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Feature FUTURE

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PLANETS CLUB「 こども未来部」メンバーによるリレーマガジンです
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#教育

花のない桜を、見上げたことはあるか。

花のない桜を、見上げたことはあるか。

 3月某日、午前8時30分。塾としては早い時間帯に、中3担当講師陣が校舎に待機する。この日は、公立高校入試の合格発表日である。スタッフ同士で雑談を交わしながらも、互いに緊張感を隠せずにいる。それも当然だ。積み上げてきた時間の結果が、この後数分で決着をつけられてしまうのだから。
 ほどなくして、塾の電話が立て続けになり始めた。自らの結果を確認した生徒たちからの電話である。祝福、ねぎらい、あるいはなぐ

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学び直して、学ばされ -歴史講座における「流れ」と「知識」の葛藤

学び直して、学ばされ -歴史講座における「流れ」と「知識」の葛藤

 怒涛の8ヶ月は、何気ない雑談から始まった。
 1年ほど前、とあるオンラインイベントで簡単な自己紹介(歴史学を専攻していた塾講師)をしたら、あれよあれよと話が進み、〈高校教科書レベルの日本史・世界史を学び直す〉という大層な講座を企画することになった。『歴史寺子屋』と銘打ち、近現代史部分に絞って日本史・世界史計11回、足掛け8ヶ月の講座をなんとか完走した(参加者の方が書いてくださったイベントレポート

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スピリチュアルは20%

スピリチュアルは20%

実はタロット占いができる。
好奇心ではじめて、センスがあったのか当たると評判になり大学時代よく占った。知っている人だけでなく知らない人もよく占うし、行列もできた。

絵解きは完全にセンスだ。多分、語彙力と関係が深くカードの出るタイミングと絵の意味がわかれば、文脈が理解でき語彙がある人であれば、ある程度、絵解きはできる筈だ。出る位置とカードの意味の組み合わせ、ここにセンスがいる。
不思議さを見出すな

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"bring-brung-brungen" ーふぞろいなものを学ぶということ

"bring-brung-brungen" ーふぞろいなものを学ぶということ

He often breaks a vase. 「彼はよく花瓶を壊す。」
He broke the vase. 「彼はその花瓶を壊した。」
The vase was broken by him. 「その花瓶は彼によって壊された。」

 中学生が英語を学ぶうえで現れる難関の一つが、上のような「動詞の不規則変化」だ。過去の時制で用いる過去形、特定の構文で用いる過去分詞は、規則通りの変化なら、通常動詞の

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鞆の浦海遊記、母と。

鞆の浦海遊記、母と。

このお盆、他県に住んでいる姉が帰ると伝えてきた。
真っ先に思ったのは、正直この時期に…だった。
今年に入ってから全世界がコロナに振り回された。
「どうなの?まずくない?」と母に問いかけた。我が県内でも感染者は出ている。
「そうなんだよね、近所の手前、車はちょっと遠くに停めてもらう」
「それがいいね」と会話した。
ナンバーはチェックきっとされるしその方が無難だろう。
それにしても…10日はどうする

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夜泣きのこと

夜泣きのこと

長男、うちの兄貴は繊細だ。
今話題の繊細さんだったのではないだろうか。
いや、今だって(成人済み)繊細なんだろうけど。
産まれたての頃、モロー反射(赤ちゃんが手をビクビクッと動かす反応)がすごくて自分の反射行為で目を覚ます。
今ではネットで対応が調べられるが当時はスマホもないし泣いて泣いてちっとも眠らない時は「なんで自分でやって自分で泣くんだ」と落窪んだ目で恨みがましく泣き続けるムスコをみて深夜絶

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悪気がないという陥穽

悪気がないという陥穽

普段から思ったことを口にするタイプの子は身の回りに1人はいる。
他人事のように言っているけれども若いころは無知で自分自身そのきらいがあったかもしれない。何やらキャラが立つような気がしていた。
いつもなら「今それを言っても仕方ないだろう」という発言をいくらでもスルー出来るところを今回は言わなくてはと意識する間もなく窘めていた。自分が発する言葉に少し驚いたくらいだ。
それは世間話から始まった。幼い子ど

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金木犀薫る庭で

金木犀薫る庭で

少しひんやりした風にまじって薫る秋の気配。
金木犀が咲き始める。
「あ、金木犀」
1年間その花のことをすっかり忘れているのに風とほのかな芳香に人は破顔する。
「そんな季節なんだね」
そんな当たり前の光景に少しばかりの羨望を感じてしまう。
10年以上前に遡る。
その年の3月に初めて報道があった新型のインフルエンザはブラジルで発生した。あれよという間に世界中に広がり10月には我が子の学級閉鎖という事態

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迷子に対するアニキと妹の距離

迷子に対するアニキと妹の距離

心配性だ。
とてつもなく心配性。
昨今の幼い子どもに対する酷い事件は目を覆うものばかりだし目を離したわずかの隙に事件は起こる。
子どもたち、特にムスメが視界から離れると恐怖にかられる。
「何が嫌かってめっちゃ大声で名前叫ぶじゃん。あれが嫌だった。声大きいし怖くて怖くて」大きくなってからムスメに聞くと私とはぐれれると半狂乱の私が大声で名前を叫ぶので「ヤバいおかあさんが狂う💦」と焦ったそうだ。はぐれ

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誰の側にいて学ぶか、が問題。

誰の側にいて学ぶか、が問題。

AIは枠組が大事だ。
量的なものから探し出すことに長けていてもその枠からはみ出すことはない。
AIがテーマの仮面ライダーゼロワンをみていた。
初代から仮面ライダーが好きだ。改造人間となった悲哀を背負って戦う本郷猛の姿が魅力的だった。
今作の主人公AI会社社長飛電或人は悩まないタイプかと思いきや結構悩む。極めて現代っ子のライダーだ。
AIを信じ人間と共に生きる未来のために戦うライダー。コロナで書き込

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教科の生徒に推しを習う ー学び合いのラポール形成

教科の生徒に推しを習う ー学び合いのラポール形成

「とにかく、本っ当に名作なんです。タイトルの意味だけじゃなくて、ちゃんと中身を調べてきてください!」
 呆気にとられた。こんなに声を張れる人だったんだ。受け持って半年、そんな一面は見たことがなかった。
 「事件」は春期講習の授業後に起こった。その日は英作文(お題は“What do you do in your free time?”)の添削答案を返却し、クラス全体に向けて解説をした。うち一人はアニ

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料理人に纏わるサスペンス、そして食で育てる事

料理人に纏わるサスペンス、そして食で育てる事

「美食探偵」ドラマ版を観ていた。
食に纏わる事件を食で解決するという触れ込みだったが大して探偵要素は無い。
この世界観では警察は機能してないし主人公の行動は説明不足だしツッコミ所はあるけれど、私は1話を観て泣いてしまった。
どこに?と言われそうだけれど。
自覚もないままに抑え込んでいたものをドラマをみていて不意に突きつけられた。
この物語では食事をつくる人を蔑ろにしたことが『罪』だったからだ。

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10年越しの「潜在的カリキュラム」 ー絶対零度の日本史講義

10年越しの「潜在的カリキュラム」 ー絶対零度の日本史講義

 「△△の勉強が苦手だったのですが、〇〇先生に出会って変わりました。先生の授業はとても分かりやすく、飲み込みの悪い私にも親身に接してくれたんです。先生に習ったおかげで、△△が得意になるだけでなく、勉強自体も好きになれました。だから私も、〇〇先生のような教師になりたいです」

 「先生」と呼ばれる立場、特に学校教員の場合、上のような動機でその道を志す人が多い。「△△の勉強」を部活動や特別活動(学校行

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PTA+πr²

PTA+πr²

『運』というものに幼い頃から縁がない。
急いでいる時のレジの順番はいつもイレギュラーなことが起こり後回しで最初に並んだのに最後になってる。
2年連続お正月に大凶のおみくじを引く。
子供会で配られたお菓子は私だけ何か足りない。しかも2年連続。
小さなことが積み重なると貧乏くじひくのに慣れてきてなんならヤケになって自ら引きに行くくらいだ。
運がない男の子が出てくる好きな古い漫画がある。くらもちふさこの

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