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保護貿易ー貿易規制は正しいのか

みなさんこんにちは。今回は保護貿易についての記事です。

以前投稿した自由貿易で経済学者の多くは「自由貿易」を支持していると説明しました。しかし、自由貿易は万能ではありません。そのため、世の中では輸入を制限しよと動きがあります。これを“「保護貿易」主義“と言います。これは外国から自国の産業を保護の目的を目指す経済政策です。

保護貿易とは

保護貿易とは、政府が自由貿易による弊害を防止し、自国の産業を保護または育てるための政策である。保護貿易は関税で輸入量を制限する「輸入数量制限」や、政府や政府に指定された企業が貿易を独占したり、各種の手続きや基準を厳しくして、間接的にコストを上げ、自主的に輸出数量や価格を規制させるやり方です。これを「非関税障害」と言う。

このように貿易規制によって保護された産業は、外国との競争にさらされなくて済み、そのため価格を高く設定をし価格設定された分の利益を得ることができます。また、保護貿易は特定の産業に対する補助金のような役割を果たします。しかし、その価格を負担するのは消費者です。商品を作るための資源は企業ですが、最終的に組み立てられた商品の値段にその費用が上乗せされることになり、消費者に負担を背負わせられます。また、企業によっても負担になり、輸入規制による価格高騰により、購入するための費用が増え、企業の利益が減る恐れがあります。保護貿易も万能ではありません。

保護貿易主義者の意見は正しいのか

保護貿易を支持する支持者たちは「国内の産業や労働者を守るため」などを主張います。その主張は大きくて4つあります。
①輸入によって国内の雇用が減る。
②輸入によって国内の賃金が下がる。
③国際競争によって幼弱な産業が衰退する恐れを防ぐために、貿易に規制する。
④格差が広がる。

などがあります。これらの主張を一つ一つ解説していきます。

①輸入によって国内の雇用が減る

先に述べたように、保護貿易は補助金の役割をはたします。ですので、保護された特定の産業は、雇用を守ることとなります。しかし、国全体の雇用が保護されている証拠はありません。また、自由貿易が国内の雇用を減らす証拠もありません。

一つの例としては、アメリカ、メキシコ、カナダの間で結ばれた北米自由貿易協定です。この貿易協定を結ぶ前、「自由貿易によって雇用がなくなる」と批判がありました。しかし、北米自由貿易協定が発効した1994年以降の失業率の推移では、3カ国とも失業率は上がっていません。環太平洋パートナーシップ協定(TTP)でも、2018年に発効した以降、加盟国である日本の失業率も増えていません。

雇用が減り失業率が増えるのは間違いだったと分かりました。経済学から見ていても自由貿易と失業は関係ありません。基本的に失業率は景気の変動によって上下するものです。ですので、自由貿易にすれば雇用が減るのは間違いです。
仮に保護貿易をして、輸入を制限しても失業率は下がるとは限りません。むしろ貿易規制のよって、自国の市場に依存することになり、需要や供給が限定的になり、狭い市場で競争するため、雇用の機会が制限されることになる。また、輸入を制限することによって、自国では手にはいれない財やサービスが少なくなり、製品の組み立てや、輸入によって成立するサービスができなくなり、大きく失業率が高くなる。貿易を制限しても、国の失業率が改善されることはありません。

②輸入によって国内の賃金が下がる

保護貿易は政府に指定された特定の産業を優遇されるため、その産業の賃金は保障されるはずです。しかし、国全体で見た時に賃金が上がっているかは別です。保護された産業の賃金は商品サービスの値上げで補います。つまり、その産業以外で働く人々は高くなった物価で生活しなければなりません。

そもそも、賃金は労働生産性や労働市場によって決まるもので、貿易を規制で賃金は上がりません。自由貿易下で、外国と競争した方が生産性は上がり、長期的に賃金は上がります。データを見ても積極的に交易している国では基本的に賃金は上がり続けています。

③産業保護のため

貿易保護を支持者は労働者の保護だけではなく、産業保護も主張しています。例えば、未熟な産業を海外からの競争から守り、充分な力を身につけてから、市場競争に参加させると主張します。この未熟な産業を保護することを「幼稚産業保護」という。理論的には妥当な意見だと思います。しかし実際は、必ずしも未熟な産業が成長するとは限りません。

有名な例はブラジルの保護貿易政策です。
ブラジルは、自国のコンピューターを保護するために外国からのコンピューターの輸入を制限しました。しかし、ブラジルのコンピューター技術は昔のままで、他国との技術が大きく開きました。また、コンピューター産業だけではなくコンピューターを使用するすべての企業が痛手となり、遅れたコンピューター技術で、世界と戦わないといけなくなりました。

もちろん韓国みたいに幼稚産業保護政策が成功した国もあります。だが、ブラジルの例のように必ずしも保護政策が成功するとは限りません。といっても、韓国を含む東アジア諸国が成長できたのは、幼稚産業保護より、集中的な投資と人材育成、人口増加です。これらによって、しっかりとした競争力を身につけました。必ずしも幼稚産業保護だけの要因だけではありません。

④格差が広がる

世界中では、時代が進むにつれ豊かになっています。しかし、それと同時に格差も広っがています。格差が広がったのは貿易の原因だとという意見があります。
しかし、先進国が発展途上国に不公平な貿易を押し付けた訳ではありまあせん。アフリカなどの発展途上国は、貿易のせいで貧しくなったのではありません。貧国がグローバル経済社会から取り残せれたことで、格差が広がったのです。
日本や韓国、中国、シンガポールは、積極的な貿易やグローバル経済の参加によって、めざましい高度な成長を実現しました。貿易によって貧困になって格差が広がること基本的に関係ありません。

食料自給率は高い方がいいのか

世界と日本の食料自給率

保護貿易支持者の中には、貿易を規制して食料自給率を上げるべきと主張しています。日本の食料自給率が低いのは事実です。日本の食料自給率(カロリーベース)は、2020年で38%となっております。ちなみにカナダは266%、オーストラリアは200%、アメリカは132%、フランスは125%、ドイツは86%、イギリスは65%、イタリア60%、スイスは51%となっており、日本は他の先進国と比べて低い水準です。

我が国と諸外国の食料自給率-農林水産省より

1965年の日本の食料自給率(カロリベース)は73%もありました。だが時が進むにつれ、食料自給率は生産額ベースも含め、徐々に低下しています。そして現在ではカロリーベースで40%を切っています。

日本の食料自給率の推移(1965年〜2021年)-農林水産省より

このように、日本の食料自給率の低さに保護貿易支持者は輸入を規制して、食料自給率を上昇を目指すと主張しています。しかし、これは危険な考えです。

食料自給率の低さは問題ではない

そもそも食料自給率は高い方が良いのかという問題です。比較優位原則から考えてみれば、比較優位を無視して自給率をこだわるのは浅はかな考えだと思います。保護貿易支持者が自給率を高くしなければならないと発言しているのは、危機感を煽って、補助金支給や高関税を求め、国内の生産を正当化したいからです。

しかし日本は天然資源や土地の規模に恵まれていないため、貿易を通じて輸入しなければ満足に食料を確保できません。日本の農業は他国からの資源をかき集めなければ、食料を生産するための機械すら動けません。これはアメリカや中国、ヨーロッパなどの国々も同じで、他国から資源や苦手分野の製品を輸入し、自国が得意とする製品を生産し、その一部を輸出する。これは世界中で行われており、これがなければ世界は動きません。日本が無理して食料自給率を上げても、供給に限りがでるので、物価が上がり、消費者が苦しい思いを背負いながら食料を消費します。外国からたくさん食料を輸入すれば、供給力が高まり、食料が安くなります。

食料安全保障のためには貿易が必要

こう言うと「食料安全保障の問題が生じる」と意見が出ます。この観点から保護貿易支持者は戦争や輸出制限、経済制裁などを心配し、国内生産の正当性を主張します。しかし、日本が供給国の全てと交戦状態に入ることは、およそ考えられません。こうした事態は外交努力や利害関係によって回避できます。

それよりも我々が心配すべきなのは地震や台風などの災害や天候です。日本が食料自給率100%の場合、自然災害の影響は大きく受けます。こういった災害によって食料生産が減少し、食料供給がほぼ崩壊するでしょう。実際に江戸時代の日本で同じようなことが起きました。この時の日本は食料自給率はほぼ100%でした。その結果、全国的な災害時に食料生産が崩壊し食料供給ができなくなり、大飢饉が発生しました。この事態を回避するには、世界中で供給を分散することによってリスクを回避できます。世界中で災害が起きることは低いので、世界中に食料生産をし貿易で食料を補えば、食料不足に陥ることはほぼ回避できます。

「他国が輸出制限令が出される可能性がある。」と言う人もいます。しかし、そんなことをすれば1番困るのは供給国の農業生産者です。農業生産者は食料を輸出して儲けるというビジネスをしています。もし輸出制限令が出されば、農業生産者は食料を輸出することは出来ないので、収益が減ります。その結果、供給国の経済悪化や農業生産者から強い反発がきます。

食料自給率向上の目的は国内生産者の保護です。支持者は安全保障を盾にして、食料自給率の正当化します。しかし先程も言いましたように、食料自給率向上すれば供給が限られ物価が上昇します。一般消費者にはあまりメリットはありません。1番得するのは関税や補助金によって保護を受けることができる国内生産者です。だから安全保障の理由を使って食料自給率向上を掲げているのです。しかし、ほとんどの人達はこの誤りを見向けることが出来ずに、「食料自給率が高いことは良いことだ」だと信じ込んでしまっています。

トランプ大統領の保護貿易

2016年から2020年の約4年間在任したドナルド・トランプ前大統領は経済政策の一つとして保護貿易を主張しました。これは世界中で注目され、ある者は怒り、ある者は呆れました。それでもトランプ前大統領やその支持者は意思変えることなく支持し実施しました。

製造業を呼び戻そうとする誤り

トランプ前大統領は製造業の海外流出を防ぎ、流出した企業をアメリカ国内に呼び戻し、製造業の雇用改善を掲げました。そしてトランプ大統領は 2018 年 3 月 8 日、1962 年通商拡大法 232 条に基づき、鉄鋼に 25%、アルミニ ウムに 10%の追加輸入関税(従価税)を課すことを決定し、同月 23 日より適用となった。
しかし、自動車や鉄鋼業などのアメリカの製造業は、20世紀後半中心の産業であり、現在では中心的な産業ではありません。

米国の製造業・サービス業のシュアー経済産業省より
米国の業種別就業者数の推移(1990年以降)-経済産業省より

現在のアメリカの産業構造は変化しており、対名目GDPで表したシュア率は、製造業は下がり続けており、従業員数も20世紀より少なくなっています。一方でサービス業はシュア率が上昇しており、従業員数も増えています。アメリカ経済ではサービス業が中心になっており、GAFAやベンチャー企業などのITを活用している企業が成長しています。これらの企業は他の製造業とは異質なものです。例えばApple社は製造業を関わりを持つ企業ですが、先程も言ったように従来の製造業ではありません。Apple社はアメリカで開発、運営するが、製造は新興国や発展途上国で工場を置き、世界中に分立して造ります。造りあげた製品を先進国で販売するビジネスモデルをしています。

トランプ前大統領はその製造業をアメリカ国内に呼び戻す政策を主張していましたが、しかしそれは無意味なことです。関税を設けてもApple社は中国から工場をアメリカに引き上げる気はありません。現在のビジネスモデルが崩壊して、むしろ逆にアメリカ側にダメージを受けることになるだけです。

保護貿易が戦争を引き起こす

ブロック経済が第二次世界大戦を引き起こした

1929年に起きた世界恐慌が世界中の国の経済に大きなダメージを負いました。世界恐慌前はイギリスやフランスなどのは自由貿易で交易したが、世界恐慌が訪れると、貿易体制を180°転換し「ブロック経済」化を進め、貿易保護による関税で国内市場の保護や、本国と植民地で経済圏を形成し、他国との市場の連携を打ち切りました。この体制転換により世界中に広がりました。
そして日本やドイツは経済圏の拡大のために、日本は中国に進出し、ドイツは東南ヨーロッパに進出しました。こうした排他的な貿易体制が利害関係が揺らぎ、第二次世界大戦の開戦の要因になりました。

昔と現代では経済状況が変わっていますので、昔の結果が今も同じようになるとは分かりません。ですが、排他的な保護貿易によって悲劇的な結果になったのは大きな教訓になったはずです。

開かれた世界を目指せ

第二次世界大戦以降、再び世界は自由貿易体制を構築して、貿易を拡大し続けています。日本でも池田勇人元総理大臣時には自由貿易体制をし、日本経済を成長させた一つの要因になりました。しかし、まだ完璧ではありません。国と国の間には複雑な条件と文化の壁、不法的な商売などがあります。昔よりかは遥かに自由化・グローバル化は進みましたが、現在でもその問題が存在しています。しかし、それでも充実した安心安全のグローバル社会は実現可能です。まだまだ遠い存在ですが、今よりかはグローバル化し、世界経済や文化交流は更に発展すると思います。

以上。

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