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山田は私のことを好きにならない。これからもずっと。#8
今月も山田と会っていない。
「もうわたしとえっちするの飽きちゃった?」って聞いたら、「というより時間がない」って、返ってきた。山田も絶賛大鬱中なのかなあ。山田は嘘をつくタイプじゃないからーーというか恋人でもないたかがオナホールのわたしに嘘までついて、ごまかして話を逸らして遊び惚けるほど、わたしを人間扱いしていないと思うから、「時間がない」というのは、本当なんだろうと思う。山田は仕事ばかりして
山田は山田の場所で、古橋は古橋の場所で生きょ #7
読み終えて、感嘆してしまうたぐいの本がある。年を重ねるごとに、読み方や感じ方が変わってくるもの。夏目漱石の『こころ』も、そのうちの一つ。〈明治の精神〉と、西洋個人主義との間で揺れ動き、衰弱していった知識人の思い。拠り所がない新たな時代、人々が順応していったことで、ぽっかりと浮かばれてしまった知識人のやりきれなさ。あいまいで行き場のない、不安定な日本人の精神を、鋭い文章で描ききった作家が、夏目漱石
もっとみる山田、古橋ちゃんは先に行くよ。#5
長い時間、山田を待ったことがある。待たせたことも。いつだって山田は、どんなに遠いところにいても見つけてくれる。まっすぐ、迷いなく古橋に向かってきてくれる。改札の向こうから、コーヒーショップから、ドン・キホーテのアダルトブースの奥から(?)。それはもういろいろなところから。
最初のうちは気づくのが遅くて、驚かされることが多かった。でも途中からは、ちゃんと山田のことを探すようにした。怒ったような顔