マガジンのカバー画像

27
シーザーサラダが好きな彼女と僕の恋物語
運営しているクリエイター

記事一覧

& episode 027

& episode 027

美味しそうなロゴを早速シールにしたくにちゃんは、

朝のルーティン、ブラックコーヒーからのカフェオレを飲み干し、

学校へ向かった。

どんなサービスなのかと聞いたら、

「全体があたたかくなるもの」

とニュアンスのみの回答だった。

まだ、コンセプトの段階なのかもしれない、ロゴはまた変わるかもしれない。

でも、彼女が作るサービスなら・・・と期待する僕がいる。

彼女が学校へ向かった後、僕はデ

もっとみる
& episode 026

& episode 026

提出に間にあわせるべく、logoは鎌倉に住み農家をしながらデザイナーをやっている将太という50代の知り合いに任せることにした。

将太は僕が学生の頃あるデザイン展のオープニングパーティをきっかけに知り合い、将太がこよなく尊敬しているデザイナーが皆川さんだと話すと、僕のくにちゃんもオフの日の散歩バックは10年以上mina(ミーナ)を愛用しているので、すぐに意気投合をした。

「もの」の強みだと思う。

もっとみる
& episode 025

& episode 025

僕のオーソドックスな感性を持つクニちゃん。

ハーバードの生活に慣れ、それなりにアグレッシブなマインドへ染まりつつある。

財務諸表論、マーケティング論、コミュニティー論and son on...。

彼女が吸収するもの、広がっていくアンテナを僕は目を瞠るばかりだ。

プログラグラミングにも関心を持ち、深夜、明日のレシピを考えるかのように生き生きとした表情で、構想を練っている。

コードを打つ手

もっとみる
& episode024

& episode024

あっという間だ。

くにちゃんと過ごして、あと数ヶ月で一年になる。

すっかりアメリカでの暮らしになれ、友人も増えた。

最近、僕が仲良くしているのは、ロージャというロシア人だ。

彼はエンジニアで、今、熱いのは仮想通貨だと言う。

でも、と彼は続ける。

「もともと「中央集権ではなくても通貨が発行できる」というコンセプトによって注目されているが、僕は中央集権によって仮想通貨が発行されると考えてい

もっとみる
& episode 023

& episode 023

起床は午前5時。

僕の愛しい彼女は、温め直したコーヒーを片手に早々に家を出た。

入れたてのコーヒーがいつも定番だったが、ここではそうはいかない。

僕らは今、ケンブリッジに居る。

晴れてハーバード大学に合格し、MBA取得に向け大忙しのくにちゃん。

大学時代のラクロスは、この日のためにあったんだと思う。と、夜を徹して宿題に取り組んでいる。

オイルサーディンとマッシュポテト、薄くスライスした

もっとみる
& episode 022

& episode 022

りんの挙式は、見事なもだった。

さすが、くにちゃんの同僚。世界を股にかけるスーパーサラリーマンの力強さは、本物だと思う。

世界が混乱に陥っても、必ず助けに来てくれるんじゃないか。

同性の僕ですら、そう感じる挙式だった。

あっぱれ。

本当に、幸せになって欲しい。

りんのあの日の涙を思い出しながら、改めて思った。

感動したのは、式の最中、二人のエピソードの中で紹介されたこんなエピソードだ

もっとみる
& episode 021

& episode 021

「ママになった女友だちが、口々に「でーきーなーいー!」って言うじゃないですか。」

リンが三谷製糖の和三盆を、くにちゃんがたてた抹茶で頂く。

茶道とかしこまったものではなく、カフェのような感覚で抹茶を楽しむ。

「大声で「出来ない」と言える権利が欲しくて「結婚したい。」と、たまに思います」

セレブ雑誌から抜け出したようなリン。街中で、ハッと目を引くことも多いだろう。

「でも、」

と彼女は続

もっとみる
& episode 001

& episode 001

シーザーサラダ。彼女の好物で、冷蔵庫にはクルトンとシーザードレッシングがストックしてある。

今日のサラダには、長野から届いたサニーレタスと、熊本県産のまっ赤に熟れたトマト。それから、鎌倉でデートしたパン屋で調達したバゲッドをクルトンにして、千葉の農園から直送してもらった半熟卵をトッピングする。

僕の彼女の名前は「くに子」。

「くにちゃん」と呼んでいる。

今日は僕の仕事の納品が迫っていて、夜

もっとみる
& episode002

& episode002

太巻き。が、今日の彼女の主たる朝食。

バイタリティーあふれる彼女は、朝食を欠くことが無い。まるで、一食たりとも逃すものかという勢いで食事に臨む。世界を股にかけ、仕事をするビジネスパーソンは、男女問わずこれくらいでなければやっていけないだろう。

しかし、なぜ、太巻き?

リーマンショックから少し景気が上向きだした最近、接待もまた少しづつ増えてきており、昨夜も彼女は2件、都内の美味しい小料理屋でお

もっとみる
& episode 003

& episode 003

今日は、趣味のランニングのオフ会で豊洲でバーベキュー。

くにちゃんは、ヨーロッパに出張中で1週間程不在だ。

ラン友の佳久(よしひさ)に、近況を聞かれる。

「どうよ、彼女とは?」

「順調だよ」

「相変わらず、放置プレイか(笑)」

「信頼関係と言ってくれ(笑)」

俺だったら耐えられないなと、佳久はバンズをほおばりながら言う。

「コーラ、飲むかい?」

どうも、と佳久は受け取る。

佳久

もっとみる
&  episode 004

&  episode 004

くにちゃんと僕の出会い。

それは、7年前になる。

当時、僕とくにちゃんは大学生だった。大学も、学部も、サークルも全く接点がなかった僕らは、ある就活のイベントで知り合った。

今も昔も、就職活動というやつは学生をより強い人間する「試練」だと思う。

たった大学4年間で、どんな差がつくのか。

僕は建築を専攻しており、すでに専門が決まった立場だった。

就活イベントは、高校時代からの友人にどちらか

もっとみる
&   episode 005

&   episode 005

「総合商社に行きたいんですか?」

僕は、彼女に聞き返した。

くにちゃんは、まっすぐな目で一呼吸おいて答えた。

「はい。第一希望です」

海外で戦える人間になりたい!そう思いながら、大学時代を過ごしてきたそうだ。

朝一に英会話学校へ通い、それから学校の授業へ。夕方は、家庭教師を行い、夜は、第二外国語である中国語のレッスンをオンラインで。

サークルは体育会系のラクロス部で英会話と調整をしなが

もっとみる
&   episode 006

&   episode 006

僕がくにちゃんと付きあい始めたのは、桜がほころび始める3月。

銀行の内々定が出て、本命を控えた時期だった。

僕は、研究室からの推薦で大手建設会社の内定が決まったところだった。

理想的なキャリアはエッジが効いた憧れの建築家の元で働くことだったが、社会人としてのスタートは組織だった会社の方が、後々仕事がしやすいぞという先輩からの助言に従った。

くにちゃんは、手堅く銀行の総合職の内々定をゲットし

もっとみる
& episode 007

& episode 007

年越しは「鴨」が食べたい。

という才女たってのお願いを叶えるべく、僕はお正月商戦で賑わうデパートへ買い物へ行った。

売り場は高齢の方が多く、その他は僕らのような若いカップルが多かった。

来年、僕らは30歳を迎える。

正月の買い物をデパートでするなんて、僕らも少し背伸びができるようになったものだ。

例年は、お互いの家で歳を越していた。

しかし、今年彼女はプロジェクトリーダー候補に抜擢をさ

もっとみる