記事一覧
伯国邦字紙四方山話 第1回 松本浩治 月刊ピンドラーマ2024年5月号
1994年1月からブラジル・サンパウロ市にある邦字紙(日本語新聞)の記者として活動させてもらい、今年で丸30年になる。「光陰矢の如し」というのが正直な気持ちだが、その間、『日伯毎日新聞』、『ニッケイ新聞』、『サンパウロ新聞』、そして現在唯一存在する『ブラジル日報』と時代とともに渡り歩いてきた中で、記者が感じた「今だから言える」四方山話を連載で紹介する。
ブラジル邦字紙の歴史を簡単に書くと、191
テルト クラッキ列伝 第174回 下薗昌記 月刊ピンドラーマ2024年5月号
サンパウロFCのホームスタジアムでもあるモルンビー(ネーミングライツによって現在はモルンビス)のゴール側に、2024年4月9日、一人のクラッキの在りし日の姿を写した白黒写真が飾られた。
テルトの登録名で知られたFWがこの世を去ったのだ。
クラブは半旗を掲げて追悼したが、サンパウロFCの選手としてブラジル全国選手権で第一号のゴールを決めた男として、その名をクラブの歴史に刻み込んでいる。
テルト
ホントにあった詐欺のはなし 月刊ピンドラーマ2024年5月号
・カーザ・ダ・プリマヴェーラ
昨年11月中旬、平日の朝10時過ぎ頃、日課にしているアクリマソン公園でのジョギングをしに公園の近くを通りがかった時、60~70歳くらいの人相の良い小柄なブラジル人男性が
「カーザ・ダ・プリマヴェーラはどこですか?」
と尋ねてきた。そんな店の名前は聞いたことがないと言うと、
「私はカンピーナスから30キロの小さな町に住んでいる。今日の朝早くバスでチエテターミナルまで来
「行けたら行く」 ポルトガル語ワンポイントレッスン リリアン・トミヤマ 月刊ピンドラーマ2024年5月号
科学者のジョゼ・ガリジア・トゥンディージ(José Galizia Tundisi)によると、ローマで行われた環境心理学調査によって、公園の近くに住む子どもは攻撃性が低くなることが示されたとのことです。興味深いですね。自然との接触のおかげで幸福な子どもになり、その結果、幸福な大人になるのだと、私は思います。
このことで私が思い出すのは、フランスの歌手マクシム・ル・フォレスティエ(Maxime L
島田愛加さん(東京都出身) <新連載>21世紀の日系移民(第1回) 布施直佐 月刊ピンドラーマ2024年5月号
◎ブラジルに来た経緯
昨年から、サンパウロ市リベルダーデ区に住み始めた島田愛加さん。現在、執筆業に打ち込むかたわら、ブラジル人の夫が立ち上げた出版社を手伝い、多忙な日々を過ごしている。
10代の頃からアルトサックスの演奏を始め、高校では日本の吹奏楽において高校野球の「甲子園」に匹敵する普門館の全国大会で金賞を2回受賞、その後音楽大学に入りクラシックを学ぶ。卒業してからは音楽に関わる仕事に就きな
「栗スイーツ」 栗御殿への道 第10回 田中規子 月刊ピンドラーマ2024年4月号
農場を訪れたお客さんにモンブランを作っていると「いつからパティシエですか?」と言われることがあり、とんでもなくお恥ずかしい限りである。これまで何が一番大変だったかというと、車が横転したことでもなく、鋸で怪我したことでもない。ロールケーキ作りを覚えねばならなかったことだ。栗の加工品をつくるのも当初からの目標だったが、私の役目はせいぜい焼き栗や栗ペーストといった一次加工品の製造販売で、まさか栗スイーツ
もっとみる実録エッセー『来週、必ず払うから』 カメロー万歳 第91回 白洲太郎 月刊ピンドラーマ2024年4月号
先日、いつものように青空市場で安物アクセサリーを売っていると、でっぷりと太ったねーちゃんがヘソ出しルックでクネクネと腰を振りながら近づいてきた。タンクトップからはみ出さんばかりの胸元には、バナナどころか山芋が数本は挟めそうな谷間が深く形成されていたが、殿方の勃起を誘発するという類のモノではなく、むしろ目を逸したくなるほどの肉肉しさである。このお方、名前は存じ上げぬが、もちろん顔見知りであり、たまに
もっとみる蚊にかまれまくる今日この頃 開業医のひとりごと 秋山一誠 月刊ピンドラーマ2024年4月号
ブラジルは定期的に蚊(ヤブカ)が媒介する感染症が暴発します。筆者は開業してもうすぐ30年ですが、その間に何回も黄熱とデング熱の流行があり、それだけでは足りないのか、さらにジカ熱とチクングニアまで流行しました。過去に書いたのをみてみると初めて2010年に黄熱とデング熱についてひとりごとしたのを皮切りに、2014年から2018年まで毎年テーマにあがっていました。そして当地では現在またこの手の感染症が大
もっとみる「Padoca do Mani」&「Nit Bar de Tapas」 さんぱうろぐるめをっちゃー 宮本碧 月刊ピンドラーマ2024年4月号
Padoca do Mani
所在地:R, Joaquim Antunes, 138 - Jardim Paulistano
電話:(11) 2579-2410
Instagram:@vemprapadoca
TV番組、マスターシェフの審査員も務めるエレーナ・リッゾのManiは世界のベスト50にも選ばれたことがある独創的でおいしい料理を出すレストランである。以前は年に一度ぐらいのペースで行っ
ミゲル クラッキ列伝 第173回 下薗昌記 月刊ピンドラーマ2024年4月号
2026年に行われるワールドカップ北中米大会の開催やメッシらがインテル・マイアミに加入したこともあって、近年ますます盛り上がりを見せるアメリカのサッカー界。
古くはペレやベッケンバウアーが在籍したニューヨーク・コスモスが存在感を見せた北米サッカーリーグ(1967-84年)も行われていたアメリカに最初に渡ったブラジル人GKがいる。
ミゲルの登録名で知られた名GKだ。
1937年、ミゲル・フェレ
「ブラジルの二面性」 黒酢二郎の回想録 Valeu, Brasil!(第7回) 月刊ピンドラーマ2024年4月号
前回は、ブラジル各地で生活し、この国の魅力にはまり込んでいったこと、病気で寝込んだ際に「おふくろの味」の差し入れをもらい、その後は恩返しのつもりで魔法にかかったかのように仕事に打ち込み始めたことをお話しました。
実は昨年(2023年)初旬に暫く日本に滞在したのですが、その際にちょっとした違和感を覚えました。日本では、というか正確には私が訪れた場所では、行き交う自動車はピッカピカ、道行く人々は揃っ
ジャイメ・レルネル(建築家、元パラナ州知事、1937-2021) ブラジル版百人一語 岸和田仁 月刊ピンドラーマ2024年4月号
2021年5月27日、建築家・都市計画家として国際的に著名なジャイメ・レルネル元パラナ州知事が亡くなった。世界中のメディアが訃報記事を報じていたが、ユダヤ専門通信社であるJTA(ユダヤ通信社)の英文記事では、「世界で最も影響力のある建築家・都市計画家であるジャイメ・レルネルが亡くなった。彼はブラジル・ユダヤコミュニティーにも深く関与していた」と書き始め、後半では、「わがユダヤコミュニティーは、一人
もっとみる「Mercado aquecido」 ポルトガル語ワンポイントレッスン リリアン・トミヤマ 月刊ピンドラーマ2024年4月号
マッキンゼーのデータによると、ブラジルの美容のマーケットは世界で第4位の大きさです(米国、中国、日本に次ぐ)。
ABIHPEC(パーソナルケア用品・香水・化粧品の産業関連のブラジルの協会)によると、美容業界はこの5年間で567%成長しました。
SEBRAE(中小零細企業をサポートする非営利団体)は、男性にフォーカスした美容業界は今後2030年まで毎年9.1%成長していくだろうと指摘しています。
日伯のダンボール会社でデザインを担当した高嶋伸好(たかしま・のぶよし)さん 移民の肖像(最終回) 松本浩治 月刊ピンドラーマ2024年4月号
「私みたいな人間は珍しいと思いますよ」―。サンパウロ市リベルダーデ区に住む高嶋伸好さん(86、北海道生まれ)は、青年期に渡ったブラジルと帰国後の日本でそれぞれ違うダンボール会社のデザイン担当の仕事を行い、60歳の定年後に再びブラジルに戻ってきたという貴重な経験を持っている。
父親がフィリピンのマニラで戦死し、第2次世界大戦後、2人兄弟の長男として母親に育てられた高嶋さん。神奈川県内の法政大学附属