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創造の深淵からこんにちは

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色々な詩や短編小説などです。
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#小説

エレクトロニック パレード

エレクトロニック パレード

いっけん無秩序に見えますよね?
ふふ。そうなんですが、ここは完璧に管理された法則性によって動いているんですよ。
私たちも、最初はとても驚きました。
この膨大なとても把握しきれないようなパターンが完璧に管理されているんです。
どうぞ心ゆくまで楽しんでくださいね。

そう言って、ガイドの声は切れた。

ここの世界はとても例えられない。
例えてしまうと、それが途端に凡庸な味気ない世界へと、急降下しながら

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歩く水風船と蛾眉の飢餓

歩く水風船と蛾眉の飢餓

お前さん、ちょっとそこのお前さん。
んん?
そうさ、お前さん以外に此処には誰も居ないだろう?

お前さん、もしかしてその風船を割ろうっていうのかい?んえ?

そうさ、お前さんのその水風船だよ。
どこにある?だって?

ハッハッハハハハ!
お前さん、それは正気かい?
お前さん以外にどこに水風船があるっていうんだい。
そうとも。お前さんたちは、歩く水風船だろう?それ以外になんて云うのだよ。
私は知らな

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Concentration

Concentration

集中すればするほど、この神経が衰弱していくのは、それほど僕が君と向き合う時間をナーバスなものにしているからだと思う。

頭の中で自動的に記憶されていく数々の君の残像を、僕は都合よく解釈しないように、出来るだけ正確に。

君の引く手札と同じカードを自分は一体どこまで記憶することが出来るのか。

何度目かの失敗でゲームオーバーを迎える、その前に、僕はすべてを記憶する。

正解が、いつも君の気分次第で変

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甘い罠

甘い罠

《赤》
きみがぼくの手をひっぱって
愉しそうに駆けるから
かかとを踏んだままのスニーカーが
そのまま麗らかな光の世界へ飛んでいきそうで

「さて、どこでしょうかっ?」
天真爛漫を開花させた満面の笑みで
いつもぼくを真っ直ぐみつめる
「なに?なにが?」
「この白木蓮の中に1つだけお花じゃないものが、かくれんぼしてます。さて、どこでしょうかっ?」
見上げると、純真無垢な純白たちが
眩しい青空に輝きわた

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智梅謳詠花

智梅謳詠花

「ほらほら、ごらんなさいよ。」

天女のひとりが足をくずしながらそう言いつつ、下界を指さしました。

薄紫の雲は、駆けよった幾人の天女たちで溢れていて、凛と佇む梅花の眼福にみなが微笑み合い、風が纏った紅い芳しさが、天女たちの歌声をさらに悦ばせました。

智の梅花、咲き乱れるは、百花斉放。

麗の今日、待ちわび続け、はや幾年。

此方に咲くは、天花乱墜、智の扇。

解語之花よ、錦上添花の、満願成就。

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金色の追憶

金色の追憶

自分には縁がない。

そんな風に思っていたから、いつも僕は君を遠くから見ていることしかできなかった。

君は、この季節になると必ずあの揺れる金色の夢の世界の下で、静かに座って本を読んでいたね。

君は知らないかもしれないけれど、君がそこにいるだけで、まるで幻想的な絵画のような空間が現れていたんだよ。

僕は、この眼に焼きつけようと必死だった。

輝く金色の揺れるフレームが、君の美しさを際立たせて、

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蕚  utena

蕚 utena

不思議なものですね、あなたさまがそのようにお思いになるなんて。いつもなら、それでもまた繰り返し繰り返し、その光る銀の糸をたらしておやりになるのでしょう?

ほら、御覧くださいませ。
潸潸たるあのこもごも蠢く光景を。わたくしに至っては、そのようなお立場ではまず御座いませんから、これでもめっぽう困惑しているのですよ。

いえ、あなたさまがそのようにお思いになることは、少しも可笑しいことでは御座いません

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雌雄同体・夜中歌華

雌雄同体・夜中歌華

ながい。

ながい、ながい。

嗚呼、永い。

ぐにゃりぐにゃりと

繰り返される白濁と暗鬱の明暗意識。

足どりはふらつき、この真っ暗な世界で

どれくらい彷徨っているのだろうか。

遠くのほうに幽かに灯る外灯は

いまにも消えてしまいそうで。

緩やかに栄える易しいはずの

この坂道の

ほんのすこしの傾斜たちが

確実にこの身の生命を削っている。

何処にむかっているのかもわからず

何故こ

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Μμ  ∝  Ωω

Μμ ∝ Ωω

目の前を覆うように垂れ下がる一面の蔓には、ところどころ美しい紫色の小さな花が咲いていた。

雨粒の雫が、葉をつたいつたい、繋がりながらも、静かにしたたりおちていた。

この先へは、進ませない。

かつて、そう結界が張られていたのだろう。

私は、持っていた大剣を差し出し、たくさんの蔓を傷付けないようにソッと右に寄せた。

中をのぞいて、息を飲んだ。

まるで別世界のまるい空気とはじける色彩たちが、

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