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たしばり (春の星々140字小説コンテスト応募作品③)
畑番になりたい福田さんは描いている。
猫界で畑番になるには
螺鈿に雷を蓄え細かくしたものを
鼻に蕾で留めておかなければならないのだけれど
この町でそれをしようとすると
やれ異獣だ、やれ瘤猫だ
などといわれてしまう。
だから
あれこれと思慮をめぐらせた福田さんは
錨で苗をたくさん描くことにしたのだ。
https://x.com/hoshiboshi2020/status/1774389502028
祈り (春の星々140字小説コンテスト応募作品②)
この細い糸の一本一本がどれほどの旅をして来たのだろう。
精錬を終えた絹糸を前に
失敗できないと気を引き締める。
日本茜から頂く赤は太陽の色、祈りの色。
流れてきた多くの時間と生命を想う。
「あぁ…いらっしゃったのですね…」
静謐を乱してしまうのをおそれ
私は息を止めたまま綛を澄んだ染液に浸す。
https://x.com/hoshiboshi2020/status/177438950202868
ドライフラワー (春の星々140字小説コンテスト応募作品①)
食が細くなった。
最近の外食ではご飯少なめでお願いをする。
食が命の根源という説には概ね賛成で
確かに生物としてのピークを過ぎた感はある。
しかし悪いものではない。
心身から脂や水やあくが抜け
ゆっくり枯れていくのはむしろ心地良さを覚える。
人生の後半、幸せとは何かを理解し始めている気がする。
https://x.com/hoshiboshi2020/status/177438950202868
ブンゲイドンジャラ2 提出作品4作
喜怒哀楽でそれぞれ1作ずつ。
喜
らーららら♪
ららららららら♪
らーらららー♪
ららららららん♪
らーららららー♪
怒
馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿にしやがって。馬鹿
冬の星々140字小説コンテスト 応募作品その3
「マダレム!」
敵を前に呪文を唱えた。
今、僕は課された試練に挑んでいる最中で
きっとこいつがラスボス。
呪文の手応えは十分にあったが、はたして…
赤い丸が出現!よしっ!倒せた!
…
【かんじてすと】
( )のなかをかんじにしましょう。
(ひろ)いそら。
ひろ、ひろ、ひろ
まだれにムで広。
マダレム。
冬の星々140字小説コンテスト 応募作品その2
むしろ私だけが問える。
私は私以外が問う事を認めない。
問う。
父よ、母よ
なぜなのですか?と。
父、貴方は広長治。
母、貴女は広高子。
広い。
長い。
高い。
それだって微妙です。
境界線での攻防。
過去にそこに触れた人もいたでしょう。
でしたら余計になぜ?
なぜ私の名前は
広広(ひろひろし)なのですか?
冬の星々140字小説コンテスト 応募作品その1
冬の空が広いのは何でだろう。
今日の星がやけにきれいなのは何でだろう。
きれいなほど悲しくなっちゃうのは
何でだろう。
星の数ほどある星。
どれか一つくらいは吸い込めるかもって
深呼吸してみたのだけれど
星は変わらずそこで瞬いていて
やっぱり僕は無力なまま。
ぽたんぽたんと足元に星が産まれた。