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悲観的に考えるとなぜダメなのか? 物事を楽観的に考える視点とは(オプティミストの思考術)

「これはどうせうまくいかないな...(汗)」or「何とかなるっしょ(笑)」

同じ境遇にいても、人によってその現実(ファクト)をどう見るかは異なります。簡単に大きく分けると、「悲観的に見る」か「楽観的に見る」か。

これはそもそも育って来た環境や親から受け継いできた価値観で形成されているモノの考え方に起因するように思います。

楽観的に考えられる方が、何となく人生楽しく生きているようにも思えますが、悲観的な思考の人が楽観的になるのは難しいようにも思います。では本当にこの思考は切り替わらないのでしょうか。

改めて、楽観と悲観の違いと、モードチェンジの工夫について考えます。

オプティミストとペシミスト

楽観主義の人を「オプティミスト」、悲観主義の人を「ペシミスト」と英語では言います。たまに日本語の会話でもカタカナ英語として使われたりしますね。

例えば、予期せぬ「不運な状況」に見舞われたとき、オプティミストは「不運は一時的。限定的な出来事であり、その原因もこのケースに限る」と考えます。一方、ペシミストは「この悪い状況はこの先も長く続く。原因は自分にある。だからこの先何をやってもうまくいかないだろう」と考えます。真逆の思考パターンですね。

このオプティミストについてはアメリカ人心理学者で、うつ病と異常心理学に関する世界的権威でポジティブ心理学の生みの親として知られるマーティン・セリグマンの著書である「オプティミストはなぜ成功するのか」に多くのヒントが記載されています。

この書籍によるとオプティミスト(楽観主義)の方が、健康状態が良いとのこと。生活習慣病にかかる率も低く、仕事やスポーツでもよい成績を収める傾向にあり、ひいては長生きする傾向にあると言います。楽観主義でいることは心身ともに健康を維持できそうです。

ペシミストの思考パターンである「この先何をやってもうまくいかないだろう」という思考は気持ちだけでなくカラダ全体、生活全体に悪影響を及ぼすとのこと。これはなぜ起こるのでしょうか。

大敵「学習性無力感」

「何をやっても意味がない」と思ってやる気すら起きないという現象について、興味深い実験があります。

3匹の犬を使った実験です。犬を3つのグループに分けて弱い電気ショックを与える実験を実施しました。

Aグループ
弱い電気ショックを与えます。ただし、鼻でパネルを押すとその電気ショックを止めることができます。電気ショックをコントロールできます。

Bグループ
弱い電気ショックを与えます。ただし、Bグループの犬は電気ショックを止めることができません。電気ショックのコントロールはできません。

Cグループ
犬には電気ショックを与えません。

それぞれを分類どおりに経験させたあとで、犬たちをボックスに連れていきます。ボックスは2部屋に分かれており、間の仕切りを飛び越えれば電気ショックから逃れることができます。

結果、電気ショックをコントロールできる経験をしたAグループの犬と電気ショックを与えなかったCグループの犬はあっという間に仕切りを飛び越えたのに対して、Bグループの犬は逃げる努力をせずに座り込んだままでした。

このBグループの犬は「何をしても無駄だ」という無力感を学習したと考えられます。これを「学習性無力感」と名付けられています。

そしてこれが人に起こるとどうなるか。何度やっても結果につながらないという経験をすると、「自分が何をしても無駄だ」という考えが定着する。ひいてはうつ状態に発展します。無力感を学習してしまうことでうつ病になってしまいます。実際、ペシミスト(悲観主義者)はうつ病の発症率が高くなります。

「無力感」から「希望感」へモードチェンジする工夫

悲観主義の人は楽観主義になれないのでしょうかか。どうすれば「どうせダメだ…」ではなく「何とかなる」とポジティブなマインドを手に入れられるのでしょうか。

3つの視点で考えることで悲観から楽観へモードチェンジをすることができます。まず目の前の現象(ファクト)に対して、その解釈を3つの要素に分けて行います。

①普遍的 or 特定的
②永続的 or 一時的
③個人的 or 外的

ペシミスト(悲観主義者)はいずれも前者「普遍的」「永続的」「個人的」に物事を見がちです。それに対してオプティミスト(楽観主義者)は後者の「特定的」「一時的」「外的」にファクトを解釈します。

何をやってもダメだ…(普遍性)
この状態はずっと続きそうだ…(永続性)
私が悪いんだ…(個人的)

こうして自分の中に原因を置いて、辛い状況が長く続くことを連想してしまうと、マインドはずっとネガティブなままです。このマインドがメンタルだけでなくフィジカルに及ぼす影響についても実験結果があります。

先の犬の実験と近しい設定で行った、ハツカネズミの実験です。こちらもネズミを3グループに分けます。

Aグループ
自力で逃れることのできる軽い電気ショックを与えます。

Bグループ
逃れることのできない軽い電気ショックを与えます。

Cグループ
電気ショックを全然与えません。

これを経験させた後にすべてのネズミに肉腫の細胞を植え付けます。肉腫は成長すれば確実に死に至るもので、通常の状態では50%の確率で死に至る量を植え付けました。

すると電気ショックを与えなかった通常の状態であるCグループのネズミは統計どおり50%死亡しました。一方で、電気ショックを自力で逃れることを学習したAグループのネズミは70%生存、電気ショックから逃れられず「学習性無力感」を体験したBグループのネズミは27%しか生存できませんでした。

これは楽観主義や悲観主義が寿命や免疫機能にも影響をもたらすことを明らかにした実験です。やはり、学習性無力感は何としてでも回避したいところです。

常に楽観的であるべきか?

上記の通り悲観主義よりも楽観主義の方が良さそうなのは分かりました。しかし、常に楽観主義であるべきなのでしょうか。実は悲観主義にも長所があります、それは慎重さと現実を正しく記憶する点です。

例えば、リスクが大きいことをするときは、楽観主義は避けた方が良さそうです。想定されるリスクが大きい時に「何とかなる」は後で大事に発展しかねません。特に、自分以外の人間を巻き込んで行われる意思決定では、時に悲観的な視点で石橋を叩くことが大切です。

逆にリスクが小さいこと、例えば個人で完結するような誰にも迷惑をかけない範囲での意思決定は楽観主義的に行動を起こした方がよいと言えます。

目の前の状況や問題が「個人の範疇か」、「組織全体に及ぶのか」というリスクの大小で、「普遍的/特定的」「永続的/一時的」「個人的/外的」の視点を切り分けて、自分の中の楽観と悲観のモードを変える工夫をすると良いですね。

無力感を乗り越える「レジリエンス」の高め方

「学習性無力感」の反対にあるのが、自分が立てた計画を達成した時に感じる「自己効力感」ですね。こうした感覚を含めて「打たれ強さ」「折れない心」「しなやかな心」を身に着ける「レジリエンス」という概念が近年注目されています。

そして、このレジリエンスはレジリエンスマッスルと言われる4つ「I」で鍛えることができると言われています。

・I can(私は◯◯できる)
自分が過去に経験した困難な状況を思い出し、どのように乗り越えたか、その時の学びを思い出しましょう。自分の中にある隠れた財宝に気づけるかもしれません。

・I have(私には友人・知人がいる)
自分の周りの大切な人、お世話になった人を思い浮かべてみて下さい。きっと自分の持っている宝物に気づくはずです。

・I like(私は◯◯が好きだ)
自分の大切な人の写真や楽しかったことを考えましょう。わくわくして自分の中にある楽しむ力、ポジティブなマインドを感じる事ができます。

・I am(私は◯◯である)
自分の得意なこと、強みを考えてみましょう。また、自分の強みは自覚していない事も多いです。自分では当たり前でも、周りからすると異端な能力である方は多いです。周りの人にも「私の強みは何だと思いますか?」と質問するのも良いでしょう。自分でも気づかなかった自分の宝物を発見できるのかもしれません。

この4つの視点で自分という存在、自分が持っているものを客観的に理解する事で、逆境を乗り越える心の筋肉を身につける事ができます。このレジリエンスマッスルが身に付ければ、学習性無力感から距離を置いて、オプティミストの思考を手に入れることができます。

まとめ

人間生きていると辛い境遇に置かれることもあります。その時に、悲観的に考えるか楽観的に考えるかで大きく分かれます。リスクが大きいものに対しては慎重にある種悲観的に物事を見る方がよいです。一方でそうでないケースでは楽観的に考える方が、心身の健康のためにも良さそうです。

そして悲観主義、楽観主義は人間そのものに備わった普遍のものではなく、モードチェンジできる切り替え可能なものです。「普遍的⇒特定的」「永続的⇒一時的」「個人的⇒外的」という3つのスイッチでモードを切り替えて、自分をオプティミストモードに持って行きましょう。

そして、最大の問題は「学習性無力感」です。そうならないためにも、4つの「I」で自分が持っているモノや自分自身の存在に価値を認め、レジリエンスマッスルを高めるスキルを身に着けたいですね。

気持の持ちようで、心だけでなく、カラダも変わってきます。このコロナ禍では自分のヘルスケアは自分で行わなければなりません。悲観しがちな環境だからこそ、オプティミストの精神で、壁を乗り越えていきたいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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