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コラム・エッセイ集

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コラム・エッセイ等をまとめました。
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記事一覧

滅びの美学

生まれてはじめて見た死体が、自殺した女性のものだった。

当時三歳位だった私は、その光景をおぼろげにだが覚えている。

布団に横たわる、物言わぬ彼女の体。

私は、彼女の家に良く遊びに行ったそうだ。

子供のいないその人は、私をかわいがってくれたらしい。

アケビの生る裏庭があったことはよく覚えている。

でも、彼女がどんな声をしていたのか、どんな顔をしていたのかさえ私は忘れてしまった。

人は、

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理想郷

あなたの目と、私の目を通して見たこの世界では、何が、どんな風に違って見えるのだろうか?太陽の光の具合は、同じように見えるのだろうか?あなたには、すべてが幸せに見える世界も、私には悲壮感あふれる世界なのかもしれない。私には秘密がある。知らない人には容易に打ち明けられる秘密。だけど、近くにいる親しい人間にはその秘密は打ち明けられそうにもない。

私は男として生まれて、女になりたかったのかもしれない。い

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今日感じた事

恥ずかしながら、純文学とか名作という類の物をほとんど読んだ事がないのだが、三島由紀夫は本当に美しい文章を書くと思った。なぜ今まで読まなかったのか悔やまれる。読んでしまうと、摸倣になってしまうと思い他人の書いた文章を読めない時期があった。しかし芸術は摸倣でいいのだ。摸倣から始まり、それを超えるものを生み出す。絵を模写したり、音楽をサンプリングしたり、好きな作家のオマージュを書いたり、それでいいのだ。

女の子と手をつないだ事

その子は連れの親友の彼女だった。カレン・Oにちょっと似ている、横顔の線がきれいな女の子。昔から、わたしは線の綺麗な人間が好きだった。

線の綺麗な人間を見つけると一日中でも眺めていたくなる。

彼女は日本のファッションや文化が好きで、私たちはよく一緒にリトルトーキョーや、日系スーパーに買い物に行ったし、よく四人で飲みに行ったりもした。ラスベガスで結婚した時も、彼女が証人になってくれた。

私は彼女

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今日感じた事

インターネットの普及によって、私たちは発表の場というものを比較的簡単に得られるようになった。今まで紙媒体でしか残らなかったものが、どこに存在するのかよく解らない場所に残るようになったのだ。一般市民のこんな私の文章でさえ、不特定多数の人間に読んでもらえ、ひょっとすると100年後も読み継がれていくのかも知れないという可能性さえあるのだ。それは人間の、他人に認められたいというありふれた欲求をいとも簡単に

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美しいものは美しいーマキシマリストのススメ

私は、線の綺麗なものが好きだ。静かなところで戯曲のはじまる様なものが好きだ。なめらかな曲線、不安になるくらい適合した色の組み合わせ、背後からいきなり殴られたような衝撃のある突拍子もない、心にズカズカ入ってくる歌声や文章。マキシマリストの私は、そんな美しいものたちを全て自分の周りに置いていたいと思う。欲張りだ。死んだら持って行けない事は知っている。

日本では、断捨離というのが流行していたらしいが、

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有希子さんのこと

こっちに来て間もない頃、全てが真新しく私は気になる事は何でもしてみようと一所懸命だった。あるイベント会場で日本人の女性に声をかけられた。

―さっき、インタビューされてたでしょ?

彼女は語学留学をしている年上の女性だった。

ロック系のイベントだったので、私は気合を入れて着飾っていた。でも、声をかけてきたお姉さんは普通の格好で、普通の人に見えた。強いて言うなら、全くロックなんかに興味がないような

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ボーイズラブとガールズラブ

ボーイズラブやガールズラブ、露骨な性的表現がない作品は好きだ。切なくなるような、苦い初恋のような作品は大いに好きだ。性的表現があからさまに含まれてしまうと、その価値が失われてしまう気がする。

私の母は、少女漫画が大好きだ。その影響で、小さな頃から古いマンガ本をたくさん読んで育った。

一番のお気に入りは、一条ゆかりの砂の城、だった。事情のある幼馴染の恋人との結婚を反対され、その恋人が残した子供を

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猥褻と芸術

何を根拠にそれは猥褻であって芸術ではないと線引きするのか?人それぞれ感性が違うので、一般大衆的に言えば、それを仮にあなたのリビングルームに飾るとする。躊躇なく飾れるか、否かであろうか?

小学生の頃友達の家に行った際玄関の入って真正面に、成人雑誌の切り抜きが飾られていた。幼いわたしの眼に、その切り抜きは衝撃で、美しいものとは言えなかった。しかし、祖父の家でも同じような成人雑誌の切り抜きが、私たち子

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国籍を変えるということ

日本は二重国籍を認めていない。私は10年間この問題で悩んできた。私の住む国では二重国籍は認められているけど、私の生まれた国では認められていないので、私が帰化したら日本人ではなくなるのだ。

もしかしたら、日本で暮らすことになるかも?もしかしたら、離婚するかも?なんて迷いや問題も多々あったし、第一私は日本人であることを誇りに思っていた。

しかし、人間の心というものは移ろいやすく気まぐれで、何をした

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ちょっと切ない友達の話

一昨年、私は異国に来て初めて仲良くしてくれた、日本人の友達を癌で亡くした。10以上年の離れた彼女と共通している事といえば、外国人の連れがいる事と、子供が同じ年だということ位だった。事業を起こすことが得意な彼女は、私なんかよりずっと世の中の上の方にいる人間だったのだろうけど、分け隔てなく付き合ってくれた。私たちは、喧嘩もできる位心を許し合った仲だったし、彼女は面白いものを見つけてきては、私が好きそう

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映画観たい

BFG観たいな。インディペンデンスデイ、面白いのかな?オリジナルの時ひとりで映画館に行って、隣にカップルが座っていたんだけど、お姉さんすごい真剣に見ている横で、お兄さんグーグーいびきかいて眠ってたの思い出した。

それで、父が母とデートの時オーメン観に行ったそうなんだが、静かな映画館の中ガサガサと煎餅の袋を開けだした母、それをちょっと恥ずかしく思った父、その後映画は母とは行かないと心に決めたそう

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ミッドライフ・クライシスについて考える

性別で区切られた世の中というものは、非常に生きにくいと思う。性のステレオタイプがまさしくそうだ。男だからこうである、女だからこう考えるべきだ、というものは全く持って意味を持たないと思う。しかし悲しいかな、ほぼ大多数がそのステレオタイプにのっとって物事を考えている世の中である。かつて私も長年一緒に暮らしてきた母の呪縛からは逃れられず、家を出て10年ほどは母の考えにのっとって事を決めたり、納得をしてい

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よしむらひらく

自分の詩や小説、エッセイ以外にも、好きなもの、ひと、ことがらなんてのも、ここに残して行けたらなあと思っている。

今日はつい先日素敵な出会いがあったので、ちょっと書いてみようと思う。

私は、ほとんどの事柄を結構感覚的にやる。面白そうだとか、やってみようとか、そっちがダメなら今度はこっちだ、とか。計画性がまるでない。好きになるのも結構偶然だったり感覚的だったり、直感的だったりする。

好きなアーテ

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