。セシウム吸着に役だっている。海水から

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FFミラー

銀行のATMについている鏡は視野が広く、後ろに人が立っているかどうかわかる。

真ったいらな鏡では正面しか写せないが、FFミラーという鏡はかなり角度がひろい。このほど廊下が直角に交差する場所で、左右から来る姿を正面で見ることができる鏡が出た。出会いがしらにぶつかりそうになって「おっと失礼!」などとやらなくて済むそうだ。一番助かるのは病院で、患者を運んでいるベッドと他の器具を積んだ台車とが衝突する心

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発電する窓

発電する窓

国際先端技術総研(株)は、ガラス板に内蔵できる完全無色透明の光発電素子を開発した。

人工水晶を使った新型の発電素子で、太陽電池と同様に太陽光のエネルギーを電力に変換できる。変換効率はまだ3%だが、熱遮断率45%と日差しをカットする性能に優れている。発電と遮熱双方の効率で見れば、従来の太陽電池をしのぐ可能性がある。変換効率も、研究次第で上がって行くだろう。

もしこの発電素子の変換効率が現在のソー

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凧発電

凧発電

小生の地元、静岡県は海岸線が長い。

先日御前崎海岸を走った。

しばらく見ないうちに多くの風力発電機が設置されていたが、ざっとみて7割は停止していた。もともと風が強くて有名な所のはずだが、風車は回っていない。発電したり止まったりでは電気の質は悪く、この調子では困ったモノになりかねないのではないかと心配になる。投資金額も安くは無いから、採算に合うのかどうか更に心配だ。

地表の風は気まぐれである。

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三次元鏡面加工

ステンレスの板に鏡面という種類がある。

鍋などがピカピカになっているのは、ステンレスの板に鏡面という種類がある。鍋などがピカピカになっているのは、鏡面と言えるが、粗度によって400番や800番などの呼称がある。通常400番なら相当美しい鏡で、顔の映りもなかなかである。カ-ブミラーも以前はガラスだったが、今はステンレスが多い。平らな板を鏡面に加工する技術は発達しているが、三次元の複雑な形状となると

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技術は中小製造業の飯の種

技術は中小製造業の飯の種

自著のご案内です。『技術は中小製造業の飯の種』

少し前に、弊社の”技術”を軸にした社史をまとめ、それを元に話をする機会があった。会場に集まった方々の大部分は理、工、医の分野でそれぞれに立派な実績を積んできた皆さんだった。(中略)

彼らの技術と私の考える技術は、レベルという観点からすると全く比較にすらならないようだった。しかし、そうは言ってもローテクも技術のうちで、ローテクで食べている人も大勢い

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水中耕耘機

水中耕耘機

水中耕耘機が作られた。

背景はアサリの成長を妨げる雑海草を除去する作業の負担を無くすためである。今まではすべて人手に頼って大変な作業だった。オペレーターは船上の画面を見ながら操作するので、安全で効率が良く年寄りでも可能だ。北海道の篠田興業というところが4年かけて開発した。ただ、いまのところは機械のコストが高く、ベンツ並みの値段である。(篠田興業HPから参考記事☞)

これで思ったが、サンゴ礁を食

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生ゴミの室内処理

生ゴミの室内処理

生ゴミの始末はどこの家でも切実な問題である。

町内のゴミすて場は厳格に守られていて、ゴミを出す日と時間も厳しい制限がある。週に2回程度では間に合わず、梅雨どきなどは部屋の中に保管してある生ゴミの臭いにも悩まされる。

この生ゴミを室内で処理できて、しかも臭わないそうだ。微生物で生ゴミを処理して水とCO2に分解する装置がすでにあって、次第に大型化しているが、クラレが開発したものは「ポバール樹脂」で

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逆CTスキャン

日本ビジュアルサイエンスという会社が目指しているのは、CTスキャンの逆応用である。CTスキャンが取り込んだ断層撮影のデーターをソフトウエアで圧縮処理して、半透明なプラスチック板に印刷し、積層させて模型をつくる。対象物の「見える化」という概念が出発だ。対象物が生物の場合、内臓や血管まで宙に浮いた状態で見える。更に見やすくするには血管だけ色をつけることも可能。どんな分野に応用できるかは、まだこれから探

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