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    2019.8.26 ミスID2020セミファイナリストの部屋出演記念配布 「あの夏」というキーワードから紡いだ短編小説

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体当たり人生マニュアル

世の中には知らない事がたくさんある。 知らなくていい事もあるし、知りたくない事もあるし、経験でしか知れない事もある。 しかし、生活する上で知っといた方が良い事が山ほどあるのに必要な事を教えてもらえない、あるいは知ろうせずに大人になる場合も多い。 自ら疑問を持ち知らない事に気づける人ならさほど問題ないが、ボヤボヤ生きてる人間にはそもそも疑問を持つ概念がない。 つまり、問題にぶち当たるまで気付かない。 例えば、排水溝の構造、洗濯槽や排水ホースの外し方、浴槽にはエプロンが

    • 綺麗好きで有名なので

      「俺、本気で人を好きになった事ないんだよね」 真っ白な泡いっぱいの真新しいバスタブで後ろから抱きしめられ、初めて愛を交わした直後だった。 真っ赤に染まった古びたバスタブの淵をバスタオルでなぞりながら、それらの出来事が全て夢だったような気がした。 たぶん、全部きれいにしたかったのかもしれません。 はい、そうですね、食べたかもしれません。 ぜんぶ綺麗にしてあげました。 あの時ビラを落とさなければ、彼が私の髪を綺麗だと褒めなかったら... 透けそうな白肌に薄化粧、華奢な

      • ふたりだけの世界Ⅱ

        その日は彼の給料日だった 焼肉デートをする事になり駐車場に着いて彼がとった行動で初めて事の重大さに気づいた トン、トン、トン 彼は人差し指でハンドルを三回叩いた 「え?何してんの」 笑いながら話かけると、彼はビクッとして 「しっ!!あぁダメだ......」 そう言って真剣な顔でハンドルを見つめてまたトントンし始めた 「ちょっと!冗談やめてよー!」 またら笑いながら、今度は彼の手を止めると 「ダメなんだよ、数字が揃ってる時に車が通った時に三回やらないと○○が

        • ふたりだけの世界

          初めてちゃんと付き合った、五年続いた元彼は 働かないニートで生粋のダメ男だった それと同時に男をとことんダメにするクズ女の話し。 派手髪を後ろでしばったTheチャンプロードみたいな男だ、初めはこんなに続くなんて思ってなかった 付き合った時、実は他に女がいる事を隠されていて 知らずに交際が始まった 半年経つまでその事実は知らなかった 何故か彼の家に上げてもらえず仕方なくごみ溜めみたいな私の家に入り浸り、半同棲の様な生活をしていた ちなみに、家にあげたのは彼が最初で最

        体当たり人生マニュアル

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          可もなく不可もなく

          ピッタリのキャッチコピーだと自負している。 「普通」に憧れて生きてきただけあって、この言葉は最上級の褒め言葉のように思えた 不可じゃないんだラッキー、的な。 前回「出来ることなら優劣のつく場所は避けたい」と書いたが、やむを得ない理由で私はそんな場所で細く長く......10年くらい過ごした 究極の優劣の世界、キャバクラ 今こんなナリで言うのも気恥しいが、その場所にいれば人間すぐに適応するもんで見た目なんかすぐに馴染み誰がどう見てもキャバ嬢でした。 まぁ、良くも悪くも

          可もなく不可もなく

          防衛の絆創膏

          なんだろう、すごく胸がザワついてる。 ザラザラ口の中が苦くて平常心を保ってニッコリ笑って唾を飲み込むのがやっと セミファイナルも終わりに近づいてきたので、そろそろ本音を漏らします。 少々暑苦しい自分語りになりますが、感情が揺さぶられる事が滅多にないので素直になれるチャンスは今しかないなと記録的なあれです あいすくりーむとじょし、選ばれたかった気持ちと選ばれたかった悔しさで小林さんの選評を読みました 選ばれたかった気持ちは分かる。 何かにチャレンジしたら、そりゃ誰だって

          防衛の絆創膏

          片目のドロシー

          とてもよく晴れた、思春期みたいな朝だった。 長い三つ編みと水色のワンピースがふわりと舞うと、彼女は一瞬でこの世界から姿を消した―― 気の狂ったうだる様な暑さの中、私はいつものように駅のホームの黄色い線の前に立っていた。 灰色のコンクリートみたいな大軍を押し込んでまで乗る勇気がない私は、最前列でないと気が済まない 向かいのホームに水色のワンピースを着た女がフラフラと楽しげに何か呟いてる様子でこっちを見ている。 朝から少し奇妙な光景ではあったが、私はさっと目を逸

          片目のドロシー

          煙草と羽衣

          永遠に続く悪夢などない 声を失くし、一日が一年の様に長く感じた日々にも 終わりがきた 学年が一つ上がり、クラス替えにより運良くカナコと別のクラスになった。 だからと言って、また誰かを信用する気も取り繕って仲良くする気も起きず相変わらず下を向いたまま 静かに新学期を迎えた デブ、ブタ、と罵られるだけあり145センチで63キロあった体重も、ご飯の味を失ってから50キロまで落ちていた 軽くなった身体と気持ちで少しだけ表情が和らいだのか、下を向いていてもクラスメイトから話か

          煙草と羽衣

          メリバの醜い人魚姫II

          あの日から、世界が真っ暗になった 通い慣れた通学路は果てしなく長く感じ、歩いている感覚すら分からない どこを歩く時も背中を丸め下を向き、なるべく端っこを歩いた。 「全員無視ね!」 女王様の命令通り、私は誰からも話しかけられず 空気の様にただ席に座っていた。 ノートの端を破きぐしゃぐしゃに丸めた紙がいくつも机に置かれ 【死ぬ、デブ、ブス、出っ歯、菌、居るだけで気持ち悪い】色んな言葉が、黒いマジックで大きく書かれていた 指をさされ、大きく笑われ 背中を向けられ、ヒソ

          メリバの醜い人魚姫II

          メリバの醜い人魚姫Ⅰ

          悪夢の始まりは、突然やってきた―― 中学に上がっても相変わらず私の隣にはカナコがいた 入学式を終え同じクラスになり、私達は両手を繋ぎ上下に何度も揺らして喜んだ カナコがいる これからの学校生活を思い浮かべ、満面の笑みで片手を大きく上げ二人で寄り添って写真を撮った 中学校は隣の地区の小学校と合同となり、転校前に仲良かったクラスメイトとも同じクラスになった。 前の小学校では分け隔てなく仲良くしていたので 私を見つけると、直ぐに声をかけられた お調子者でムードメーカー

          メリバの醜い人魚姫Ⅰ

          人の人生を笑うな

          私は、自分を棚に上げ人を見下して嘲笑う人間が 心底嫌いである。 何様なんだろう、どうしてこの人は自信たっぷりに 人を蔑むのだろう、見下せる程のどんな素晴らしい 人間なんだろう 彼等の顔をじっと覗き込む。 私の地蔵の様な目線に耐えかねるのか、大抵は気味悪がって目を逸らす その度に研究の機会を逃し、謎は解明されぬままだ。 それすら個であり、彼等には人を嘲笑う権利があるのだろうか...... そんな事考えて眉をひそめてたら可愛くないので とりあえず眉間をゴシゴシして、に

          人の人生を笑うな

          灰色ジゼル II

          母の質問から半年後、家の取り壊しが決まった。 この頃、完全に心を閉ざした私は特に深い意味を考える事もなく 「そっか」 どこか上の空で 他人事の様に事の成り行きを見守った。 11年過ごしたお城には何一つ愛着もなく 離れるのが寂しいほど心を許した友達もいない 涙ひとつ出なかった どうしてこうなったのか詳しくは知らないが金銭的な問題である事は明らかだった 取り壊しの前に、灰色のコンクリートが並ぶ団地に 引っ越したからだ。 大きなお城の大量の荷物が入りきるはずも無く

          灰色ジゼル II

          灰色ジゼル I

          「パパとママどっちと暮らしたい?」 夕方、お菓子を食べながら賑やかな笑い声のするテレビを観ていた私は母の唐突な質問に困惑した。 「ママ」 考える余地もなくそう答えると母は、困った様な顔で 力無く微笑んだ 以前は体裁を気にしてか毎週末は家族で連れ立っていたが、ここ最近では父は朝から出掛けていて ろくに口もきいていなかったのだから、当然だ。 父は、どのレジャー施設へ行っても癇癪をおこした 理由は些細な事である。 母の支度が遅い、弟が泣いた、挙句の果てには 私が気を遣

          灰色ジゼル I

          手かざしの先にあるもの

          毎週土曜日、道場と呼ばれる場所に父を除いた家族で通うのが日課になった。 これがいわゆる宗教である事に気が付いたのは随分先の話である 3日間の魂の洗礼とよばれる研修に参加しはれて私は、信者になった 周りを見渡すと、そこには張り付いお手本の様な笑顔の大人がたくさんいて居心地の悪さを感じた エントランスで靴を揃えていると目の前にパンが二つ並んでいた 【手かざしをしたパンは腐らない】 そこには、カビの生えたパンと普通のパンが置かれていた どうやら手かざしをしたパンは何ら

          手かざしの先にあるもの

          カメラ恐怖症

          表に出ようと自ら手を挙げたのに、カメラが怖い。 中学時代、写真に写った笑顔がトラウマ級のブスで 以来写真で一切笑えなくなった、いかるきです。 学生でもなけりゃ普通に過ごしてたら自然体で写真に写る機会も特に無いので、安心して生きてきたわけです。 彼氏や友達と撮る時は、大体同じキメ顔。 「弾ける様な無邪気な自然体な笑顔」 で撮った写真がリアルに1枚もない、最強の笑顔 コンプレックスです。 まぁ問題は笑顔だけじゃないんですけど...... そこは、悲しいので省略します。

          カメラ恐怖症

          ミスID2020 カメラテスト

          とてつもなく長い、ひとりごとです。準備する時間なんていくらでもあったのに。 大切な事を何でも後回しにしてしまう私は準備不足により何一つやりきった感を持てず不完全燃焼に終わりました。 気づいてしまいました...... カメラの前では心まで全部映ってしまう事に!!! 改めて、表現者全ての人に尊敬の念でいっぱいです。 武器も持たず戦場に立った私は、素晴らしい人々に 見守られながら自害しに行った様なもんでした。 しかも一番カッコ悪い死に方で... どうせ死ぬならせめて、綺

          ミスID2020 カメラテスト