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リラックス小説「森とわたしと」②
40代ひとり暮らし、20年勤めた会社を辞めたばかり。マンションの部屋からはいつも森が見える。
7月/当たり屋ハッチと懐かしのメロンクリームソーダ(後編)ミツバチのような可愛らしさはなく割と巨体だが、かと言ってスズメバチのように尖ったおしりもしていない。良いハチなのか、悪いハチなのか。しばらくするとハチは体当たりをやめて、森の方へ飛んでいった。恐るおそるベランダへ出て、エアコンの室外機周辺や壁など
リラックス小説「森とわたしと」①
40代ひとり暮らし、20年勤めた会社を辞めたばかり。マンションの部屋からはいつも森が見える。
7月/当たり屋ハッチと懐かしのメロンクリームソーダ(前編)
子どもの頃から夏が苦手だった。暑いし、怠いし、汗をかくし。そして、苦手なくせに、夏の終わりはいつだって少し寂しかった。
退職したばかりで時間を持て余したわたしは目標を立てた。夏が苦手な自分を変えるのだ。夏の空はきらいじゃないんだよな……。水色
【短編小説】ファンファーレ
午前九時、東京駅上越新幹線改札前。鳴子祐司は部下の瀬波を待っていた。冷凍食品会社で課長補佐を務める鳴子は、高級焼きおにぎり開発のために新潟県南魚沼市に瀬波と商談をまとめに行くところだった。
鳴子は上機嫌だった。商談がうまくいきそうなことに加え、新幹線に乗れるからだ。機嫌のよい時は学生時代から続けているトランペットのタンギングを口の中で行うのが鳴子の癖だ。脳内で吹奏楽の名曲「オリエント急行」が始ま