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飲み屋にて。若い2人

飲み屋にて。若い2人

[エッセイ×小説]
実話を物語仕立てで

若い頃の私はとにかく"若い男の子"が苦手でした。
大人は平気なんです。仕事でたくさん関わっていたし、なんと言っても安心感がありましたから。

それでも若い男の子と関わらなくてはいけないシーンがあると、自分が苦手なのをバレたくなかったからか、必要以上に冷たく対応してしいまっていた数々の思い出があります。ごめんなさい。

それを元に、
ある夜のとってもくだらな

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MIZUKI エピローグ「ある安上がりのバーで」前編・後編

MIZUKI エピローグ「ある安上がりのバーで」前編・後編

※こちらは「MIZUKI 二十面相の女」のエピローグです。→

安上がりのバーである初老の紳士と女の子 前編

入り口の扉が開き、黒いドレスにコートを羽織った若い女の子が入ってきた。


少しよそよそしい表情でカウンター席に座った女の子は、髪の毛をくしゃくしゃとかき上げた手を首の辺りに移動させたままどこかを見つめている。


つづいて、賑やかな声と共にバーには4人組のグループが入ってきたので、

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ある夜  雑誌編集者Aの場合

ある夜 雑誌編集者Aの場合

これは私が24歳の時に過ごした、ある夜の出来事をそのまま書いただけのどこにでもある平凡な話。

その方からは突然電話が来た。
「〇〇の編集者の者ですが、今東京から取材に来ていてあなたを紹介されたので時間が合えば一度会えたらと思いまして。お仕事の話も。」と。

私たちは夜の20:00にバルで待ち合わせた。
私が先に店に着き待っていると、

髭の生えた男性が来た。
Tシャツと動きやすそうな黒いパンツで

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ある片想いの話(男性の視点)

ある片想いの話(男性の視点)

ある日僕と彼女は喫茶店へいた。
僕は会っていなかった七日間分の思いを込めて、緊張しながら
「一週間ぶりだね」
と彼女へ言ったら
「あら、そうだった?」
と彼女はメニューのページをパラパラとめくっていた。
彼女はいつも少し僕の心を傷つけるのが得意なんだ。
彼女と僕は近くのミニシアターで最近話題の映画について話した。彼女が楽しそうに話しているのを、僕はとっくに飲み干したアイスコーヒーのストローを何度も

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ある男性の話(女性の視点)

ある男性の話(女性の視点)

私はある男性と喫茶店へいた。
彼は私に「一週間ぶりだね」と言ったので
「あら、そうだった?」と返した。
私たちはいつの間にか一週間置きに会うほどの仲なっていたようで、少し驚いた。

私たちは近くのミニシアターで最近話題の映画について話した。意外にも彼があのマイナー映画を知っていたので、少しテンションが上がって話しすぎてしまったかもしれない。
気がつけば彼のアイスコーヒーは空になっていた。

私ばっ

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ともだち

ともだち

自分は53歳で彼女は25歳。

我々は割と仲の良い友達であり、仕事仲間でもある。親友と言う言葉を使うのは性に合わないが、まぁ割と長い付き合いの友達だ。別にそれ以上もない。
自分には妻がいるし、彼女には10個上の彼氏がいる。
昔はこんな若い子と仲良くなる予想なんかしていなかったし、周りから見るとちょっと変な感じに見えるかもしれないが、びっくりするほど案外普通である。
自分はある会社の社長で、彼女は個

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若い頃は

若い頃は

若い頃は経験も肩書きもないので
時には大人たちに少し粗末に扱われたりします。
だから大人たちにバカにされないように見た目を変えてみたり、周りを観察したり、カッコ悪いこともしちゃいながら、失敗して、とにかく色々と必死に試してみます。

大人になると、今度は周りに期待され、当たり前のように自分以上の高いレベルを求められたりするようになります。
それは素晴らしいことです。
でも気がつけば、昔みたく色々試

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夢の中の彼女

夢の中の彼女

夢の中の彼女は今日も完璧だった。

彼女は僕が高校生の時から夢に現れはじめた。

彼女はいつもどこかに寝そべっていて、
今日の場合はソファの上だった。
ここは彼女のアパートなのだろうか。
窓から刺す光が彼女の頬に筋を作っている。

僕がその寝顔に見とれていると、
彼女はいつものように完璧なタイミングで目を覚ました。
こっちをじっと見つめてくる彼女の顔が完璧すぎて僕はいつもすぐに言葉が出せないでいる

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前の彼女

前の彼女

前付き合ってた彼女はどんな人?

この質問をされたのは人生で4回目くらいだが、僕はこの質問の答えで上手くいった試しがない。

はじめて当時の彼女からこの質問をされた時、割と真面目に答えたら、彼女は次の日の夜まで不機嫌で、それは晩ご飯のパスタの味にまで影響したほどだった。

だから次に付き合った彼女にこの質問をされた時は
「別にどうってことないよ」と言ったら、
しつこく何度も聞いてきたので、しょうが

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かつての色男

かつての色男

カウンターが5席だけの小さなスナックには色々な大人たちがやってきます。
今日はママと、男性が1人。あと私。
男性の持っていた紙袋から小さな紙切れが落ちたので私が拾いあげると、それは美青年の顔が写っているモノクロ写真だった。私が「落としましたよ」と"それ"を手渡すと、男性は「ああ、すまないね」と少し笑いながら"それ"を受けとった。
男性はおそらく50代後半くらいで、少し白髪混じりの無造作な髪型で黒い

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不確かな夏の記憶 中

不確かな夏の記憶 中

月曜日になると、彼女の行きつけの無料のギャラリーで絵を見ながら、僕たちは作品に対して評価したり皮肉を言ったりしていた。
すると彼女は突然
「私本当はね、絵描きになりたかったの。」
と言いいだした。
「僕も絵描きみたいな人生には憧れるな」
「あなたも?どうして?」
「絵描きには世の中の常識とかはきっと関係ないからさ。自由気ままに生きて、たまにスキャンダルなんか起こしても時間が経てばまた先生とか言われ

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休日。ある男の場合

休日。ある男の場合

朝、携帯の着信音で目が覚めた。
メール5件、着信2件

やばいやばい、

「はい…」
「ちょっとまだねてるの?今日15:00でしょ!
全然迎えに来ないから、もう向かってるんだからね!」
「あーごめん…!」
「とりあえずあと30分で着くから出かける準備しておいてよ!後タバコ吸わないで!」
「ごめん、本当ごめん」

携帯には15:20
彼女は電車乗り継いでこっち向かってるのか、悪いことしたな。

今俺

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飲み屋にて。後腐れない場所

飲み屋にて。後腐れない場所

今日も彼女がいた。
最近この飲み屋に来ると2回に1回は彼女がいる。20歳くらいの女の子でいつもカウンターの1番テレビに近いところに座ってる。

「ママ、焼酎」
「はい焼酎ね」
俺は彼女から2個開けた席に腰掛けた。

「おじさんいつもこの時間なのね。職場が近いの?」
「いや、職場も家も近くないよ。」
「じゃあ、ここが好きなのね。」
「そうだな、それもあるけど誰にも会いたくないからってのもあるな。」

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ぜいたく病

ぜいたく病

「ねぇ、この世の中に悪い人っているかしら」

「そりゃいるよ。
悪い人は、悪い人。いい人はいい人だよ。」

「あなた最高ね。あなたみたくなりたい」

「それは褒め言葉かい?」

「そう、羨ましい。
わたしどんどん物事を複雑に考えるようになっちゃって」

「確かに君は自分のこととなると、考えすぎなとこあるよ。」

「相手を許す方法って知ってる?」

「いや、」

「その人の世界に入り込んで、わたしの

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