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【詩】その蚊は臆病だった
その蚊は臆病だった
人肌になかなか近づけず
服の上に着地しても
ずっと血を吸えずにいた
人間は思った
この蚊に血を吸わせてやろうと
ズボンの裾をめくった
肌を見せてやった
蚊はそこに止まった
ゆっくりと血を吸い出す
のんびり 味わうように
蚊は血を吸い終わった
人間は痒くなった
これで今しばらく
生きてゆけるだろうと
蚊は少し安堵した
人間も少し安堵した
【詩】いつから夢を見始めたのだろう
心と体を犠牲にして
自堕落に過ごす時間が
急に愛おしくなる
自分を雑に扱って
泥沼に足を踏み入れて
もがき続けることが
安心をくれる時もある
人はいつから
夢を見始めたのだろう
僕はいつから
望みを持ったのだろう
全て捨ててしまえばいいと
本当は知っているのに
欲望に一直線に
心と体を犠牲にして
進めば良いのだと
本当は知っているのに
僕はいつから
夢を見始めたのだろう
【詩】陽の当らない場所には
ベンチの横のお花が
陽に当たって とても綺麗で
思わず写真を撮ったけど
ふと後ろを振り返ったら
陽の蔭った場所に
同じお花が沢山咲いていて
陽の当たらない場所には
見つけていない美しさが
たくさん咲いているんだなあと
改めて己のことを
反省したのであります