3匹目のだんなさま

アキバか歌舞伎町にいるギャルゲーオタク。仕事はIT業界でSaaSの商品企画とかマーケと…

3匹目のだんなさま

アキバか歌舞伎町にいるギャルゲーオタク。仕事はIT業界でSaaSの商品企画とかマーケとか事業企画とかをやってた。ギャルゲーとジャズギターとマイクロティーカッププードルと三国志覇道が好き。エロゲに生かされてる30代男性。 #君のぞ クラファン応援中

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  • 【小説】この恋の倍速再生を止めたい

    【小説】「この恋の倍速再生を止めたい」(このばい)のまとめです。

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第7話

 「砂丘、思ったより楽しかったな」  「うん、行って良かった。ショウくんへの愛も叫べたし。告白の映像、早ければ今日の夜に放送って言ってたよ」  鳥取砂丘を辞し、…

【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第6話

 そうして、アヤカとは晴れて恋人同士となった。といっても、劇的に何かが変わったわけではない。それまでと同じようにメッセージを送りあったり、たまに時間を見つけて…

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第4話

 『だんだんは、ありがとうって意味です』    『そうなんですね。方言ですか?』    『はい。島根弁?かな』    『アヤカさんって、島根出身なんですね』     『…

【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第3話

 家路へ向かう電車に揺られながら、ショウは今日の出来事について考えを巡らせていた。  あの後会社に戻ったが、仕事は手につかなかった。思い出すのは、病院で出会った…

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい(あらすじ)

 あらすじ  映画も音楽もアニメも、すべてを「倍速再生」で視聴する主人公・ショウ。彼の口癖は「それってタイパ悪くね?」。 新卒で就職したMR(医療情報担当者)の仕事…

人生というクソゲーの攻略本 0.まえがき ~人生というクソゲーを途中でやめようとしているキミへ~

 はじめまして。キミはいま、何歳だろうか?10代の学生かもしれないし、20代の社会人かもしれない。30代で少し疲れて、道に迷っている途中かもしれない。  キミはいつも…

「推し活」に大枚をはたく、令和の若者の「幸福論」

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エロゲ評「夏ノ終熄」2~飽食の時代における昆虫食への忌避~※ネタバレあり

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エロゲ評「夏ノ終熄」~アフターコロナにおける「堕落論」昆虫食に対する忌避を添えて~

エロゲ評「夏ノ終熄」~アフターコロナにおける「堕落論」昆虫食に対する忌避を添えて~

あらすじ(公式HPより引用)

総評
 本作の発売日は2022年8月26日。世界中で猛威を振るったCOVID-19が一定の落ち着きをみせ、日本でも「2回目のまん延防止等重点措置」が終了した数か月後だ。

 本作の重要な舞台設定として、「世界的な伝染病によって崩壊してしまった世界」が挙げられる。これ自体は古くから多くのフィクション作品で使い古されたモチーフであるが、現代に生きる多くの人にとって「単な

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第7話

【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第7話

 「砂丘、思ったより楽しかったな」
 「うん、行って良かった。ショウくんへの愛も叫べたし。告白の映像、早ければ今日の夜に放送って言ってたよ」

 鳥取砂丘を辞し、松江へ向かうレンタカーの車中。ショウはさきほどの出来事を反芻していた。正直言って、アヤカからの告白は驚いた。これまでの人生において、あれほど大声で人から自身の名前を呼ばれた記憶はない。ましてや愛の告白だ。『砂丘の中心で愛を叫ぶ』は、ショウ

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第6話

【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第6話

 そうして、アヤカとは晴れて恋人同士となった。といっても、劇的に何かが変わったわけではない。それまでと同じようにメッセージを送りあったり、たまに時間を見つけては都内のレストランで食事をしたり、カフェに行ったりして時間を過ごした。夜は遅くならないうちに、アヤカを家へ送り届けるのが通例だった。あの日から、何かが進展することもなく、そんな代り映えのしない日常が続いた、年末も差し迫ったある日――。

 

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第5話

【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第5話

 「『青の洞窟。渋谷駅のハチ公口を抜けた先、代々木公園通り沿いのけやき並木を77万球の電飾が青く照らすイルミネーションイベント。イタリア南部のカプリ島にある観光名所「青の洞窟」が名前の由来。初回の開催は2016年。』へえ……」

 ショウは、アパートの部屋でスマホを片手にネットで検索をしていた。いくつか季節のイベントを紹介するウェブサイトを読みながら、概要を掴もうとしていた。

 実のところ、ショ

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第4話

【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第4話

 『だんだんは、ありがとうって意味です』
 
 『そうなんですね。方言ですか?』
 
 『はい。島根弁?かな』
 
 『アヤカさんって、島根出身なんですね』
  
 『そうです。松江ってところ』
 『あと、ショウくん敬語じゃなくていいですよ』
 『たぶん、私より年上だし』

 『じゃあ、アヤカさんも敬語じゃなくていいよ』
 『俺は、東京出身。渋谷育ち』

 『都会っ子だ!』

 『まあ、学生の頃遊

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第3話

【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第3話

 家路へ向かう電車に揺られながら、ショウは今日の出来事について考えを巡らせていた。

 あの後会社に戻ったが、仕事は手につかなかった。思い出すのは、病院で出会った少女の顔。柔らかく微笑んだ彼女は、とても美しかった。これが一目惚れってやつなのか、自分はこんなに惚れっぽかったのか、と自嘲気味の笑いをこらえながらも、ショウは自らの胸の高鳴りを自覚せずにはいられなかった。

 もう一度会いたい。名前も知ら

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第2話

【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第2話

 目が覚めるとまず、電気ケトルに水を入れてスイッチを点ける。ドリップコーヒーを大きめのマグカップにセットしたあと、パーラメントに火をつける。常に回りっぱなしの換気扇の下で紫煙をくゆらせながら、お湯が沸くのを待つ。

 ショウは、自身が朝に弱いタイプの人間だと思っていた。起き抜けは頭がぼーっとしていて、あまりはっきりしない。低血圧なのかもしれないと思ったが、本当に低血圧の人はみな朝に弱いのだろうか?

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第1話

【小説】この恋の倍速再生を止めたい 第1話

 「ショウ、お前ってほんと「タイパ厨」だよな」

 新宿駅の雑踏の中で、二人の男性が会話している。「タイパ厨」と呼ばれた男性が、うんざりするような顔で答えた。

 「厨とか言うなよ。いまは普通だって」

 「いや、だって映画もアニメも倍速で見てるんだろ?俺はそれアカンと思うぜ。ああいうモンには「間」とか「余韻」とか「空気」みたいなものが設計されてるんだからさあ。そういう機微を読み取ってこそ、「芸術

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【小説】この恋の倍速再生を止めたい(あらすじ)

【小説】この恋の倍速再生を止めたい(あらすじ)

 あらすじ
 映画も音楽もアニメも、すべてを「倍速再生」で視聴する主人公・ショウ。彼の口癖は「それってタイパ悪くね?」。 新卒で就職したMR(医療情報担当者)の仕事にはようやく慣れ始めたものの、日々の暮らしに忙殺されていた。

 そんなある日の医局からの帰り道、ショウは難病終末期の少女「アヤカ」と出会う。彼女は「早老症(ウェルナー症候群)」という、「通常の人よりも異常に早く老化してしまう」という難

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人生というクソゲーの攻略本 0.まえがき ~人生というクソゲーを途中でやめようとしているキミへ~

人生というクソゲーの攻略本 0.まえがき ~人生というクソゲーを途中でやめようとしているキミへ~

 はじめまして。キミはいま、何歳だろうか?10代の学生かもしれないし、20代の社会人かもしれない。30代で少し疲れて、道に迷っている途中かもしれない。

 キミはいつも「人生はクソゲーだ」と言っていたけど、僕はちょうど今日このクソゲーを最後までやり終えたんだ。だから、「どんなフラグを立てれば楽しいイベントが発生するのか」や、「勝てないボスが出てきたときの攻略法」も知っている。最後に訪れるエンディン

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「推し活」に大枚をはたく、令和の若者の「幸福論」

「推し活」に大枚をはたく、令和の若者の「幸福論」

 「こういう時のためにお金を貯めてるんで、まったく惜しくはないです。むしろ大好きな作品がもう一度盛り上がって、自分がそれに参加できることがうれしい」(Aさん 34歳、男性・東京都)

 Aさんが購入したのは、クラウドファンディングで募集された「ゲームの劇中に登場する権利」。価格はなんと40万円だ。決して少なくない金額を払うのは一体どのような理由なのか。

 「「君が望む永遠」っていう作品は、アキバ

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エロゲ評「夏ノ終熄」2~飽食の時代における昆虫食への忌避~※ネタバレあり

エロゲ評「夏ノ終熄」2~飽食の時代における昆虫食への忌避~※ネタバレあり

※この記事は「2」です。「1」はこちらからどうぞ。

 先日、とある企業がSNSに投稿した内容が炎上していた。「コオロギのクッキー」の写真を投稿したアカウントに対して、「気持ちが悪い」「肉があるのに昆虫を食べる意味が分からない」などおおむね批判的な意見が集中したのである。

 そもそも、現代の先進国において昆虫を食べる必要があるのか。国際連合食糧農業機関(FAO)が2013年に発表した『食品及び飼

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