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タイバーツに浸食されるドル
ドル圏の実態
国際金融の世界では東南アジアはドル圏だと言われてきた。1997年のアジア通貨危機以前には、輸出増進が成長戦略であるため実質的に対ドル固定相場を採用して輸出産業を後押しした。
ドル圏であることは貿易建値通貨から分かる。1996年のデータ(タイ中央銀行)だと、輸出代金の受取はドルが91.7%、バーツが1.3%であった。輸入代金の支払はドル80.1%、バーツ0.8%という具合である。
中央銀行デジタル通貨と国際決済
中央銀行デジタル通貨(CBDC)への注目度が上昇している。CBCDがリテール決済に利用される場合、次のようなメリットが生じると言われる。CBDCは銀行口座を持てない人に対してデジタル決済システムを提供できる。また、犯罪やテロに関係する資金のマネーロンダリングを抑制できる。
CBDCが国際決済に利用されると、コストが低下し、着金までの時間が短縮することが期待される。実際、銀行のSWIFTを通じた国
契約通貨としての円と豪ドル
今回は国際通貨の機能の中でも計算単位(価値尺度)を取り上げる。民間部門においては契約通貨としての使用が計算単位の機能に当たる。例えば、輸出取引に際して商品の価格をドル建てにするという話である。なお、貿易取引において価格を表示する通貨を貿易建値(たてね)通貨とも呼ぶ。
契約通貨としての円
貿易取引で使われるのはなんとなくドルだと考えている人もいるだろう。財務省の貿易統計から日本の実態を垣間見るこ
武器としての国際通貨
ウクライナ侵攻に対する制裁としてロシアの銀行がSWIFTから排除されたことは記憶に新しい。なお、SWIFTは海外送金等の国際決済をするための通信サービスのことである。こうした金融制裁はイラン、北朝鮮といった「ならず者国家」に対して実行されてきた。
テロマネーとの闘い
金融制裁が大々的に実施されたのは2001年の911テロに際してである。ブッシュ大統領はアルカイダへの反撃としてテロリストの資金調
SDR本位制を考える
ドル本位制の問題
金とのくびきを断ち切られたドルを基軸通貨とする国際通貨システムとなって50年余りが経過した。このシステム下において世界経済は成長を続けたものの安定性を欠くという問題が指摘されて久しい。
次のような事態が現行制度の問題として認識されている。急激な資本の流出入という資本移動の不安定性、為替相場の乱高下や均衡水準から乖離が続くミスアライメント、国際収支不均衡が調整されずに累積した不
国際通貨ポンドの機構
機構とは機械などの諸部分が互いに関連して働く仕組みのことであり、メカニズムと言い換えられる。ポンドはどのような機構によって国際通貨の機能を果たしたか、歴史を19世紀まで遡ることによって確かめる。国際通貨ポンドを知ることで現在のドル体制、そして人民元の国際化を評価する際に役に立つはずだ。
1. 多角的貿易ネットワーク
機構の成り立たせる要素の1つは多角的貿易ネットワークが確立されたことである。経
国際通貨システムの分断を考える
トランプ氏が大統領に再選した場合に中国に対する輸入関税を60%にすることを検討しているとワシントン・ポストが報じた。米中対立の再燃である。中国による知的財産権の侵害を問題視し、米国はかつて4回にわたる制裁関税した。結局は、中国による米国農産物の輸入拡大によって手打ちとなった。
決済通貨での分断
トランプ再選によって国際通貨システムが分断する事態となるのだろうか。予測するのは無理なので足下の状況