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文藝(第60回文藝賞受賞作品掲載)、別冊文藝春秋などを読む

文藝(第60回文藝賞受賞作品掲載)、別冊文藝春秋などを読む

今年も昨年に引き続き、公募に挑戦!などという目標を掲げているわりには、今年に入ってからまっっったく筆が進みません。

たぶん、今までの私だったら底力を無理やりひねくりだして何かしら書くんでしょうけども、今年の目標は今までだったら選ばない選択肢をあえて選ぶことなので、アイディアが降りてくるまで何もしないようにしています。

その間、色んな小説に目を通してみようと思い、純文学の雑誌などを読んだりしまし

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読書感想 九段理江 東京都同情塔

読書感想 九段理江 東京都同情塔

九段理江さんの芥川賞受賞作品です。
全文掲載されている文藝春秋を立ち読みした際に、端正で読みやすい、流麗な文章を書く作家さんだなあ…凄いなあ…と思いました。

芥川賞選評や、ご本人のインタビュー記事も読みたかったので、結局購入してしまいました。

「AIが書いた小説」というフレーズが独り歩きしている印象ですが、実際には小説内に生成AIが出てくる場面にのみ、AIの文章が使われているに過ぎないんですよ

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宮沢賢治 春と修羅

宮沢賢治 春と修羅

40年ほど前に公開された、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のアニメ映画がありまして、その映画のエンドロールでは何故か「春と修羅」の序章の一節が朗読されているのです。
(ちなみにそのアニメは原作に非常に忠実で、独特の世界観がいい感じに再現されています)

「春と修羅」は宮沢賢治の詩集です。青空文庫で第三集まで全て読めます。私はこの詩集の、アニメで朗読されている「序」の部分がものすごく好きなのです。

以下

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読書感想 田辺聖子 ジョゼと虎と魚たち

読書感想 田辺聖子 ジョゼと虎と魚たち

Kindle Unlimitedで読み放題になっていたので昨晩読みました。ちなみに映画やアニメは見ていないです。映画も素敵みたいですね。(原作はかなり短いので、相当脚色が加えられているとは思いますが…)

この書籍は9つの恋愛短篇集です。やっぱり、表題作の「ジョゼと虎と魚たち」が一番良かったです。ガッツリ心を奪われました。

はじめて恋愛小説を読んで泣きました。(つっても私は恋愛小説はそんなに読ん

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読書感想 全部叶う「新しい私」の教科書 KIKO

読書感想 全部叶う「新しい私」の教科書 KIKO

現実主義スピリチュアルカウンセラーKIKOさんの三冊目の書籍です。

私はこの方のYouTubeをよく拝見します。守護霊の啓示を話されたり、とてもスピリチュアルな内容ではありますが、説明はとてもロジカルです。非常にわかりやすくて有益なチャンネルだと思います。

この書籍は、潜在意識の書き換えをテーマに、自身で作り上げた心のブロックを解き放つ方法と、願いを叶える方法を実例をあげながら解説しています。

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読書感想 横光利一  火

読書感想 横光利一  火

青空文庫でぼーっと読みました。多分5回目くらいの再読でしょうか。自分でも頭おかしいのではないかと思ってます…。

9歳になる男児、米の視点で物語が進行します。米の家は6年前に渡米した父親から病気という知らせが届いたきり、半年あまり送金がとだえているため、姉は看護師見習いとして家を出ています。まさかのときに役に立つからと刺繍を習い続ける母と二人で寂しく暮らしています。米は自分の家が非常に貧しくなった

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読書感想 夏目漱石 永日小品

読書感想 夏目漱石 永日小品

 芥川龍之介の随筆に、たびたび「小品」という言葉が出てきまして、私は小品とは掌編と随筆の中間のような、短い作品なのかなあとなんとなく思っていました。

そんな折、夏目漱石の新潮文庫「文鳥、夢十夜」を購入したところ、最後の解説に小品についての解説がありました。

なるほど。そうなんだ…と納得しました。

永日小品は、小品の部類に属する25の作品群です。
日常のなんでもない風景を切り抜いたものから、短

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読書感想 雨穴 変な家2、変な絵

読書感想 雨穴 変な家2、変な絵

雨穴さんのYouTubeにハマった娘が夫に買ってもらった書籍です。

雨穴さんの初書籍「変な家」の続編にあたります。

いや〜、とにもかくにも。私自身を含めた、日本全国謎解きミステリー大好きっ子の嗜好をよ〜く理解していらっしゃる。ツボを心得ているなあ…という印象です。エンタメに特化している作品です。

「変な家2」では、風変わりな家が11登場し、「変な絵」では不思議な「絵」が複数登場します。それら

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吉本ばなな 哀しい予感

吉本ばなな 哀しい予感

 数年ぶりに再読しました。一度読んでるはずなのに、結構きました。胸に響きます。なぜそんなに胸に響くかと申しますと、これは自分でもよくわからないのですが、おそらくはこの作品、というか吉本ばななさんの心理描写が奥深く繊細だからなのだろうなと思います。

 どうすることも出来ない孤独感や、それに付随する寂しさや虚しさなどを絶妙な加減で表現してくださいます。ほんとに絶妙なんですよねえ。

 最近気がついた

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読書感想 村上春樹 職業としての小説家

読書感想 村上春樹 職業としての小説家

 村上春樹さんのエッセイです。小説に対する彼の姿勢が惜しみなく語られています。
 まず私の率直な感想としては、ノーベル文学賞候補で世界中で本が売れまくってるのに、当人は俺様要素皆無、オラオラ気質ゼロなのだなあということです。それは彼の小説の文面からも伝わることですよね。

 そして常に客観的に物事を考える習性を身につけておられます。読書を通してあらゆる視点で物語を味わってきた経験からその習性は培わ

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変な家 雨穴

変な家 雨穴

 娘が学校の図書館から借りてきました。ホラー作家でありyoutuberでもある雨穴さんの書籍「変な家」です。
 雨穴さんのチャンネルは、彼女(彼かもしれないけど)がミステリー好きの謎の設計士「栗原さん」と電話で相談しながら謎を解決していくというドラマ仕立ての番組です。雨月さんは全身黒タイツをまとい、顔には奇妙な白い仮面を被っています。まあとんでもない格好をしております。さらに、動画の中では小道具と

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読書感想 遠藤周作 侍

読書感想 遠藤周作 侍

またしても遠藤周作です。心臓を射抜かれてしまいました。すんごいですねこの小説。

 実在した人物達をモデルとし、彼らが書き残した手紙などをもとに書いた作品のようなので、結構事実に忠実みたいですね。それにしたって、登場人物の内面描写が秀逸過ぎます。

 作物のあまり育たない痩せた土地の領主である「侍」が、ローマ法王へ親書を渡しにいくという「お役目」に抜擢されます。お役目さえ果たせば、もともと所有して

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読書感想 遠藤周作 沈黙

読書感想 遠藤周作 沈黙

今さら遠藤周作にはまってしまい、図書館で借りて色々読んでいます。

 島原の乱が収束したあとの日本に訪れたポルトガル人司祭の苦悩を描いたものです。作中容赦ないキリシタン弾圧がなされています。
 過酷な労働に耐えながら年貢を納め、忍耐に慣れ切ってもう涙すら流さなくなった農民達が、切支丹であるがゆえに過酷な拷問を加えられ、命を落としていきます。司祭は何度も何度も何度も神に祈りますが、神は沈黙を守ったま

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読書感想 横光利一 機械

読書感想 横光利一 機械

 引き続き横光利一特集です。笑

 横光利一の代表作です。これまたすごい作品だと思いました。

 まず文体が独特です。段落や句読点が極端に少なく、人によってはかなり読みづらいと感じる文章だと思います。

 あらすじとしては、ネームプレート製作所で働く「私」が、一緒に働く同僚の職人からスパイだと疑われたり、また疑ったりして、互いに疑心暗鬼になりながらついには殴り合いに発展し…、みたいな物語です。語り

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