深月流架

50代のサラリーマンです。自作の小説中心にアップしております。よろしくお願いします。

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「自己紹介」

50代のサラリーマンです。自作の小説、書評、エッセイなどを投稿しています。好きな作家は、フランツ・カフカ、トルストイ、カミュ、村上春樹、辻邦生、安部公房、田中芳樹…

深月流架
1年前
99

「迷宮❷」

『迷宮②〜傷の共有』 僕は今日も彼女の心の迷宮にいた。 もう、いくつ、入口を見つけたのだろう。 入り組んだ迷路は、時折僕の方向感覚を見失わせる。 松明が時には明…

深月流架
12日前
2

「迷宮」

『迷宮〜愛する人と過去を共有することについての思考』 いよいよだ。 僕は彼女の心の迷宮に足を踏み入れた。 全てを受け入れようと決めたからだ。 その迷路の出口は一…

深月流架
12日前
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「トナカイの悩み」

 街はずれの書店でさがしていた短編集をやっと見つけ、お会計をしようとレジに向かうと、トナカイが包装の練習をしていた。二本足で器用に立っているトナカイのツノにはサ…

深月流架
12日前
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「November Rain」【前編】

【1991年11月】  「ちょっと、校長!あいつらの要求を呑んだって、本当ですか?」  教頭の猿田は、酒の飲み過ぎで赤くなった頬をさらに紅潮させて、校長の白木に詰め寄…

深月流架
2週間前
4

📕宮本輝「月光の東」を書き手として読んでみた時

🥀宮本輝「月光の東」  「十三歳のときの私の恋は、いまもまだつづいていると思うのも本心ですし、加古慎二郎への嫉妬も本心ですし、よねかを癒せる男になりたいのも本心…

深月流架
3週間前
4

「近況」

📕「結果ではなく過程を大切にしないと充実感は得られないということ」 ❶「私が店長になった理由」76枚 ❷「社長が店にやってくる」109枚 ❸「エスパー雀士ミハルの憂鬱…

深月流架
3週間前
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少年の頃の思い出❷〜「ゼビウス」

🌹「ゼビウス」  小学生の頃、駄菓子屋というところは実に怖い場所であった。なぜなら、駄菓子屋の中にゲーム筐体がひとつふたつ設置されていて、そこがいわゆる不良たち…

深月流架
3週間前
6

「俺が初めて小説を書いた時の話」〜スティクス「Mr.ロボット」

🌹「俺が初めて小説を書いた話」〜スティクス「Mr.ロボット」  中学校の国語の授業で、お話を作って書こうというものがあった。当時、俺は作文だとかが大の苦手で、読書…

深月流架
3週間前
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🎵ポリス「見つめていたい」

🎼「初恋」  卒業式が終わったあと、僕は校門の前で、彼女と写真を撮った。風が強い日だった。卒業証書の入った黒い筒を抱きしめた彼女の髪が風に靡いている。僕はその隣…

深月流架
4週間前
2

🎵ソフィア「街」

🎵ソフィア「街」〜見えないものに向かう時、人は誰も孤独  名曲ひしめく90年代J POPシーンにおいて、最高の一曲は?と聞かれたら俺はこの曲を選ぶ。  何回繰り返して…

深月流架
4週間前
3

🎵すかんち「恋のマジックポーション」

「ロックにおいて、ベース音をディストーションで歪ませることの是非」  メロディラインはギタリストに任せておけばいいのに、と、ビリーシーンのベースプレイを見てなん…

深月流架
4週間前
4

💐「小説において風景描写は必要なのか?」❻〜木を見て森を作る描写【エキストラを描写する】

   「翌朝、ぼくはコーヒーとブリオッシュの朝食をとりに、サン・ミシェル大通りをスフロ通りまで歩いていった。気持ちのいい朝だった。リュクサンブール公園では、マロ…

深月流架
1か月前
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📕衝撃の作品「部屋」エマ・ドナヒュー

『「子どもだけじゃないです」ママが言う。「いろんな人たちがいろんな形で閉じこめられているのです」』 〜エマ・ドナヒュー「部屋」より 村田沙耶香さ…

深月流架
1か月前
4

📕「小説において風景描写は必要なのか」❺〜日本はまもなく四季ではなく二季になる?

 風景描写と言われてまずピンと来るのが、季節を感じさせる描写。もっと言えば、去りゆく季節、新しくやってくる季節を捉えることで、登場人物の心情をより生き生きと描く…

深月流架
1か月前
2

📕「小説はストーリーを進めようと思って書いてはならない」

 俺がしつこいくらいに言っている、このタイトルの意味をもう一度、咀嚼して解説してみようと思う。  さて、かの心理学者アドラーは、「人生は線ではなく、点の連続であ…

深月流架
1か月前
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「自己紹介」

「自己紹介」

50代のサラリーマンです。自作の小説、書評、エッセイなどを投稿しています。好きな作家は、フランツ・カフカ、トルストイ、カミュ、村上春樹、辻邦生、安部公房、田中芳樹などなど。小説は幅広いジャンルで読んでいます。仕事をしながら創作活動をするのはなかなか骨が折れる作業ですが、夢に向かって頑張っております。よろしくお願いします。

⭐️自作小説はこちら⭐️

「迷宮❷」

「迷宮❷」

『迷宮②〜傷の共有』

僕は今日も彼女の心の迷宮にいた。

もう、いくつ、入口を見つけたのだろう。
入り組んだ迷路は、時折僕の方向感覚を見失わせる。

松明が時には明るく輝き、時には消えそうなくらい暗くなる。

迷路の中に落ちている様々な記憶の断片。

一つ一つの断片を丁寧に拾い、僕の記憶にしまっていく。

一つ一つの断片が一つ一つの傷になって、彼女を苦しめている。
入り組んだ迷路に無数に存在する

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「迷宮」

「迷宮」

『迷宮〜愛する人と過去を共有することについての思考』

いよいよだ。

僕は彼女の心の迷宮に足を踏み入れた。

全てを受け入れようと決めたからだ。

その迷路の出口は一つしかない、おそらく。

【しかし、入口はいくつも存在する】

一つの入口からは、他の入口は見えない。

入口から入った僕は、未来への希望の光を松明にしながら、一歩一歩前に進んでいく。

いくつもの曲がり角があり、いくつもの十字路が

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「トナカイの悩み」

「トナカイの悩み」

 街はずれの書店でさがしていた短編集をやっと見つけ、お会計をしようとレジに向かうと、トナカイが包装の練習をしていた。二本足で器用に立っているトナカイのツノにはサンタクロースがかぶる白のぼんぼんがついた赤い毛糸の帽子がちょこんとひっかけられている。帽子の真ん中くらいの位置には、merryXmas!、という文字の金色の刺繍がされていた。

 クリスマス用の袋に本を入れ、口を閉じ、後ろ側をクリスマスシー

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「November Rain」【前編】

「November Rain」【前編】

【1991年11月】

 「ちょっと、校長!あいつらの要求を呑んだって、本当ですか?」

 教頭の猿田は、酒の飲み過ぎで赤くなった頬をさらに紅潮させて、校長の白木に詰め寄った。ワックスでガチガチに固められたバーコード頭が、蛍光灯に照らされて醜く光っている。

 「要求を呑んだって、教頭も大袈裟だわね。たかだか合唱大会の合間に、バンド演奏をさせて欲しいって頼まれただけじゃない。しかもたった一曲。七分

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📕宮本輝「月光の東」を書き手として読んでみた時

📕宮本輝「月光の東」を書き手として読んでみた時

🥀宮本輝「月光の東」

 「十三歳のときの私の恋は、いまもまだつづいていると思うのも本心ですし、加古慎二郎への嫉妬も本心ですし、よねかを癒せる男になりたいのも本心なんです。
 誰もが、みなそうであるにちがいありません。人は誰もが無数の本心を持っている」  

    〜宮本輝「月光の東」より

 パキスタンのカラチで首を吊って自殺をしてしまった友人の影には「よねか」という幼馴染の女性の影がちらつ

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「近況」

「近況」

📕「結果ではなく過程を大切にしないと充実感は得られないということ」

❶「私が店長になった理由」76枚
❷「社長が店にやってくる」109枚
❸「エスパー雀士ミハルの憂鬱」194枚
❹「十字架の雫」143枚
   〜枚数は原稿用紙換算

 これが過去約三年の間に書いた小説の全てになる。これ以外に短いやつもいくつかあるし、途中まで書いたけれど行き詰まって放置している作品もある。

 サラリーマンをし

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少年の頃の思い出❷〜「ゼビウス」

少年の頃の思い出❷〜「ゼビウス」

🌹「ゼビウス」

 小学生の頃、駄菓子屋というところは実に怖い場所であった。なぜなら、駄菓子屋の中にゲーム筐体がひとつふたつ設置されていて、そこがいわゆる不良たちの溜まり場になっていたからである。

 僕がその溜まり場で初めてゲーム筐体に触れたのは「ブロック崩し」だった。上級生に連れて行かれていやいや行ってみたのだが、それが逆にテレビゲームにハマり込むきっかけになってしまった。

 当時は家庭用

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「俺が初めて小説を書いた時の話」〜スティクス「Mr.ロボット」

「俺が初めて小説を書いた時の話」〜スティクス「Mr.ロボット」

🌹「俺が初めて小説を書いた話」〜スティクス「Mr.ロボット」

 中学校の国語の授業で、お話を作って書こうというものがあった。当時、俺は作文だとかが大の苦手で、読書自体も嫌いだった。でも、架空の物語となると話が違ったらしく、原稿用紙十枚くらいの物語を書いた記憶がある。

 当時、洋楽を聴き始めたばかりで、家に帰れば洋楽鑑賞三昧だった俺は、スティクスの「Mr.ロボット」という曲が大好きだった。その

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🎵ポリス「見つめていたい」

🎵ポリス「見つめていたい」

🎼「初恋」

 卒業式が終わったあと、僕は校門の前で、彼女と写真を撮った。風が強い日だった。卒業証書の入った黒い筒を抱きしめた彼女の髪が風に靡いている。僕はその隣で左手に黒い筒を無造作に握り、右手でピースサインをしていた。

 進むべき道は決まっていて、迷いという感情とは無縁だった。敷かれたレールの上をただ真っ直ぐ進んで行けばよかった。自由を犠牲にして安心を手に入れていた。大人になるということが

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🎵ソフィア「街」

🎵ソフィア「街」

🎵ソフィア「街」〜見えないものに向かう時、人は誰も孤独

 名曲ひしめく90年代J POPシーンにおいて、最高の一曲は?と聞かれたら俺はこの曲を選ぶ。

 何回繰り返して聴いても飽きない美しいメロディライン、文学的な歌詞は言うに及ばず、間奏のギターは良い音出してるし、その後転調して再びサビに向かうところのベースラインは印象的だし、とにかくこの曲は完璧なのである。

 この曲を作ったというだけで、

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🎵すかんち「恋のマジックポーション」

🎵すかんち「恋のマジックポーション」

「ロックにおいて、ベース音をディストーションで歪ませることの是非」

 メロディラインはギタリストに任せておけばいいのに、と、ビリーシーンのベースプレイを見てなんだか茶番じゃねえか、と思ったその昔。

 ベーシストにおいて最も大切な役割は、ドラマーと一心同体になって正確なリズムを刻むこと。そう信じて疑わなかったが、それだけではやはりつまらない。

 でも、ベースをピックを使って弾くとか、ギター以上

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💐「小説において風景描写は必要なのか?」❻〜木を見て森を作る描写【エキストラを描写する】

💐「小説において風景描写は必要なのか?」❻〜木を見て森を作る描写【エキストラを描写する】

 

 「翌朝、ぼくはコーヒーとブリオッシュの朝食をとりに、サン・ミシェル大通りをスフロ通りまで歩いていった。気持ちのいい朝だった。リュクサンブール公園では、マロニエの花が真っ盛りだった。暑い日を予感させるような、早朝の爽やかさが漂っていた。コーヒーを飲みつつ新聞を読んでから、タバコをふかした。花売りの女たちが市場のほうからやってきて、一日分の花を並べにかかる。法律学校に向かう学生たちや、ソルボン

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📕衝撃の作品「部屋」エマ・ドナヒュー

📕衝撃の作品「部屋」エマ・ドナヒュー

『「子どもだけじゃないです」ママが言う。「いろんな人たちがいろんな形で閉じこめられているのです」』

〜エマ・ドナヒュー「部屋」より

村田沙耶香さんの書評集で紹介されていたエマ・ドナヒューの「部屋」。感動必至の長編に仕上がっています。

凶悪犯に誘拐され何年もの間、一つの部屋に監禁されていたジャックとママ。産まれた時から監禁部屋で生活することを余儀されたジャ

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📕「小説において風景描写は必要なのか」❺〜日本はまもなく四季ではなく二季になる?

📕「小説において風景描写は必要なのか」❺〜日本はまもなく四季ではなく二季になる?

 風景描写と言われてまずピンと来るのが、季節を感じさせる描写。もっと言えば、去りゆく季節、新しくやってくる季節を捉えることで、登場人物の心情をより生き生きと描く。これが風景描写のひとつのあり方だと思う。

 ところが、昨今の異常気象により、春と秋が年々、短くなっている。「日本はそのうち二季になります」と言っている専門家すらいる。いつまでも暑く、いつまでも寒い。ついこの前まで部屋で暖房をかけていたの

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📕「小説はストーリーを進めようと思って書いてはならない」

📕「小説はストーリーを進めようと思って書いてはならない」

 俺がしつこいくらいに言っている、このタイトルの意味をもう一度、咀嚼して解説してみようと思う。

 さて、かの心理学者アドラーは、「人生は線ではなく、点の連続である」と説いた。「過去と現在に因果関係はない」と主張した上で、過去に囚われることなく、また、未来を恐れることなく、現在を懸命に生きろ、という意味が含まれている。

 さて、このアドラーの考え方がそのまま、「小説はストーリーを進めようと思って

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