鈴木ダイスケ

音楽、漫画を中心としたポップカルチャー畑のライターです。

鈴木ダイスケ

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マガジン

  • 考察/村生ミオ

    村生ミオ作品について書いたテキストをまとめてみました。

  • 裕木奈江最強伝説

    1990年代初頭の裕木奈江についての考察。

  • 原秀則〜永遠の優柔不断キャラたちへ。

    原秀則作品の考察をまとめてます。

  • クッキングパパについての考察

  • 柳沢きみおのブルース

記事一覧

私的KAN論(仮)第7章 ディーヴァ戦国時代。そして弾き語りばったりへ。

90年代も半ばを過ぎるとミュージック・シーンにおいて「ディーヴァ」なる呼称が多く見受けられるようになりました。もともとはオペラ歌手界で使用されていた言葉ですがいわ…

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私的KAN論(仮)第6章 小田和正という巨人〜Still Crazy After All These Years

僕は80〜90年代初頭はのちに「J-POP」と呼ばれる音楽の黎明期だと捉えてます。シティ・ミュージック(ポップ)、フォーク、歌謡曲、そしてライブハウスシーンで蠢く無数の…

鈴木ダイスケ
2週間前
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私的KAN論(仮)第5章    I`m songwriter welcome you to my song 〜変化するJ-POP黄金時代

1990年代も半ばを過ぎるとジャパニーズ・ポップシーンにも変化が訪れます。ミスチルは変わらず王座に君臨していますが、国民的バンド的立ち位置へ急激にシフトしていくこと…

鈴木ダイスケ
1か月前
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私的KAN論(仮) 第4章 ミスチル王朝の治世と「まゆみ」の影

たまたま先日のことです。この3月までTBSでオンエアされていたドラマ「さよならマエストロ」を見てました。西島秀俊と芦田愛菜による人生再生のお話なんですけどめちゃく…

鈴木ダイスケ
1か月前
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拙著「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」について

拙著「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」が発売されて4か月が経過しました。 その間、プロモーション稼働でいくつかラジオ番組に出演したりトークライブイベントやらせて…

鈴木ダイスケ
1か月前
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私的KAN論(仮) 第3章 モラトリアムの果てに〜「愛は勝つ」の時代背景

「愛は勝つ」のメガヒットは当時の邦楽ポップシーンの中で、明らかに大きな影響があったと思います。まだバンドブームが続く中、いわゆる邦楽ロックとは違う角度のソロ男性…

鈴木ダイスケ
1か月前
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私的KAN論(仮) 第2章 応援ソングの向こう側

街を歩いていて、あまりに当たり前の光景過ぎて何にも思わなかったことに驚くことってありませんか。たとえば昔に比べて「整体」やマッサージを売りにしたお店が増えたこと…

鈴木ダイスケ
2か月前
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私的KAN論(仮) 第1章「愛は勝つ」を聴く前に知りたい二、三の事柄。

KANはJ-POP史上最も注目されるべき偉大なソングライターです。僕は彼の楽曲が大好きでした。理由は簡単です。めちゃくちゃいい曲が多いから。大江千里も槇原敬之もいい曲多…

鈴木ダイスケ
2か月前
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大阪バックサイドブルースpart2

ひさびさの大阪はたのしかった。 学生時代から社会人としてまる3年、モラトリアム時期入れると約10年を過ごしたエリアだからだけってことではないんだなーと今回あらため…

鈴木ダイスケ
3か月前
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大阪バックサイド・ブルース

いま、大阪へ向かってます。 実にひさびさの関西。振り返ると約10年ぶりなんですよね。拙著「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」プロモーションでラジオ出演のための大阪…

鈴木ダイスケ
3か月前
11

私的KAN論(仮) はじめに。

 先日クローゼットを整理していたらブルックスブラザーズの紺ブレが出てきた。1968~75年生まれの方々ならすぐにピンとくるだろう。そう、渋カジ全盛期の象徴的アイテムだ…

鈴木ダイスケ
4か月前
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「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」刊行〜「ドカベン」31巻に思いを馳せながら

正論と暴論の狭間で思い悩むことがあるのは結局“行間”をありかなしかの話と通じる気がする。いわゆる行間マジック。何事も間は大事ですよね。 そんなわけでnoteの更新を…

鈴木ダイスケ
5か月前
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ぼくたちの好きな小林信彦。

初めて小林信彦を読んだのは大学生になってからだった。 名前は知っていたんですよ。薬師丸ひろ子が主演した「紳士同盟」の原作者で、とか。あとは本屋に行くと吉田秋生の…

鈴木ダイスケ
6か月前
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読まずにはいられない〜「Dear Mom, Fuck You 無法の世界」に寄せて。

実は小説を読むことがめっきり減ってしまった。 そもそもボクは「脾臓」を食べたいとも思わないし、 「大人になれなかった」とグズグズ日々悔やんでばかりもいられない。…

鈴木ダイスケ
6か月前
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シティ感覚で天下一品を食べることこそアーバンなライフスタイル。

ヤンク・ロックとシティ・ポップは表裏一体。遠いようで近い。アーバン・メロウな夜景の先に見えるのは地方都市のローカル・ルールに縛られた身動きできない停滞した空気感…

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シティ感覚で考える「まんが道」そして1997年のラブジェネレーション。

新装版「まんが道」を読む。 まだ4巻までしか出ていないし全10巻ってことを思うと先は長いが激河大介(おそらくモデルはさいとうたかおなど劇画工房面々)とか忘れかけて…

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私的KAN論(仮)第7章 ディーヴァ戦国時代。そして弾き語りばったりへ。

私的KAN論(仮)第7章 ディーヴァ戦国時代。そして弾き語りばったりへ。

90年代も半ばを過ぎるとミュージック・シーンにおいて「ディーヴァ」なる呼称が多く見受けられるようになりました。もともとはオペラ歌手界で使用されていた言葉ですがいわゆる女性シンガーを指す言葉でよく見受けられるようになったのはR &Bをベースとしたクラブ系女性シンガーが注目を集めるようになってからだったと思います。その流れで出てきたUAやwyolika、birdといったこれまでにはなかったアーティスト

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私的KAN論(仮)第6章 小田和正という巨人〜Still Crazy After All These Years

私的KAN論(仮)第6章 小田和正という巨人〜Still Crazy After All These Years

僕は80〜90年代初頭はのちに「J-POP」と呼ばれる音楽の黎明期だと捉えてます。シティ・ミュージック(ポップ)、フォーク、歌謡曲、そしてライブハウスシーンで蠢く無数のバンドたち。それらが奏でる音楽が紆余曲折を経て、大きなうねりとなり一般層にも届くカルチャーとして拡大していったのだと思います。

J-POPを巨大産業へ仕立て上げた要因のひとつにタイアップ戦略があります。フジテレビの毎週月曜日21時

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私的KAN論(仮)第5章    I`m songwriter welcome you to my song 〜変化するJ-POP黄金時代

私的KAN論(仮)第5章    I`m songwriter welcome you to my song 〜変化するJ-POP黄金時代

1990年代も半ばを過ぎるとジャパニーズ・ポップシーンにも変化が訪れます。ミスチルは変わらず王座に君臨していますが、国民的バンド的立ち位置へ急激にシフトしていくことでの葛藤とダークな心情を余すことなく表現したAL「深海」をリリース、勝ち続けることへの苦しさを吐露しながらも、初期のポップでコンパクトな路線からは想像もつかないヘヴィネスを内包させたバラード「Everything」、佐野元春、浜田省吾、

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私的KAN論(仮) 第4章 ミスチル王朝の治世と「まゆみ」の影

私的KAN論(仮) 第4章 ミスチル王朝の治世と「まゆみ」の影

たまたま先日のことです。この3月までTBSでオンエアされていたドラマ「さよならマエストロ」を見てました。西島秀俊と芦田愛菜による人生再生のお話なんですけどめちゃくちゃいい作品でした。そして主題歌、やけに気になるメロディだよなあと思ったらアイナ・ジ・エンドなんですね。「宝者」という曲でアタマサビから美味しいメロディが最後まで余す所なく展開されていて、まさにJ-POPのお手本のような1曲。ギリギリで踏

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拙著「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」について

拙著「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」について

拙著「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」が発売されて4か月が経過しました。

その間、プロモーション稼働でいくつかラジオ番組に出演したりトークライブイベントやらせていただいたり。とはいえまだ少数在庫もあるだろうし、次のアクションどうしようかなと考え中ではあります。

ただこの本ってずーっと音楽聴き続けてるいわゆるディープな音楽ファンにどうしても読んで欲しいと狙って書いた本ではないんですよ。なん

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私的KAN論(仮) 第3章 モラトリアムの果てに〜「愛は勝つ」の時代背景

私的KAN論(仮) 第3章 モラトリアムの果てに〜「愛は勝つ」の時代背景

「愛は勝つ」のメガヒットは当時の邦楽ポップシーンの中で、明らかに大きな影響があったと思います。まだバンドブームが続く中、いわゆる邦楽ロックとは違う角度のソロ男性アーティストの台頭です。大江千里や岡村靖幸といったEPIC勢が奮闘、YMOチルドレンの流れからの高野寛といった面々が先行していましたが大きな波にはなっていませんでした。KANのブレイクがあってこそ、槇原敬之の台頭もあったと思いますし、バンド

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私的KAN論(仮) 第2章 応援ソングの向こう側

私的KAN論(仮) 第2章 応援ソングの向こう側

街を歩いていて、あまりに当たり前の光景過ぎて何にも思わなかったことに驚くことってありませんか。たとえば昔に比べて「整体」やマッサージを売りにしたお店が増えたこととか。若い頃はなんとも思わなかったからなんでしょうかね?

PCやスマホの普及による慢性的な肩こりの蔓延も影響しているとは思います。ちょっとSNS開くとうんざりするぐらいの炎上を目の当たりにしたりして肉体的にも精神的にも疲れやすいのが現代社

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私的KAN論(仮) 第1章「愛は勝つ」を聴く前に知りたい二、三の事柄。

私的KAN論(仮) 第1章「愛は勝つ」を聴く前に知りたい二、三の事柄。

KANはJ-POP史上最も注目されるべき偉大なソングライターです。僕は彼の楽曲が大好きでした。理由は簡単です。めちゃくちゃいい曲が多いから。大江千里も槇原敬之もいい曲多いしカラオケで歌ったりしてましたが、千里ちゃんやマッキーと比べると圧倒的にリスナーとしての「自分」を投影しやすかった。

大江千里って関西学院大学でEPICから華々しくデビュー、「十人十色」で味覚糖CMソングに抜擢され本人もCM登場

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大阪バックサイドブルースpart2

大阪バックサイドブルースpart2

ひさびさの大阪はたのしかった。

学生時代から社会人としてまる3年、モラトリアム時期入れると約10年を過ごしたエリアだからだけってことではないんだなーと今回あらためて思った次第。水が合うとでも言えばいいんだろか。新大阪降りた瞬間得た妙な安堵感。あれはいったいなんだったんだろか。

1泊2日の強行スケジュールだったので、大阪でしか食えないたまごサンドもアメリカ村裏のあのカレーとラーメンも、金龍でキム

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大阪バックサイド・ブルース

大阪バックサイド・ブルース

いま、大阪へ向かってます。

実にひさびさの関西。振り返ると約10年ぶりなんですよね。拙著「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」プロモーションでラジオ出演のための大阪入りではあるんですが、学生時代から社会人3〜4年目まで関西在住でその後もなんだかんだと年に数回は仕事にかこつけて行ってましたからね。こんなに間が空くとは思いもしなかった。

さて拙著の話を少しだけ。発売されて2ヶ月経過しましたけど来

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私的KAN論(仮) はじめに。

私的KAN論(仮) はじめに。

 先日クローゼットを整理していたらブルックスブラザーズの紺ブレが出てきた。1968~75年生まれの方々ならすぐにピンとくるだろう。そう、渋カジ全盛期の象徴的アイテムだ。あまりに久々に現物を見てしまったのでしばらくハンガーに吊るしたまま思わずじーっと見つめてしまった。気持ちとして甘酸っぱいというかなんというか、、、どっちかと言えば気恥ずかしさのほうが大きいかもしれない。いっそこのまま捨ててしまおうか

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「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」刊行〜「ドカベン」31巻に思いを馳せながら

「歌謡曲meetsシティ・ポップの時代」刊行〜「ドカベン」31巻に思いを馳せながら

正論と暴論の狭間で思い悩むことがあるのは結局“行間”をありかなしかの話と通じる気がする。いわゆる行間マジック。何事も間は大事ですよね。

そんなわけでnoteの更新をしばらくサボっていた。約半年空いてしまったのはずーっと思い悩んでいた、っていうのはウソ。単に毎晩ぽちぽちと自分の初単行本用の原稿書いてた。そしたらあっという間に時は過ぎ去り年末だ。長かった。いや、短かったのか。正直よくわからんのですが

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ぼくたちの好きな小林信彦。

ぼくたちの好きな小林信彦。

初めて小林信彦を読んだのは大学生になってからだった。

名前は知っていたんですよ。薬師丸ひろ子が主演した「紳士同盟」の原作者で、とか。あとは本屋に行くと吉田秋生のポップでキャッチーなイラストがめちゃくちゃ目立つ「イエスタディ・ワンスモア」がやたらと目を惹いた。刊行されたのが1989年の秋だからボクが大学生なりたての頃だったと思う。90年代初頭、吉田秋生さんが小林信彦作品のイラスト手掛けること多かっ

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読まずにはいられない〜「Dear Mom, Fuck You 無法の世界」に寄せて。

読まずにはいられない〜「Dear Mom, Fuck You 無法の世界」に寄せて。

実は小説を読むことがめっきり減ってしまった。

そもそもボクは「脾臓」を食べたいとも思わないし、
「大人になれなかった」とグズグズ日々悔やんでばかりもいられない。圧倒的に人生はリアルだし、それなりに重い。やるならやらねばとプレッシャーもあるしそれゆえに響くんですよ。SNSでほんとにどうでもいいことを炎上目当てで薄っぺらい知識ではをたらたら書くヒマあったらオレはネトフリ観るしアマプラで大映ドラマ「ス

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シティ感覚で天下一品を食べることこそアーバンなライフスタイル。

シティ感覚で天下一品を食べることこそアーバンなライフスタイル。

ヤンク・ロックとシティ・ポップは表裏一体。遠いようで近い。アーバン・メロウな夜景の先に見えるのは地方都市のローカル・ルールに縛られた身動きできない停滞した空気感。だが、その「停滞」は独特のムードを醸し出す。

と、それらしいことを書いてはみたものの、たいしたことを言ってるわけではない。いつだったか、7〜8年も前になるだろうか。かつて自分が10代の多感な時期を過ごした地方都市を訪れたことがある。人口

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シティ感覚で考える「まんが道」そして1997年のラブジェネレーション。

シティ感覚で考える「まんが道」そして1997年のラブジェネレーション。

新装版「まんが道」を読む。

まだ4巻までしか出ていないし全10巻ってことを思うと先は長いが激河大介(おそらくモデルはさいとうたかおなど劇画工房面々)とか忘れかけていたキャラとの再会は嬉しかった。あと日上ね。立山新聞社の給仕担。図案部の変木さんに学芸部の虎口さんも懐かしかったなァ。

初期「まんが道」は主人公満賀道雄の才野茂への嫉妬が隠さず描かれているところ。これが続編「愛知りそめし頃に」になると

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