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エッセイ「未知しるべ」

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日々感じたことや、これまでの体験などをつらつらと書いたエッセイ。
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記事一覧

手放して、手に入れる

手放して、手に入れる

「30歳までに結婚する!」

そんな決意もむなしく、30歳の誕生日1週前に当時の彼氏から別れを告げられた。お先真っ暗というか、真っ白になったのを覚えている。

涙も枯れ果て、友人に別れの報告をするとひと言。

「それは良かった!」

え?今、なんと?

あんぐりした表情だったのだろう。友人は、彼といる私が全然、幸せそうに見えなかったことをぶっちゃけてくれた。そしてもうひとつ。

「彼と付き合ったま

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モンスターの正体は?

モンスターの正体は?

小学生のお子さんがいる方の教育相談に乗ると、結構な頻度で「モンスターペアレント」という言葉を聞く。いずれも「担任にモンスターペアレントと思われるのが怖くて、本音で話せない」という内容。

✳︎

モンスターペアレントって、なんなんやろう。学校に意見するのがモンスター?例えば子どもがいじめられていて、学校に「対応してください」ってお願いするのはモンスター?

違うよね。

かくいう私も15年近い教員

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模倣からオリジナルへ。

模倣からオリジナルへ。

3歳の次男は、ようやく2語文を話し始めた。きっと、発達のスピードは同年代の子に比べてゆっくりめ。ただ、彼の観察力には驚かされてばかりだ。

次男が2歳のころ。「うちって大家族やったっけ?」と言いたくなるほど、大量の洗濯物をたたんでいた。パトカーのおもちゃで機嫌よく遊んでいた次男が、そろりそろりと近寄ってくる。上目づかいで両手を広げて私を見る。抱っこをねだるポーズだ。

「今、洗濯物をたたんでいるん

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お互いさまやね。

お互いさまやね。

結婚10年目に突入した私たち夫婦。会話がないわけではないけれど、明らかに昔よりは夫の反応が薄くなった。

「ふーん」「なるほどー」「おもしろいねー」

絶対、適当に返しているよな。なんかムッとする。夫に対して遠慮のかけらもない私は、「なにその反応。こうやって、夫婦の会話は少なくなっていくんやでぇぇぇぇ」と笑いながらちょっとだけ脅す。

プリプリしながら洗い物をしていたとき、「いや待てよ」と手が止ま

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ウェディングドレスと大都会、そして軽トラのおっちゃん

ウェディングドレスと大都会、そして軽トラのおっちゃん

あれは9年ほど前、披露宴を終え、ウェディングドレス姿で2次会へ向かう最中のこと。

とんでもなく方向オンチな私は、タクシーを降ろされた場所から歩いて1分ほどの会場にたどり着けず、迷子になった。

もちろん夫も一緒だったけれど、ほぼ初めての場所。慌てて担当スタッフに電話をかけに行き、東京の大都会、ビルが建ち並ぶ大通り沿いでまさかの1人ぼっちになった。

✳︎

ええ歳をした大人。「助けてー」と泣きわ

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なに基準?

なに基準?

「自閉」って言葉に、昔から違和感がある。少なくとも私がこれまで学校現場で関わった、自閉症スペクトラムに分類される子はみな、表現は得意といえない反面、世界観をしっかり持っていた。

たまーーにポツリと打ち明けてくれた発想がおもしろく、「この素材をこう組み合わせるか!」「なるほど!」と頭が下がった。了解を得てみんなに紹介させてもらうと、自然と拍手が起こったこともしばしば。

表現しないからって、心を閉

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復活!メモ魔ライフ

復活!メモ魔ライフ

さとゆみゼミ東京道場で、日常にアンテナを張る大切さを学んだ。

しかしアラフォーの私、残念ながらすぐに忘れてしまう。

何か対策は・・・と思いついたのがメモ魔になること。いや、正確にいうとメモ魔ライフを復活させることだ。私は前職で担任をしていたとき、かなりのメモ魔だった。

「えんま帳」といわれる分厚いノートに、子どもたちの記録を残す。発表のアイデアのおもしろさ、成長具合など、可能な限り具体的に書

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ハードボイルドな教育実習

ハードボイルドな教育実習

はじめて教員の仕事を垣間見た、教育実習の思い出を書いてみる。

当時50代だった指導教官は、京都生まれ・育ちの女性。翌日からの教育実習に向け、あいさつに訪れた私を見るなり「待っていたのよー!!」と笑顔で迎えてくれた。

「なんてええ人なんや、現場の先生たちからすると結構面倒くさい(らしい?)教育実習をこんなに喜んでくれるやなんて!」と喜ぶ私が連れて行かれたのは、教室裏の農園。

「これ、全部耕して

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義父のはなし

義父のはなし

私の義父は、かなりおもしろい。そして、めちゃくちゃ温かい。

一見ひょうひょうとしていてお堅いけれど、実はめちゃくちゃおもしろい。私は義父が大好きだ。

キャリーするバッグやのに・・・さかのぼること約10年。
両家顔合わせのとき、スーツを着た義父は、キャリーバッグを手に持って登場した。キャリーするバッグやのに、普通のカバンみたいに持っている。しかも「重いわー」ってずっと言っている。

その瞬間、私

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いちばんぼし、見ーっけ!

いちばんぼし、見ーっけ!

教育実習のころからずっと、受け持った子どもたちに贈り続けてきたものがある。過ごした日々で、私が見つけた「その子のいいところ」を記したいちばんぼしカードだ。

私の原点は、「100%無理!」という担任からのひと言。当時はめちゃくちゃムカつき、ほぼ反発心から「ほんなら、私が1%の可能性でも信じ抜く教師になってやろうやん!」って思ったのがスタートだ。

「できない」ではなく「できる」ところに目を向け、自

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「言葉」が人の心を壊す可能性

「言葉」が人の心を壊す可能性

心を壊す。人間である限り、だれにだって可能性はある。たまーに「打たれ弱いから心を病むのよ」なんて聞くけれど、そんなことはないと思う。

マイナスな言葉の威力いじめやパワハラの恐ろしさは、言葉にあるような気がしてならない。少なくとも私はそうだった。「死ね」「あなたはダメ」「消えろ」など、毎日のようにひどい言葉を浴びせられ続けると、少しずつ、でも確実に心は弱っていく。ブラックコーヒーに入れた数滴のミル

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「無償の愛」はだれから?

「無償の愛」はだれから?

「無償の愛」は母から子へ注がれるっていうけれど、私はむしろ逆だと思う。母から子に注がれる愛が「無償の愛」なら、なぜ耳をふさぎたくなるような悲惨な虐待や赤ちゃんの遺棄が絶えないのだろうか。

反対に幼少期の子どもの母に対する言動は、無償の愛だなぁって思う。見返りなんて求めず、当たり前のように愛情を注いでくれる。

小学2年生になった長男は、とにかく私を褒める。少しでもメイクや髪形を変えようもんなら、

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ひとりって孤独?

ひとりって孤独?

私は1人が結構好きだ。1人でフラッと散歩に出かけるし、ラーメン屋や映画館にも入る。そんな私だけれども、高校2年生のある時期までは1人が超絶苦手だった。

「悪口に同意しない」は大罪小学校は4人グループ。中学校は8人グループ。高校は、7人だったかな。当然のようにグループで行動し、行きたくもない場所に付き添う。隣にクラスメイトはいたけれど、あのころの私は、多分孤独だった。

グループのメンバーだったY

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死してなお、生きる

死してなお、生きる

私は義母に会ったことがない。夫と出会う十年ほど前、卵巣がんで亡くなったそうだ。

読まれることのない手紙写真に映る義母は、どことなく夫に似ている。義母の弟さんと初めてお会いしたとき、「シャキシャキした感じが姉さんに似ている」「母親と似た相手を選ぶって聞くけれど、ほんまやなぁ」と言われた。

結婚後、初めての母の日を前に、私は義母宛てのプリザードフラワーを用意し、手紙を書いた。

夫は何をしだすんや

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