あきら

あきらです。よろしくお願いします。たぶんあんまり投稿とかはしないと思われます。気まぐれ…

あきら

あきらです。よろしくお願いします。たぶんあんまり投稿とかはしないと思われます。気まぐれにつれづれに

記事一覧

ぎんのごみ

スプリングコートのポケットに、去年の忘れ物を見つけた。 取り出してすぐに捨てようとして、その手が止まる。ああそうか、これって、あの時の。 急に泣きたくなって、それ…

あきら
7年前
4

ねむるバス停

 バス停だ。  丸と四角。それを突き刺す棒。おでんのような形のそれは見慣れないものだった。バスはあまり利用しない。するときは長距離の移動ぐらいで、そういったバス…

あきら
7年前

サンザカ

数年前人様にお渡ししたものです。 _________________  サンザカという花がある。サザンカと似た名前だが種別はどうやら違うらしい。  サンザカとい…

あきら
7年前

雨が降るなら

数年前ツイッターで書いたものです。 ___________________  だって嘘つきなんだ。蹴り上げた体操着の入った袋が地面に擦れたのを見ながら小さく言っ…

あきら
7年前
1

数年前ツイッターで書いたものです。 _______________________ 「小さすぎる」  唸るような声に振り返る。水月が座り込みながら手を掲げていた…

あきら
7年前

会議中なのに、公園にでもいるみたいだった。彼のその不真面目な姿勢のわけは、深夜になってわかった。
「なにしてるんです?」
「蛍光灯、切れそうだったから」
彼は空想の雲を見ていたのではなかった。馬鹿真面目で、一心だっただけなのだ。
脚立の上の彼の笑顔をみて、あ、好きだな、と思った。

あきら
7年前
1

あきらさんは、「深夜の会議室」で登場人物が「見上げる」、「雲」という単語を使ったお話を考えて下さい。

https://shindanmaker.com/28927

あきら
7年前

とうとう

 忘れられない光がある。  工場は暗い。日が入ると紙が痛むのだという。  師匠も暗い。というより、無口だ。静かに竹を削り、紙を張り、筆を滑らせる。彫り物のように…

あきら
8年前
6

空を泳ぐ魚

「空を泳ぐ魚、見たよ」 「……え?」 「夕陽に染まる空を泳いでた。羽みたいに広がったひれがゆらゆら揺れてとても綺麗だった」  幼い私がそう言うと、母は一瞬眉を潜め…

あきら
8年前
6

歌詞をなぞって初めて、歌を聴いていたことに気付いた。はっとして見渡す。高いところから、鎮魂歌が聞こえる。誰に?周りには誰もいない。ここにいるのは、私だけだ。
すぐさま駆け出す。歌に寄せられる魂を引きずった。早く、外へ。
歌が止んだ。足が止まる。白が波打つ黒い翼が、私の目を覆った。

あきら
8年前
3

【あきら】
青く輝く瞳を持つ、ベニマシコの翼のトリビト。「誰かへの鎮魂の歌」を歌い、人を道に迷わせる。森から出ようとしている者のそばに寄ってくることがある。
https://shindanmaker.com/603912

あきら
8年前

図書の国

 月を引いてごらんなさい。針をかけて釣り上げる? いやいや違う。引くのは頁。辞書ですよ。  翡翠の瞳を歪ませて友が笑う。学生運動なんてやってる癖に、友はとことん…

あきら
8年前
6

翼をください

腕が徐々に翼へ変わってゆく病気です。進行すると幻覚が見え始めます。愛する者の皮膚が薬になります。 https://shindanmaker.com/339665 病室は207号室です。右目から…

あきら
8年前

 当たり前の話だが、小学校には同じ建物の中に、一年生と六年生がいる。六歳から十二歳。急速な成長を伴う期間を一つの建物で過ごすのだ。一年生と六年生の平均身長差はお…

あきら
8年前
5

プライド

 誇り高い、というととても立派な感じがするのに、プライドが高い、というと、扱いが面倒くさそうな印象がある。  プライドを言い換えるとなんだろう。自尊心? 自信?…

あきら
8年前
3

連続投稿したらタイムラインにお邪魔することになるんですね。申し訳ない。以後連投はないと思われます。たぶん。

あきら
8年前

ぎんのごみ

スプリングコートのポケットに、去年の忘れ物を見つけた。
取り出してすぐに捨てようとして、その手が止まる。ああそうか、これって、あの時の。
急に泣きたくなって、それを持つ手を、ギュッと握った。

一年前の、春。高校三年生に上がるその前に、私は転校することになっていた。
私はそれを、誰にも話さないままでいくことにした。嫌だったのだ。さよならなんて言うのも、言われるのも。泣きながら別れて忘れられるより、

もっとみる

ねむるバス停

 バス停だ。

 丸と四角。それを突き刺す棒。おでんのような形のそれは見慣れないものだった。バスはあまり利用しない。するときは長距離の移動ぐらいで、そういったバスは大きな駅のターミナルで乗り降りすることが多い。そこでも標識はあるが、形が違う。

 丸と四角の中には文字があるけれど、読む気にもならず眺めていた。いつ、バスが来るのだろう。

「あと、五分もしたら来るで」

 唐突な声に目を瞬く。「ごふ

もっとみる

サンザカ

数年前人様にお渡ししたものです。

_________________

 サンザカという花がある。サザンカと似た名前だが種別はどうやら違うらしい。

 サンザカという名前はその花の奇妙な性質から来るそうだ。サンザカはあるときの日の出とともに花を咲かせ、三十と三日の後、日の入りと共にその首を落とすという。

 私がその花を手に入れたのは、友人の形見分けとしてであった。

「それでそれはどんな花を咲

もっとみる

雨が降るなら

数年前ツイッターで書いたものです。

___________________

 だって嘘つきなんだ。蹴り上げた体操着の入った袋が地面に擦れたのを見ながら小さく言った。だから自分はちっとも悪くなんてないんだ。

 サッカーボールみたいに袋を蹴ることと、道の小石を蹴りながら運ぶのは帰り道の癖みたいなもので、友達と一緒の時は少し大きな石を奪い合いながら歩いたりする。点数つきのゲームとして遊んだりもする

もっとみる

数年前ツイッターで書いたものです。

_______________________

「小さすぎる」

 唸るような声に振り返る。水月が座り込みながら手を掲げていた。

「ちょっと、片づけさぼんないでよ」

 雪解けにつられるように、長く患っていた母が逝った。晩婚だった母はもう結構な年で、私たちが大人になるまでまっていたようだった。

「いやみてよ、これ」

「なにこれ? わっか?」

 水月が

もっとみる

会議中なのに、公園にでもいるみたいだった。彼のその不真面目な姿勢のわけは、深夜になってわかった。
「なにしてるんです?」
「蛍光灯、切れそうだったから」
彼は空想の雲を見ていたのではなかった。馬鹿真面目で、一心だっただけなのだ。
脚立の上の彼の笑顔をみて、あ、好きだな、と思った。

あきらさんは、「深夜の会議室」で登場人物が「見上げる」、「雲」という単語を使ったお話を考えて下さい。

https://shindanmaker.com/28927

とうとう

とうとう

 忘れられない光がある。

 工場は暗い。日が入ると紙が痛むのだという。
 師匠も暗い。というより、無口だ。静かに竹を削り、紙を張り、筆を滑らせる。彫り物のように皺の深い老人が、暗い部屋でそうしているのは不気味だった。
 火を灯さないんですか。何度か聞いた。幾度目かで忍び寄る影のような、低い声が答えた。「軽々しく言うんじゃねえ」
 思い出して、割竹を曲げていた手を止める。
 祭りの夜が近い。師匠の

もっとみる

空を泳ぐ魚

「空を泳ぐ魚、見たよ」
「……え?」
「夕陽に染まる空を泳いでた。羽みたいに広がったひれがゆらゆら揺れてとても綺麗だった」

 幼い私がそう言うと、母は一瞬眉を潜めてから苦笑して、そう、良かったわねと言った。
 たぶん、作り話だと思ったのだろう。変なことを言う子だと思って、けれど絵本かなにかの影響だろうと納得して、適当な返事をしたのだ。
 今も母は、私を少し変わった子だと評す。そうかもしれない。空

もっとみる

歌詞をなぞって初めて、歌を聴いていたことに気付いた。はっとして見渡す。高いところから、鎮魂歌が聞こえる。誰に?周りには誰もいない。ここにいるのは、私だけだ。
すぐさま駆け出す。歌に寄せられる魂を引きずった。早く、外へ。
歌が止んだ。足が止まる。白が波打つ黒い翼が、私の目を覆った。

【あきら】
青く輝く瞳を持つ、ベニマシコの翼のトリビト。「誰かへの鎮魂の歌」を歌い、人を道に迷わせる。森から出ようとしている者のそばに寄ってくることがある。
https://shindanmaker.com/603912

図書の国

 月を引いてごらんなさい。針をかけて釣り上げる? いやいや違う。引くのは頁。辞書ですよ。

 翡翠の瞳を歪ませて友が笑う。学生運動なんてやってる癖に、友はとことん現実主義だ。夢のある話はしてくれない。青年は肩をすくめて言われるがまま辞書を捲った。

「つ、き。地球の衛星。赤道半径は1738キロ、質量は」

「他だとどうです」

「他?」

 青年が問い返すと翡翠の友は隣の本を取り出す。これも辞書だ

もっとみる

翼をください

腕が徐々に翼へ変わってゆく病気です。進行すると幻覚が見え始めます。愛する者の皮膚が薬になります。

https://shindanmaker.com/339665

病室は207号室です。右目から真っ赤な花が咲くという病気にかかった患者と出会い仲良くなります。密かに外科医に恋をしています。

https://shindanmaker.com/357863

という診断結果を元にした創作です。

もっとみる

 当たり前の話だが、小学校には同じ建物の中に、一年生と六年生がいる。六歳から十二歳。急速な成長を伴う期間を一つの建物で過ごすのだ。一年生と六年生の平均身長差はおよそ30cmである。一年で5cm身長が伸びる、というのは改めて考えるとなかなか劇的だ。

 高学年になってから、戯れに、すでに下級生が下校した教室に入ってみたことがある。同じ建物で、同じ教室で、同じ机。けれど驚くほど低くて、足が窮屈だった。

もっとみる

プライド

 誇り高い、というととても立派な感じがするのに、プライドが高い、というと、扱いが面倒くさそうな印象がある。
 プライドを言い換えるとなんだろう。自尊心? 自信? 自負心? 自意識?
 プライドは「自分」を認めて、意識しなければ抱くことは出来ないものなのだろう。
 プライドは難しい。自身と向き合わなければ作れないが、自分を正確に測れるだけのモノサシが無ければ滑稽だ。
 けれどだからこそ、プライドを持

もっとみる

連続投稿したらタイムラインにお邪魔することになるんですね。申し訳ない。以後連投はないと思われます。たぶん。