sei☆

演劇、舞台用のお話やオリジナル小説を書いてます。 頻繁に更新できませんが、ぜひ御一読下…

sei☆

演劇、舞台用のお話やオリジナル小説を書いてます。 頻繁に更新できませんが、ぜひ御一読下さいませ。 小説系はマガジンに纏めてますので、ぜひ一話から見てください。

マガジン

  • SEI☆のエッセイマガジン

    特にジャンルは決めず、思ったことを書いた物を入れたマガジン

  • オリジナル作品短編集

    オリジナル作品の中で、さほど長くない作品を纏める予定のマガジンです。

  • オリジナル作品「AI(愛)は掌に」

    オリジナル作品「AI(愛)は掌に」を纏めたマガジンです。不定期に順次更新していく予定です。

最近の記事

「AI(愛)は掌に」 第十五話

 …汗だくだ。時刻は午後2時。一番暑い時間帯だ。そんな中を走っていれば、汗をかくに決まっている。それでも足は止まらない。走ることを止めない。止めたくない。止まらなかった。家に着くまで。  汗だくのTシャツを脱がず、そのままベッドに倒れ込む。着替えたい、シャワーを浴びたい、クーラーをつけたい、普段なら当たり前のように込み上がってくる感情が全く出てこない。ただただ、ベットの上に横になり、微動だにしなくなる。眠っているわけではない。目は開いている。呼吸もしている。心臓も激しい鼓動を

    • 「AI(愛)は掌に」 第十四話

       久楽の「AI」の一言によって、会議室はさらなる静寂に包まれた。久楽は次元と庄司の顔色や反応がどう変わったのか、どう変わるのかを確かめるために押し黙る。  庄司は「あちゃー…」とも聞こえそうな顔をしている。それが、どういう意味合いの「あちゃー…」なのかは久楽の中でいくつか推測を付けた。  次元は久楽の目を見続けて、微妙ながらも眉間に皺が寄った以外には大きな反応は見られなかった。  静寂に包まれた空間は、短くも長い時を刻み、やがて終わりを迎えるのであった、それは次元の言葉によっ

      • 針は戻る

         チクタク…チクタク…  廃屋の中に立派な柱時計が一つ  ザー…ザー…  外は本降りの雨  ガタガタ…ピチョン…  風が家を揺らし、屋根からは雨漏りがする  ガチャリ…  扉の開く音… 「失礼しまーす…誰かいますかー…」  男の声がする。家主の声ではない。そもそも家主はこの家にはいない。 「誰もいないだろうけど、つい言っちゃうよな…」  男は働き口もなく、住むところもない。空き家を渡り歩いて、雨風を凌いでいる。家主が長期の旅行に行っている家、借り主のいな

        • 私は○○が好き 小林賢太郎さんver

           小林賢太郎さんをご存知でしょうか?  知ってる人はぜひ読んでいただきたい。  知らない人もぜひ読んでいただきたい。  とは言え、小林賢太郎さんのプロフィールやらをうだうだと書くわけではありません。  それを書き連ねるの大変なことになります。なんせ芸人さんであり、俳優、劇作家、パフォーミングアーティスト、演出家、漫画家、アニメ監督…Wikipediaに書き記されているだけでもこれだけの肩書きを持つ方を、このnoteに書ききれるわけないので。  ラーメンズというコンビをご存知

        「AI(愛)は掌に」 第十五話

        マガジン

        • SEI☆のエッセイマガジン
          4本
        • オリジナル作品短編集
          2本
        • オリジナル作品「AI(愛)は掌に」
          16本

        記事

          「AI(愛)は掌に」 第十三話

          庄司が悲壮感に満ちた顔で会議室に戻ってきた。 おそらく、こっぴどく尾上に叱られたのだろう。それも、自業自得ともいえる発言が発端では有ったが。 庄司は部屋に入るや、これまでの空気とは違うことを察した。小さく「…先輩?」と呟くも、それを上書きする言葉が会議室に響く。 「…この仕事の真実?」 久楽の問いかけである。 庄司は久楽の言葉に目を見開き、久楽と次元の顔を二度三度と見返す。何の話をしているのか、尋ねようともしているが、あえて黙ってことの成り行きを見守ろうとしている。

          「AI(愛)は掌に」 第十三話

          観劇の際は「とちり」が好き

           私は年間でも数えるくらいしか観劇はしていませんが、それでも演劇が好きです。大衆演劇、学生演劇、商業演劇、小劇場演劇、宝塚歌劇…過去にいくつかは観てきました。  劇場ではもちろん、演劇のDVDも何本かは観てきました。  劇場での観劇も映像での観劇も、本当の演劇ファンの方達からしたら本当に微々たる物ですが。  演劇は生で見るのが好きです。映像がどれだけ綺麗で、音声も綺麗で、編集も綺麗で、特典映像もあったりしたとしても、生で見るのが好きです。  自分で好きなところを観れる

          観劇の際は「とちり」が好き

          個人的に「大人になったなぁ」と思う一つのライン

          私はお酒が好きです。 たまにBARにも行きます。 とは言え、ペース的には月に一回行くか行かないかレベルですが。 もともと私自身、お酒が好きというのもありますが 「大人」=「BARを知っている(飲みに行く)」という考えが、どこかにあったのでしょう。 就職して、程なくして「どこかBARに行ってみよう!」と思いました。 しかし、外食は全くしないし、BARへの勝手なイメージとして「ぼったくりだったらどうしよう…」と不安視することも無きにしも非ずでした。 でもBARには行ってみた

          個人的に「大人になったなぁ」と思う一つのライン

          「AI(愛)は掌に」 第十二話

          「悠仁くんって知り合い?」 庄司さんからの一言に、久楽は困惑の表情を浮かべた。 会議室に入って、次元に昨日の話をしようとしたときに言われた庄司からの言葉。 たしかに悠仁は久楽の知り合いである。 大学、学部、部活が一緒であり、知らない仲ではない。しかし、なぜ庄司から悠仁の名前が出たのかが理解できなかった。 「なぜ、悠仁の名前を…?」 「この前来たからね。ちょうど久楽くんと入れ違いに。『ここで働かせてください!』みたいな感じで。」 「ってことは、あいつもこのバイトを?」

          「AI(愛)は掌に」 第十二話

          「AI(愛)は掌に」(番外編)~悠仁の無駄な動き~

          ※悠仁の行動を軽く緩く追っていくだけの番外編です。 この話は第一話での悠仁サイド。 いやぁ、暑いなー。 まだまだ夏本番ってわけじゃないのに、いい感じに暑くなってきた。 春はとっくの昔に過ぎた感じ。 なのに、なぜ俺にはまだ春が訪れない!青春的な意味で! 俺だって大学デビューを果たし、女友達だってそれなりに出来た。 入学のオリエンテーションから、コミュ障を克服しつつ色々な女の子に声を掛けた結果だ! 高校の時には電話帳には母親と妹しか異性が登録されてなかったのに、今ではそこそこの

          「AI(愛)は掌に」(番外編)~悠仁の無駄な動き~

          「AI(愛)は掌に」 第十一話

          「井内さんに相談したら次元さんや庄司さんにメール見られちゃうじゃん…」 久楽はバイトを終えて、自室のベッドで横たわりながら井内へ、恋愛相談をしようとメールを打っていた。 そして、送信『直後』に気付いた。 千百合や井内に送ったメール、受け取ったメールは次元や庄司、もしかしたら尾上や他の人にも見られるかも知れない。少なくとも次元には見られている。普段の何気ない会話を見られるのは構わないが、ここまで赤裸々な話を見られるのは些か抵抗がある。 「気付くのがあと少し早かったら、井内

          「AI(愛)は掌に」 第十一話

          「AI(愛)は掌に」 第十話

          8月に入り、太陽もカンカンと照りつけてくる。 大学も夏休みに入った頃、久楽は夏季限定の短期アルバイトに勤しんでいた。 一日だけの派遣で、毎回仕事をする現場が違う仕事らしく、久楽は新鮮な気持ちで仕事に励んでいた。 久楽の今日の仕事は某有名アーティストのライブ会場の設営であった。 指示に従って、機材を運んだり、運んだり、運んだり…延々と運ぶ作業である。 「設営の仕事なんだからアーティストに会える訳ないよな…」と気付いたのは、仕事を始めて30分後のことだった。 ウキウキ気分も

          「AI(愛)は掌に」 第十話

          大衆演劇のPR

          「大衆演劇」と聞いて、多くの人は何を思いつくのだろう。 多くのテレビ番組にも出ておられる「梅沢富美男」や、近々実写映画が公開の「BLEACH」に出演予定の「早乙女太一」を思いつく人。 踊ってる時に、お金(いわゆるお花)を着物に付けられる場面。 お芝居は時代劇。 詳しく知らない人は、このくらいの知識なのかも知れない。 もしかしたら、「大衆演劇がなんなのかすら知らない」という人のが多いかもしれない。 大衆演劇の歴史は古いはずなのに、認知度が低い気がする。 歌舞伎や宝塚歌

          大衆演劇のPR

          「AI(愛)は掌に」 第九話

          その日、久楽は午前中の講義を終えて、部室で昼休みを過ごしていた。 美術部の部室はアトリエも兼ねているので、広々としている。その広々とした空間をパーテーションで小さく区切られたスペースがある。 いくつかの椅子と一つの少し大きめな机があり、ちょっとした小休憩スペースのようなものである。 部員からは通称『額縁』と呼ばれている。 売店で買ってきたパン2つとカフェオレを飲みながら『額縁』でゆったりと過ごしている久楽。 「お、久楽か。お前も昼飯か。」 不意に背後から声をかけられた久

          「AI(愛)は掌に」 第九話

          小説家と侵入者 小説家side

          とある小説家の住む一室。 部屋は大量の書物に囲まれ、本棚に収まりきらないのか、部屋のあちらこちらにも本が乱雑に置かれている。 部屋の中央には立派な机があり、机の上にはパソコンが一台置かれてある。 机の前に座り、パソコンの前で苦悩している男が一人。 男の名前は「不動 比呂」(ふどう ひろ) 小説家である。 悲劇を執筆させれば、右に出る者はいないと名を馳せている…訳でもない、寧ろこの世において名をさほど知られていない小説家である。 彼の作品の全てに共通するのは例外なく「悲劇」

          小説家と侵入者 小説家side

          「AI(愛)は掌に」 第八話

          ポツリポツリと降り出してきた雨。 久楽は雨から身を守るために、折りたたみの傘を差している。 帰路を歩く。 普段よりも、ゆっくりと。 足取り重く。 庄司の言葉を心の中で何度も何度も繰り返し、意味を探る。 ここしばらくは、この仕事の意味や目的を気にすることは少なくなっていた。 メールをする相手は、クセのある人もいるが、少なからず悪い人ではないと認識していた。 しかし、『深入りは禁物。文字なら取り繕える。』と言うのは、どういうことなのだろうかと、悩んでいた。 庄司の真意は何

          「AI(愛)は掌に」 第八話

          「AI(愛)は掌に」 第七話

          「冗談だよー。じょーだんー。」 冗談と言いながらも、庄司はクネクネと体を動かし、時々照れるように顔を手で覆ったりする。 久楽は心底、庄司に対して嫌悪感にも似た、苦い目線を流石にぶつけるほかなかった。 庄司は久楽の目線に気付き、おどけた様子から比較的、真面目な顔に取り繕う。先程のパターンでは無いことを祈る久楽。 その久楽の表情を見ても、庄司の表情は変化させず「さすがに同じパターンはしないよ」と小さく呟いた。そして更に続ける。 「…顔も声も分からない相手に深入りは禁物だよ。

          「AI(愛)は掌に」 第七話