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わたしとわたしの思考のような異物。
異物でないものがあるのなら退屈な宇宙に浮かぶようなもので
途切れ途切れの声すらも愛おしいほどに僕らは異物で出来ている
ゆっくりと進む流れ星をひとつまみだけ口に投げ込んで味わう
蜂蜜みたいに甘いそれに記憶があるか問いただしてみると
猫のように転がりながら頬の内側を甘噛みされたりする
縞模様でできた街を見下ろしながらあみだくじみたいに世界は動く
蜂の群れが巣を離れたらわたし達はどうすれば良いのだろう
このままどうか、光にならずに
時として、灰色の空に身を任せる
よそ見をすれば飲まれてしまう暴力
平行が続くわたしの身体
このままどうか、光にならずに
動かぬ身体に縛りつけた疾しさに
嘘つきだけを見つける鏡
「知らないでしょう」と丁寧に撫で
わたしだけが知らない世界
辿々しい口もとだけが魅力的
力ずくで折り曲げた過去と
嘘をついた空に身を任せる
このままどうか、光にならずに
眺めの良い小さな部屋
細かな心を混ぜ合わせて
自らの口へ詰めたい
きつく結んだ靴紐を
解くことができないと泣いたから
ここは眺めの良い小さな部屋
消えてしまいそうな幻と
離すまいと泣くわたしは
微睡の中に柔らかな影を見つける
四つ角にある結び目だけを頼りに
曖昧で作られたその部屋が
力のないものだと思い知る
霞んでゆく視界が愛おしいのは
流れる景色をかき消すたびに
渇いた目元が激しく疼くから
どこか遠くで揺れる影が
世界にはわたしだけがすべて
「裸婦のような時間を掻い摘んだ生き方をしている」と聡明なふりをした
誰にも愛されない世界に嫌われた頭痛を誘発する光
異様な美しさを「女である」という言葉で片付けた野郎は
手の届くほどの高さから落ちた優しさで消えていった
漲るような揺蕩うようなしぶきを浴びるたびに泣いた
熱いとも冷たいとも言い切れないような外気に触れた時間
猫撫で声で呼んだ夜の群れに二股になった口づけ
並んでいる乳房に荒れた肌は負
道端で干からびた女の抜け殻
嘴でついばむ幸せが落ちているのは
汚らしい街の側溝
眺めの良さは誰も知らない
蝶番を壊すたびに飛び立つ
一筋走る線路を見下ろす
赤い駅舎の屋根の下には
みすぼらしい女がひとり
鼻をつく匂いに疎まれている
幸せを耳元に飾り付け
耳障りの良い夏の夕刻
道端で干からびた女の抜け殻を
幸せと見間違えて降り立つ
拭い損ねた眠気が内腿を伝う
鐘を鳴らすように身体が壊れていく
嘴でついばむ幸せが落ちている