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ワインジャーナル

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ワイン科学を軸に、マーケティング、ブランディング、テイスティングなど幅広くワインについて語るジャーナル。書き手は国内外の大学、大学院でワインを研究してきた3人。
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#化学

KDP第2弾『ワインと微生物学』

KDP第2弾『ワインと微生物学』

お久しぶりです。

最近更新できていなかった理由です。

本を書いていました。

なるべく仕事がはじまる前に終わらそうと思っていたので、なんとか2月中にリリースできてよかったです。

今回は前回のワインリテラシーとは全く別の系統の話。

醸造における微生物の話です。
アマゾンの方にもるのですが、目次はこんな感じです。

内容はこのnoteに書いてある酵母やブレタノマイセス、酢酸菌の話を中心に、乳酸

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オークチップテイスティング

オークチップテイスティング

日本でもオークチップが解禁されてもうしばらく経ちます。

個人的にはオークチップは安価でかつ私の好物であるバニラ香や樽香がしっかり付くので大賛成なのですが、使うのはなかなか難易度が高いそうです。

以前インターンシップで働いていたワイナリーもトライはしてみたがどうにもあまりうまくいかなかったそうで。

そのときの状況を詳しく知っているわけではないのでそこに関してはあまり書くことができないのですが、

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ブドウの養分動態分析法~葉柄分析~

ブドウの養分動態分析法~葉柄分析~

今回は葉柄分析という手法に関してです。
分析結果を眺めて土壌や樹勢との相関や因果関係を仮説から導き出すのはなかなか面白いです。

葉柄(ようへい、英語:Petiole)は、植物において葉と茎を接続している小さな柄である。 通常は茎と同じ内部構造を持つ。 葉柄の両側に伸長した部分は托葉といい鞘状に巻いているものは托葉鞘という。

今回はこの葉柄部分を使った分析を紹介する。

これは一度調べたのだが、

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ワインにおけるタンニンの渋みの正体~量と質~

ワインにおけるタンニンの渋みの正体~量と質~

フェノール類。フラボノイド。
アントシアニンやアントシアニジン、プロシアニジンなど色々と名前がややこしく、それが故に混乱するようなトピックであると私自身も感じています。

そんなフェノール類の中でも皆さんが大好きなタンニンについてのお話です。

縮合型タンニンはプロアントシアニジンと同義でいずれの名前もよく使われます。
またタンニンと言ったときには加水分解性のタンニンというものも存在しており、そう

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フェノールって?タンニンって結局なに?(化学のお話)

フェノールって?タンニンって結局なに?(化学のお話)

フェノール。タンニン。アントシアニン。

以前一度アントシアニンについては取り上げたのだけれど、
そのときそもそもアントシアニンとはなにかということをあまり突っ込んでいなかったように思ったので、今回はもっと基礎的な化学の話(基礎的とは簡単ということではないです)をしようと思います。

そしてこの構造が酸化の記事ともリンクしてくるので、読んでいただけると酸化の稿で少し理解がしやすいかと思います。

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還元臭の増減/瓶熟VS樽熟

還元臭の増減/瓶熟VS樽熟

前回までで熟成の種類、コルクについて、酸化の香りへの影響などについて触れてきました。

もしこの記事を読んでいまいちわからなかったという方がいれば、少し戻って以前の記事も見て頂けると理解しやすいのではないかと思うので、そちらのほうもよろしくお願いします。

またなにか疑問があればFacebook、Twitter、コメントなどで聞いていただければと思います。

そして今回は瓶熟シリーズで還元状態に関

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酸化還元と香り/色/テイスト

酸化還元と香り/色/テイスト

前回は瓶熟に関する基本と、瓶熟に関する酸素とコルクの関係を見てきた。

ここからはその酸素の量によって規定される酸化還元状態とワインの関係性を見ていきたいと思う。

酸化還元状態と香り/色/テイスト

酸化による色の変化というのは以前の酸化の話でしたように思う。
化学酸化と酵素酸化によってカテコールがキノンになって、それが重合することで褐色化するといった話だ。

ここではもう少し深くアルデヒドに触

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栽培醸造家はパラディンだ。

栽培醸造家はパラディンだ。

皆さんはパラディンという職業を知っているだろうか。

パラディンはドラクエでよく出てくる上級職だ。

この上級職に就くには転職条件があり、僧侶と武闘家をマスターしていなければならない。

そしてワインメーカーは「パラディン」なのである。

もっとも別に上級職であればバトルマスターでも賢者でも何でもいいのだが、私はパラディンの響きがスキなのでただパラディンと称しているだけである。

なぜパラディンな

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ワインにおける亜硫酸の代替法-抗菌作用編

ワインにおける亜硫酸の代替法-抗菌作用編

前回は亜硫酸の効果の1つである抗酸化作用についての代替法を見てきました。

今回は亜硫酸のもう1つの作用である抗菌作用についての代替案を見ていきたいと思います。

サーモヴィニフィケーション(Thermo Vinification)

サーモヴィニフィケーションという技術がある。

これは除梗破砕が終わった後の発酵前の果汁が70℃程度になるように下の図のような装置で10分ほど熱を加えるというもので

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ワインにおける亜硫酸の代替法-抗酸化剤編

ワインにおける亜硫酸の代替法-抗酸化剤編

亜硫酸が抗酸化作用と抗菌作用の両方を持つ唯一無二の添加物であるということを以前の稿で述べました。

一方でトレンドとしてナチュラルワインといったものや、減亜硫酸ワインといったものがあるのもまた事実です。

ではどのようにして減亜硫酸ワインというのを作るのでしょうか。

亜硫酸を減らすだけでも減亜硫酸ワインはできますが、減亜硫酸という環境下でいかにしてワイン造りをコントロールしていくかということが重

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ブドウ栽培での灌漑のタイミングと影響

ブドウ栽培での灌漑のタイミングと影響

今回が灌漑の準最終回です。

最終回は実験結果が出て、友人の論文を主にしたものになると思います。

灌漑のタイミング
灌漑のタイミングによって色々な効用がある。

タイミングは大きく分けて3パターン。

もちろんその3パターンのうちどのタイミングで水分ストレスがかかっているかといったことはその年の気候によっても違うので、タイミングに関しては前述の記事を参照にしていただけたらと思う。

まずその3パ

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ワインセーバーでワインは守れるのか。

友人がワインセーバーを買おうか悩んでおり私にメッセージが来ました。

「ワインセーバーッテイミアルノカイ?」

その答えを探すべく私は実験を企てた。

実験概要
実験は簡単。
なるべく販売までの酸化状態に差が出ないようなワインを2本買います。
片方はワインセーバーを使いながら飲み、片方は使わずに飲んでいきます。

さてどうなるのでしょうか。

もう少し詳細を加えておくと、
今回用いたワインセーバー

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写真は先日のニースにて。
リュリーのワインは2010年産
Domaine Chanzyというところのワインで、9~10€程でした。
話の内容の半分は古木について語っています。
そのエビデンス部分は翌日の記事になりますのでお楽しみに。

ワイン造りにおける酢酸菌対処法

ワイン造りにおける酢酸菌対処法

前回までの長い前振りは酸化についてと酢酸菌についてでした。

これで酢酸菌最終回になります。
ページの最後に数回の記事分をまとめてPDF化したものもあるので、マガジン購入者の方はPDFでダウンロードしておいていただければと思います。

今回は一番気になる酢酸菌の対処法を取り上げます(過去最長記事になりました)。

酢酸菌防除法
まずオーソドックスな酢酸の防除法は以下であり、あとはその組み合わせで行

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