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明るい絶望 #仕事場でのこと
最近は仕事がたてこんで、さらに酒を飲むことを覚えたために何も手につかない。洗濯物をして、タオルケットのなかで眠る。明け方にときおりやってくる人がわたしの手を握り「ただいま」という。いつからそんな言葉覚えたんだろう、と寝惚けたまま、わたしは「おかえり」と微笑む。また眠る。すべてが眠りのなかだ。
仕事がたてこんでいくたびに、わたしは自分の事を半透明だなと思う。このうすぼんやりとした感じは、少し安心
明るい絶望 #テディベア
失えば永遠だ。あの子の目をまっすぐ見たときに、わたしははじめて命の終わりを想像した。ここからゆっくりと終わってゆくのだと思った。彼女の瞳は黒くて、頭ひとつぶん小さな背丈の彼女をだきしめて、大きなスポーツバッグに詰めた小さなテディベアを差し出した。彼女は笑っていた。そんな風に泣いたらだめだよ、嬉しいね、会えて嬉しいよ。冷房に冷えた彼女の皮膚は白くてやわらかかった。失えば永遠だ。ゆっくりと終わって
もっとみる88のアンティカノアンティタノ
暗闇の中で見つめ合っていた。窓から入り込んだ点描の光が暗い部屋と体に這う。泣きはらした喉の下が苦しくて、目の前に寝そべるその名前を呼ぶことさえできなかった。車の走る音がする。窓から差し込んだ一瞬の光がその人の顔を掠めた。黒い眼は微動だにせず私を射抜く。私がその人に手を伸ばすと、握るようにされる。その人の指先は驚くほど冷たく、手のひらは汗ばんでいた。その人はいつものように、私を許すために微
小選歌集・職業詠「砂入りくる」
一本と数える方も呼ばれる方もたった唯一のひとであり
誰彼が交わっていた神秘すら請求される証明をする
犯罪の抑止をうたわれぼくたちは未然の罪を昼食とした
膨大な数字であった性欲は可視化できない世界の話
裸になれますかと笑っていうのは間違いだろうかヒヤシンス
バニラバニラバニラ!抱きしめた時のあなたの匂い「グリンス」を知る
本籍を此処にもってきて
12月30日の渋谷によせて
2017年が終わる数日前、電車に乗っているときだった。
私は黒いキャップをかぶり、射光用の伊達眼鏡をかけて白いスヌードをかぶり、スキニージーンズとリーボックのハイカットを履いて座っていた。ワイヤレスのイヤホンでBRAHMANを聴いている。A WHITE DEEP MORNING。正午過ぎ、中学時代の友人と渋谷で待ち合わせるため、JRの急行電車に乗っていた。
電車の中は混雑とも閑散ともい
小選歌集「やさしく起こす」
水のみを求めし肉の奥に在る愛だけが骨 よく曲がってる
この世の角部屋に住まいて海は魚眼の青と信じ続ける
生活の窓辺で星を洗う手に特別なことは何も起こらず
不可もなく部屋にからだはひとつきり秋雨は夜に彷徨いて降る
アルバムにタイトルがないわたしには名前があって夜明けが来ます
台風一過ふるえてるただひとをひとたらしめているかげぼうし
まっすぐ見てください大切なことだけが
小選歌集「ただならぬ夜」
福祉的失恋をした夕暮れの蛍光灯はいつもうるさい
テトリスが形をそろえ消えていく愛しているのでいつかそうなる
ひとりでにカーソルだけが震えてる遠くで山田が呼ばれてる
「ほんとうに人間ですか」Googleが問うそういえばわからなくなる
可愛いを「愛しげ」というふるさとに暴力ごとき雷が鳴る
義務として想い出があり空っぽのiPhone5しんと冷え