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【書籍紹介】探求する精神【読書感想】

こんにちは!ビケウォジャックです。

今回は理論物理学者である大栗博司さんの「探究する精神」
という本を読んで印象に残った点や感想などを書いていきます!

大栗さんは、京大理学部出身で東大助手も務めたのち、数理解析研究所などさまざまな研究所で研究をされ、さらにはアメリカの大学で教授職などもなされているすごい方です。

彼の専門分野の難解な内容はこの本では踏み込んでおらず、
大栗さんの回顧録的な部分からはじまり、理論物理学がどのような学問なのか、世界において、歴史的に科学がどのような位置付けだったのかという部分などにも触れられています。

さらには、
「理論物理学など、一見すぐには役に立たないものを学ぶ意義
 またそれに投資する意味」
などについてふれられています。

物理や数学とか難しいことはわからなくても楽しくよめる
知的好奇心を満たしてくれる一冊となっているので、
ぜひ読んでみてください!

以下では、特に印象に残った点をピックアップして紹介します。

やはり”書籍”には大きな魅力がある

この本の中でも、「本」の魅力が語られている部分がありました。

「ローマ皇帝から届いた言葉」の章で語られているように、
千年以上前に生きていた人間の考えていたことなどがこうして
今生きている私たちに届いている。

その事実が素晴らしいことだと語られています。

私も、最近本の魅力に気づいた身なので、とても共感しました。

日本の英語教育&国語教育

また、大栗さんは海外での研究経験も豊富でアメリカの大学で教授職を務めたり海外の研究機構の長なども経験されてきた方なので、日本の英語教育についても触れられていました。

大栗さん曰く、
日本人は英語を話せる・話せないの以前にまず母国語である日本語をもっと使えるようにならなければならないと言っています。

日本の英語教育に対する批判でありがちなのは
日本はリスニング&リーディング偏重であり喋る・話すができない
文法ばかり気にしすぎている
などと言ったことをよく聞きます。

ですが、大栗さんは海外の研究者と接する中で、(特に米国において)
彼らの言語運用能力の高さに感心したそうです。

日本は島国であり、長い間共通の背景をもった人々と暮らしていたのに対し、多国籍国家のアメリカは異なる背景をもった人々と語り合う必要がある。そう言った場合は、明確で論理的な議論が必要になる。

このような理由から、アメリカの方はそもそも一般的な言語能力に長けていると言います。

日本人には基本的な数学の文章題を理解できなかったり、国語の記述問題を解答解説をみて自己採点できなかったりと、基本的な言語能力が低いことが指摘されています。

この指摘はまさにそうだなと感じました。
私自身、塾で講師をしていた経験もありますので、子供たちには徹底的に国語をやらせるのが最優先では?と思ったこともあり、
日本の英語教育について考えさせられました。

理学と工学の違い

また、理学と工学についての違い
一見役に立たないように見える理学の存在意義について
終盤で語られています。

理学は、「地図をもたない旅」であり、好奇心の赴くままに研究し
何かに役立てようという目的を持って行われることではありません。

一方、工学は基本的に明確な目的があります。
理学において発見された一般原理を、個別の事象に当てはめ、人々の生活の向上などに直結する学問です。

これだけをみて比較した時、あなたはどちらに投資しますか?
どちらに大金を渡した方が人類が得をしそうでしょうか?

短期的な目線で見れば工学の方でしょう。
工学の場合はいわゆる”目的地”なるものが設定されていますから、
そのために必要な資金を与えるようなイメージです。

では、理学に投資をする必要はないのでしょうか?

そうではない。と大栗さんは言います。
実は、理学には工学と同じかそれ以上に投資をする価値があると言います。

なぜなら、理学は「普遍的で多様な場面で応用が効く可能性がある」学問
だからです。

電磁気学で知られるマクスウェルは電磁気統一の方程式を導出しました。
彼は知的好奇心に突き動かされこの方程式を導きました。

しかし、この方程式は現在では無線通信をはじめとしたあらゆるものの基礎をなす式となっています。

工学の場合、何らかのゴールが設定されている影響で、それ以外の用途がないまたは限定されるという欠点があります。

以上のような理由から、人類は短期的・直接的に役立つ工学に並んで、
長期的・間接的に役立つ理学にも大きく投資すべき
だと説きます。

非常に説得力のある論理で、読んでいてなるほどと思いました。

おわりに

最後まで読んでくださりありがとうございます!

工学部の人間としては、理学部の人間に憧れている節があります。
先行きが見えない不安的な時代にある現代において、ひたすら真理の探究を好奇心のまま行う理学は小さな頃から夢見ていた道でした。

しかし、年を重ねるごとに、自分にはそのような才能がないかもしれないという現実をかず多く突きつけられてきたこと、大きなリスクをとる勇気がなく、短期的にわかりやすく役立つ工学の道に(いわば)逃げてしまったのです。

学んでいることは面白いですし、誇りも持っています。
ただ、長期的な思考をわすれず、知的好奇心を大切にして生きていきたいなと思いました!

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