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学生時代を含め、京都在住20年以上の主婦。 夫と娘との3人暮らしを楽しんでいる。街と食…

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学生時代を含め、京都在住20年以上の主婦。 夫と娘との3人暮らしを楽しんでいる。街と食べ物と古典文学への興味は尽きず、本屋で観光客向けの京都本をチェックするのが趣味。  日々の何気ない事や思い付きを文章にしています。源氏物語「桐壺」の超訳にも挑戦中。

マガジン

  • エッセイ集

    これまで投稿したエッセイをまとめました。

  • 桐壺をめぐる人々 ~超訳源氏物語「桐壺」~

    「受験対策で」「あさきゆめみしで流れはなんとか」って感じで、源氏物語を読みはしたけどなんとな~く、分かるけど分からないという方へ。源氏物語の冒頭「桐壺」を解説しつつの超訳で、この長い物語の骨組みが理解できる…かも?!

記事一覧

布団は晒され続ける

会社の向かいには、ワンルームマンションがある。その一室の住人が、この春から新しくなったらしい。というのは、やたらとベランダに洗濯物が干されるようになったのである…

shizuno
3週間前
18

『桐壺クライマックス!!』発売中です。

こちらに長らく連載(?)していた「桐壷をめぐる人々~超訳源氏物語『桐壷』~」をまとめて、『桐壺クライマックス!!』として発売しています。  『源氏物語』に興味は…

shizuno
9か月前
9

6人前の豆ごはん

高校生の時、家庭科の調理実習で豆ごはんを作る係になった。6人班で、友達と2人で担当した。  作り方は簡単である。お米を研ぎ、計量した水を入れて浸水させ、そこに豆を…

shizuno
1年前
14

ししとうの楽しみ方

ししとうは、夫の大好物である。 ただ焼いて、麺つゆにつけて冷やしただけのものだが、夫はすごく楽しそうに食べる。 美味しそうに、ではなくて、楽しそうに。なぜか。 …

shizuno
1年前
10

『京都、土下座で六時』発売中です

こちらでエッセイ集としてまとめていた記事の中から、京都に関するものだけを集めて、志津乃名義で『京都、土下座で六時』としてアマゾンから出版しました。 キンドル本も…

shizuno
1年前
3

私たちに花束を

私が18歳になった時、祖母が一抱えほどもある大きさの、赤いバラの花束をくれた。まだ成人してないのにな、という私の思いを知ってか知らずか、「18歳なのがいいの」と言っ…

shizuno
1年前
20

50歳のシンデレラエクスプレス

新幹線の中央改札口で待ってるよ 博多行きののぞみが、最後の停車駅を出て速度を上げ始めたころ、そんなラインが私のスマホに届いた。窓の向こうには小倉の街並みと、西鉄…

shizuno
1年前
22

効果と手抜きの果てのコスパ

故あって、エステに行った。 サロンに着くと、まずはカウンセリングを受ける。シミ、しわ、乾燥、肌で気になるところはないか、などなど。 そして聞かれる。基礎化粧品は…

shizuno
3年前
31

オシャレ坊主

新しい人が入社してきた。31歳男性、坊主頭。 彼と挨拶したとき私は気づかなかったが、そういうことに敏感な同僚は 「あの人、マスクで全部は分からんけど、相当男前やで」…

shizuno
3年前
5

他人の努力、嗤うべからず。

「いうても美魔女は、努力してはる」 これは先日、気持ちのいい庭を見ながらお茶を飲んでいるときに、友人が発した一言である。「いうても」が効いている。「なんだかんだ…

shizuno
3年前
13

旅のスタイルを変えてみたら見えてきたこと

娘が修学旅行に行っている間、私と夫も修学旅行と称して淡路島に行ってきました。 淡路島は関西から気軽に行けるところですが、行ったのは初めてでした。 初めてだったの…

shizuno
3年前
6

M君のこと

スーパーに行ったら、山盛りの豆アジが1パック100円だった。 これは南蛮漬けでしょ!! と思うのであるが、その調理過程を考えるとちょっとげんなりする。もう夕方なのに…

shizuno
3年前
11

サボる私、サボらない菌

朝、けだるかった。どんよりした梅雨入り前の空、湿気をはらんだ空気、無風。  今日はゴミの日だ。なんとかいつも通り起きて一通りの家事をこなし、ゴミをまとめたところ…

shizuno
4年前
4

誰かの恋愛模様

地下鉄のホームで電車を待っていると、近くで男性の大きな声が聞こえてきた。喧嘩だろうか?声が一つしか聞こえないところを見ると、どうやら電話で喧嘩しているようだ。時…

shizuno
4年前
4

パジャマの正体

何年か前、娘の幼稚園のバザーに出かけた。 そこで、売れ残っていた紳士物の肌着が目に留まった。アングルの物で「クレープ」と書いてあり、丸えりで、かつ前開き。ああ、…

shizuno
4年前
12

ゴミ袋の袋がゴミになるのはいつなのか?ゴミとはなんなのか?

ゴミの日に、ゴミを出そうとゴミ袋を用意していた。 最後の一枚だった。その、最後の一枚を袋から引き出しながら「待てよ?」と思った。 この、ゴミ袋が入っている袋は、…

shizuno
4年前
2
布団は晒され続ける

布団は晒され続ける

会社の向かいには、ワンルームマンションがある。その一室の住人が、この春から新しくなったらしい。というのは、やたらとベランダに洗濯物が干されるようになったのである。色は無地の白かグレーばかりで、多分男性だろうと思われた。
「しかしな、なぜ今日、布団干すかな?」
ある曇天の午後、同僚が仕事をしながらふと言った。朝は薄かった雲はどんどん厚くなっていき、その時にはもう、今にも降りだしそうな天気になっていた

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『桐壺クライマックス!!』発売中です。

『桐壺クライマックス!!』発売中です。

こちらに長らく連載(?)していた「桐壷をめぐる人々~超訳源氏物語『桐壷』~」をまとめて、『桐壺クライマックス!!』として発売しています。
 『源氏物語』に興味はあるけど難しそう、と思っている方に、ぜひともお勧めしたいです。

以下、前書きより抜粋

こんにちは。この本は『源氏物語』の最初の章「桐壷」だけを、解説と創作を交えながら分かりやすく超訳したものです。

私が初めて『源氏物語』に触れたのは中

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6人前の豆ごはん

6人前の豆ごはん

高校生の時、家庭科の調理実習で豆ごはんを作る係になった。6人班で、友達と2人で担当した。
 作り方は簡単である。お米を研ぎ、計量した水を入れて浸水させ、そこに豆を入れて炊く。味付けは塩と酒、こんぶ。
 お米の準備を終え、あとは調味という段になったところで、隣の班のアキちゃんが来た。
「ねえ、塩の量って、あれを6倍すればいいんだよね?」
そう言って黒板を指さした。黒板にはその日作るメニューの材料が板

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ししとうの楽しみ方

ししとうの楽しみ方

ししとうは、夫の大好物である。
ただ焼いて、麺つゆにつけて冷やしただけのものだが、夫はすごく楽しそうに食べる。

美味しそうに、ではなくて、楽しそうに。なぜか。

それはその一皿の中に、「当たり」が潜んでいるからである。
ししとうの「当たり」とはつまり、やたらと辛い一本のことである。

以前は私もししとうを良く食べていた。しかし、私は辛い物が苦手で、しかも当たる確率が非常に高かった。
まだ娘が離乳

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『京都、土下座で六時』発売中です

『京都、土下座で六時』発売中です

こちらでエッセイ集としてまとめていた記事の中から、京都に関するものだけを集めて、志津乃名義で『京都、土下座で六時』としてアマゾンから出版しました。
キンドル本もペーパーバックもありますので、ぜひぜひ読んでみてください。次の京都旅へのガイド本として、前回の旅のおさらいとして、はたまた楽しい読み物として、きっと楽しんでもらえると思います。アンリミ対象です。

https://www.amazon.co

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私たちに花束を

私たちに花束を

私が18歳になった時、祖母が一抱えほどもある大きさの、赤いバラの花束をくれた。まだ成人してないのにな、という私の思いを知ってか知らずか、「18歳なのがいいの」と言って、やけに大きなケーキと共に盛大にお祝いしてくれた。
 実際、私は次の年から進学のために一人暮らしを始めたから、それが直接祖母に祝ってもらった最後の誕生日となった。今思えば、祖母はそのあたりのことも考えていたのかもしれない。

今日、娘

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50歳のシンデレラエクスプレス

50歳のシンデレラエクスプレス

新幹線の中央改札口で待ってるよ

博多行きののぞみが、最後の停車駅を出て速度を上げ始めたころ、そんなラインが私のスマホに届いた。窓の向こうには小倉の街並みと、西鉄バス。帰ってきた。そしてもうすぐ彼女に会える。

久しぶりの帰省である。コロナ禍初だ。その間、両親がともに癌の摘出手術をした。毎度駆け付けたい気持ちは山々だったが、このご時世、もちろん親が入院している病院に見舞いに行くことはできなかったし

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効果と手抜きの果てのコスパ

効果と手抜きの果てのコスパ

故あって、エステに行った。

サロンに着くと、まずはカウンセリングを受ける。シミ、しわ、乾燥、肌で気になるところはないか、などなど。

そして聞かれる。基礎化粧品は何をお使いですか?と。

う、と詰まる私。なぜなら答えは

無印良品の化粧水とニベア。以上。

だからである。エステなんていう、美容意識レベル最高ランクの場所に来ていながらこのアイテムの少なさといったらどうだ。何も手入れしてない感満載で

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オシャレ坊主

オシャレ坊主

新しい人が入社してきた。31歳男性、坊主頭。
彼と挨拶したとき私は気づかなかったが、そういうことに敏感な同僚は
「あの人、マスクで全部は分からんけど、相当男前やで」
と言った。実際、昼休みに一緒に食事をした男性社員が
「マスクとったらびっくりするくらい男前やったで!歌舞伎役者かと思た!」
とわざわざ言いに来たほどだ。ついでに、彼が坊主頭なのは血筋で頭髪がヤバくなることが分かっているので、早めに、学

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他人の努力、嗤うべからず。

他人の努力、嗤うべからず。

「いうても美魔女は、努力してはる」

これは先日、気持ちのいい庭を見ながらお茶を飲んでいるときに、友人が発した一言である。「いうても」が効いている。「なんだかんだ言って」くらいの意だ。

私と友人のそばには、美魔女がおられる。複数おられる。たまに私たちの前に降臨なさると、私はその魅力にひれ伏し、爪の先ほどは自分もきれいになったような気になって帰ってくる。

他にも個人的に、人生の先輩として見習いた

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旅のスタイルを変えてみたら見えてきたこと

旅のスタイルを変えてみたら見えてきたこと

娘が修学旅行に行っている間、私と夫も修学旅行と称して淡路島に行ってきました。
淡路島は関西から気軽に行けるところですが、行ったのは初めてでした。

初めてだったのは目的地だけじゃなく、旅のスタイル、そもそも旅に出るタイミングなどいろいろとあり、私としては旅そのものの楽しさと合わせて、学びと発見がたくさんあったので記録したいと思います。

※旅に出たい

娘の修学旅行の旅程を見ていたら楽しそうで、い

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M君のこと

M君のこと

スーパーに行ったら、山盛りの豆アジが1パック100円だった。

これは南蛮漬けでしょ!!
と思うのであるが、その調理過程を考えるとちょっとげんなりする。もう夕方なのに、これをさばくところから始めるのかと。
値段と味と、手間を天秤にかけて、結局食い気が勝った。よし買おう。今夜はアジの南蛮漬けだ。

それから間もなく、私は台所でこの決断を後悔していた。思ったより、アジが沢山入っていた。やってもやっても

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サボる私、サボらない菌

サボる私、サボらない菌

朝、けだるかった。どんよりした梅雨入り前の空、湿気をはらんだ空気、無風。

 今日はゴミの日だ。なんとかいつも通り起きて一通りの家事をこなし、ゴミをまとめたところでなんだか力尽き、台所の隅の壁にもたれてそう欲しくもないお茶を飲みながら、ぼんやり室内を眺めていた。ゴミ収集までにはまだ時間がある。

このまま、寝てしまおうか

そう思った。もうだるい。なんかだるい。しかしこのまま寝てしまったらゴミが出

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誰かの恋愛模様

誰かの恋愛模様

地下鉄のホームで電車を待っていると、近くで男性の大きな声が聞こえてきた。喧嘩だろうか?声が一つしか聞こえないところを見ると、どうやら電話で喧嘩しているようだ。時間は午後10時前。人もあまりいないせいか、声が構内に響き渡る。できるだけそっちを見たくない。

嫌だなあ、早く電車来ないかなあ、とひたすら思う。時折流れる駅のアナウンスが男性の声をかき消してくれるのが有難い。

男性はひっきりなしにしゃべっ

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パジャマの正体

パジャマの正体

何年か前、娘の幼稚園のバザーに出かけた。

そこで、売れ残っていた紳士物の肌着が目に留まった。アングルの物で「クレープ」と書いてあり、丸えりで、かつ前開き。ああ、浴衣の下に着る和装用の肌着なのだなと思った。

それにしても、生地がさらさらした感じで気持ちよさそうである。表面は、なんというかヴィトンのエピシリーズみたいに細くでこぼこした仕上がり。縁のかがり方は、さすが日本製、と言いたくなるほど繊細で

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ゴミ袋の袋がゴミになるのはいつなのか?ゴミとはなんなのか?

ゴミ袋の袋がゴミになるのはいつなのか?ゴミとはなんなのか?

ゴミの日に、ゴミを出そうとゴミ袋を用意していた。

最後の一枚だった。その、最後の一枚を袋から引き出しながら「待てよ?」と思った。

この、ゴミ袋が入っている袋は、今はゴミではない。でも、ゴミ袋が出てしまったら、ゴミになって、今度は逆にこのゴミ袋に入ってしまう訳だ。

なんだかグルグルしている…。

じゃあ、このゴミ袋の入っている袋はいつゴミになるのか?私はゴミ袋を半分だけ口から出してみた。まだだ

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