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写真は肉眼を超える

写真は肉眼を超える

高校最後の秋、受験勉強のために籠っていた図書館で神社仏閣の棚を眺めていると或る写真と目があった。火花の散るような出会いだった。

撮影者の名は土門拳。写真界の直木賞と呼ばれる毎日新聞主催の賞「土門拳賞」にも名前を残す、昭和を代表する報道写真家だ。

出逢いもともと神社仏閣がなんとなく好きで、そういった写真集をパラパラ眺めることが勉強からの逃避になっていた。しかしその中に一枚だけ目を逸らせない写真が

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なぜ勉強をするのか【後編】

なぜ勉強をするのか【後編】

 「なぜ勉強をするのか」後編です。前編では狭義の「勉強」と本質的な勉強とに分け、「勉強」の方をする理由を書きました。なので後編では後者の勉強について、「なぜ勉強するのか」という問いに対する私なりの考えを書いていきます。ここからは名言引用祭りになりますがご了承ください。

1.巨人の肩の上に立つ ニュートンの手紙で用いられたことで有名なこの言葉は、先人の知の積み重ねに基づいて何かを発見することを意味

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「努力」という言葉が怖い

「努力」という言葉が怖い

「努力は報われる」というのは、真理ではなくて願望だと思うのです。

でも願望であるだけに人々の心の奥深くまで根を張っていて、時に人を縛り付けたり傷つけたりするんじゃないでしょうか。

日々努力していたいと思うけれど、「努力」という言葉がとても怖いです。なぜこんなに怖いのか、なぜこんなに責められているような気持ちになってしまうのか、わからない。わからないということが余計に怖いので言葉にしてみました。

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「あなたの感じ方はあなただけのもので…」

「あなたの感じ方はあなただけのもので…」

あなたの感じ方は あなただけのもので 誰にも責める権利はない

 ヤマシタトモコさん作の「違国日記」と言う漫画に出てくる言葉です。「違国日記」は、ある日突然事故で両親を亡くした主人公の田汲朝(15)と、彼女を引き取った人見知りの小説家であり朝の叔母にあたる高代槙生(35)の手探りな同居生活を描いた漫画です。

 このセリフは両親を亡くした直後なのに悲しんでいない自分を「へん」だと思っていた朝に対す

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仏像考

仏像考

はじめに 突然ですが私は俗に「仏像ヲタク」と言われる部類の人間です。どうしてこんなに回りくどい言い方をしたかといいますと、「仏像」が美術的な性質や歴史的・文化的性質だけでなく宗教的な性質も持っている非常に複雑なものだからです。

 誤解を恐れずに言えば私は「仏像が好き」なのです。トップの写真のように写仏をしてしまうくらい…(笑)しかしそもそも仏像に「好き」と言う表現を使っていいものかいつも迷います

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死なずに此処にいるのは

死なずに此処にいるのは

 日差しはまだまだ暑いのに、仙台の風はもうすっかり秋の薫りです。夏休みが明けたあたりからSNSで目にする「自殺」に関する投稿。死ぬことと生きることへの価値観が渦巻く中で、私もそれなりに思うことがありました。

 初めて死にたいと思ったのは小学校6年生の冬でした。というよりも本当に具体的に「命を絶ちたい」と思ったのはそれが最初で最期です。

 きっかけは「壮絶ないじめ」…などではありませんでした。客

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推しの結婚

推しの結婚

 9月18日、いつものようにSNSを開くと何やらTLが慌ただしい。目に飛び込んできた「古川未鈴」「結婚」の文字たち。でんぱ組.incのセンター、古川未鈴(ふるかわみりん)さんの結婚報告だった。

 6年前にでんぱ組.incを知ってから、それまでアイドルに微塵も興味のなかった私にとって彼女たちは唯一絶対のアイドルになった。当時は最上もがさんが好きで、いわゆる「もが推し」だった。自転車で山を超えて人生

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明日の朝まで息を止めよう

明日の朝まで息を止めよう

 この肩に乗る空気が重たい。空気なのに、私の体一つでは支えられない。まるで私の方がからっぽなようだ。

 臓物ごと全て吐き出しそうになりながら、ここに無い“If”のことを考えてしまう。今私を苦しめているもの、環境、容姿、そして何より私自身の考え癖…これら全てから解放されていたら、私は幸せに暮らせていたのだろうか。

「いや、そんなはずない。私はこの苦しみの分だけ強く優しくなれるのだ。この人生がいつ

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言葉の呪力

言葉の呪力

 2016年9月28日から言の葉採集帳というノートを作っています。本、漫画、雑誌、SNS、WEBサイト、テレビ、就活中のメモ帳…身の回りのあらゆる狩場から自分の琴線に触れた言葉を採集して保管するノートです。細々やってきて、今は二冊目になります。

 「言霊」というだけあって、人の思いが乗った言葉は凄まじい情報量を孕んでいます。話し手の主張・思想は勿論、今までどんな言葉に触れてきたのか、どんな人に影

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霞と東京

霞と東京

霞の向こうに新宿が見える  ツバメはうまくビルを縫っていく 

山崎まさよしさんの「ツバメ」の歌い出しです。

私の東京は朝靄の中。夜行バスの浅い眠りから覚め、まだ薄暗い早朝の大都会にパンプスで降り立つ。

旅行で訪れる時の東京は、楽しくキラキラした風景に思い出の着色が施されて夢の様な世界。でも、私が「東京」といわれて真っ先に思い浮かぶのは、就活中に見た冷たい海の底のような東京の姿なのです。仙台で

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今度こそあの日の願いを

今度こそあの日の願いを

 1年前の5月11日。

 飲み会の空気とアルコールに浮かれている中、携帯に目をやるとLINEの通知が届いていました。
何の気なしに本文を開いた途端、頭で内容を理解するよりも先に短い叫び声と大量の涙が零れていました。

それは大好きだったサークルの先輩の訃報でした。

彼は4歳年上の男性で、誰よりもしなやかで美しくバレーをする人であり、皆を笑顔にする天才でした。一人でサークルに行っても独りに

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君のことばに救われた

君のことばに救われた

 初めて「お題」を出発点とするnoteを書きます。

 言葉に救われた経験は沢山あって、中にはそれがなければ今ここに私はいないんじゃないかと思うものさえあります。本や雑誌の一部だったり、歌詞だったり、SNSの誰かの言葉だったり…。

さて、どれを取り上げて書こうか…と考えた時に頭に真っ先に浮かんだのは、サークルの後輩から貰った手紙でした。

 他の誰でもない、私のためだけに紡がれた言葉。そして格好

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サリエリでもいいからモォツァルトを見ていたかった。

サリエリでもいいからモォツァルトを見ていたかった。

 雨水とともに地面に叩きつけられたい。砕けて、飛散して、そうして跡形もなく流れていきたい。

 雨は好き、低気圧は嫌い、雨に濡れた草の匂いは好き、雨に濡れた混凝土の匂いも嫌いじゃない、引きこもるのは好き、でも家にいるのは嫌い、二人は好き、四人以上は嫌い、人と話すのは好き、でも人間は嫌い。

…いや、ちょっと好き。

嘘。窒息するほど愛おしい。

人間に傷ついて、人間に疲れて、死にたくなって、楽にな

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