nekonomimi1026

ご当地小説を投稿しています。全てフィクションです。他にも自分の作品の舞台や各地の風景を…

nekonomimi1026

ご当地小説を投稿しています。全てフィクションです。他にも自分の作品の舞台や各地の風景を撮影しYouTubeでアップしています。併せてご覧いただければ幸いです。(YouTubeは右下の再生マークからどうぞ) なお、カクヨムにも同名で小説を投稿しております。

マガジン

  • 【小説】連綿と続け

    富山県を舞台にした小説

  • コラム

    あとで読む記事をマガジンに保存しておくことができます。不要であれば、マガジンの削除も可能です。

記事一覧

固定された記事

連綿と続け・あらすじと登場人物

題名: 連綿と続け (あらすじ) 東京都八王子市で生まれ育った一ノ瀬侑芽は 大学を卒業し、富山県の南砺市役所に就職が決まった。 南砺市では人口と観光客が年々減少し、…

nekonomimi1026
8か月前
16

【小説】連綿と続け No.58

由美子)ジョギングで顔は合わせとったんやけどね 侑芽)ジョギングで? 由美子)そいがそいが。毎朝、小矢部川沿いを走っとったんやけど、必ず会うから「おはようござい…

nekonomimi1026
23時間前
12

【小説】連綿と続け No.57

純喫茶『あいの風』を貸し切り、 マルシェの打ち上げをする事になった。 富樫と高岡も乗せて 航の車であいの風に向かう。 高岡と富樫は店の前で先に降り、 侑芽は航と共…

10

【小説】連綿と続け No.56

浴衣を着せられた侑芽は 照れながら航の前に立つ。 白地に小さな青い花の模様が描かれた浴衣であった。 浴衣に描かれている花は雪割草。 雪深い土地に春の到来を告げる花…

9

【小説】連綿と続け No.55

正也や歌子達が会場を回り出した頃、 南砺市のゆるキャラ 『NANTOくん』が特設ステージに現れ、 会場は一気に盛り上がりをみせた。 地元のローカル番組『なんと素敵テレビ…

12

【小説】連綿と続け No.54

開場前から続々と来場客が集まりだしている。 当初の予定では 来場者数は200名弱と想定されていた。 だがこの時点で 明らかにそれを上回ることが見えた。 富樫)これは…

12

【小説】連綿と続け No.53

離したくない、離れたくない。 あらためて思いを確認し、夜が明けた。 この日はマルシェの前日。 侑芽は会場設営に駆け回る。 参加者達は そんな侑芽の姿を見て安堵して…

11

三島由紀夫の潮騒を久々に読み返した。3回目の読了だが、歳を重ねる度に瑞々しい純愛に心が洗われる。これ以上のラブストーリーに出会える気がしないし、自分の小説がチープに思えて心が折れそうになる。いや当然なんだけど。私は私だし。しかしこの作品は永遠の憧れであり目標

8

【小説】連綿と続け No.52

すぐにスマホを確認すると、 待ち焦がれていた侑芽からのLINEだった。 『マルシェに出られることになりました』 航は迷うことなく返信する。 『良かったな 侑芽が頑張…

nekonomimi1026
10日前
9

【小説】連綿と続け No.51

侑芽)どういうことですか? 富樫)それがねぇ、準備で集まった人らに、一ノ瀬さんが担当から外れて当日も来れんくなった事を伝えたら…… 富樫が事の顛末を説明している…

nekonomimi1026
11日前
11

【小説】連綿と続け No.50

キスを避けた侑芽。 航は呆然とした。 侑芽)少し……考えさせてください 航)考えるて……何を? 侑芽)これからのこと。仕事も……航さんとの事も…… 航)俺との事…

nekonomimi1026
12日前
11

【小説】連綿と続け No.49

侑芽は城端のアパートに戻った。 航が役所まで迎えに来る事になっていたが、 とても会う気にはなれない。 部屋に入ると同時に スマホがブルブルと鳴っている。 航からの着…

nekonomimi1026
13日前
13

【小説】連綿と続け No.48

航は侑芽からの連絡に 事態を知る。 メッセージのやり取りで、 航はすぐに誰の仕業か検討がついた。 航)アイツや…… その瞬間、 青筋を立てるほど怒り心頭になり、 拳…

nekonomimi1026
2週間前
15

【小説】連綿と続け No.47

会議室に通された侑芽は 黒岩と共に席に着き、 険しい表情をした副市長から問われる。 副市長)君が観光推進課の一ノ瀬さん? 副市長は50代半ばの中年男性である。 普…

nekonomimi1026
2週間前
12

【小説】連綿と続け No.46

いつも通りの侑芽に、 騒ついていた心が穏やかになる航は、 彼女を迎え入れて、 すぐにギュッと抱きしめた。 侑芽はその胸に埋もれながら抱きしめ返す。 そして体を離した…

nekonomimi1026
2週間前
12

【小説】連綿と続け No.45

その頃、 航は五箇山の秋祭りで使われる 獅子頭の修復作業を行っていた。 集中し、正也と確認をしながら細かい部分を補修し、 目の前の仕事と向き合っている。 あらため…

nekonomimi1026
2週間前
12
連綿と続け・あらすじと登場人物

連綿と続け・あらすじと登場人物

題名: 連綿と続け

(あらすじ)
東京都八王子市で生まれ育った一ノ瀬侑芽は
大学を卒業し、富山県の南砺市役所に就職が決まった。
南砺市では人口と観光客が年々減少し、その回復が急務となっていた。
その為には地域の人々の協力が必要となり、その間に入る担当者として新人の侑芽が選ばれる。様々なことに苦戦する侑芽であったが、足を運ぶうちに地域の人々の暮らしぶりやそれぞれの思いを知り、観光だけに頼らず地域の

もっとみる
【小説】連綿と続け No.58

【小説】連綿と続け No.58

由美子)ジョギングで顔は合わせとったんやけどね

侑芽)ジョギングで?

由美子)そいがそいが。毎朝、小矢部川沿いを走っとったんやけど、必ず会うから「おはようございます」て挨拶だけしとってね

航)へぇ。ジョギングしとることは知っとったけど……

山崎)なんや照れてまうのう!

いつの間にか他の者達も
耳をすませて話を聞いている。

由美子)そんな事が2年くらい続いたのかなぁ。ある日、私がお勤めし

もっとみる
【小説】連綿と続け No.57

【小説】連綿と続け No.57

純喫茶『あいの風』を貸し切り、
マルシェの打ち上げをする事になった。

富樫と高岡も乗せて
航の車であいの風に向かう。

高岡と富樫は店の前で先に降り、
侑芽は航と共に一度航の自宅に向かう。

車を置くだけと思っていた侑芽は、
そのまま店に向かおうとするが、
自宅に入っていく航。

侑芽)……?

自宅に入るなり侑芽を抱きしめた航は、
耳元で「お疲れ」と囁き、
すくいあげるように口付けた。

二人

もっとみる
【小説】連綿と続け No.56

【小説】連綿と続け No.56

浴衣を着せられた侑芽は
照れながら航の前に立つ。

白地に小さな青い花の模様が描かれた浴衣であった。

浴衣に描かれている花は雪割草。
雪深い土地に春の到来を告げる花である。
その姿は可憐でありながら、
厳しい環境にもちこたえられる生命力がある。

隆史)航くんも着るけ?

航)俺はええ。似合わんし……

凛子)似合うよ絶対!ほれ、簡単に着せられるさかい

航)ええて……

侑芽)航さんも着てくだ

もっとみる
【小説】連綿と続け No.55

【小説】連綿と続け No.55

正也や歌子達が会場を回り出した頃、
南砺市のゆるキャラ
『NANTOくん』が特設ステージに現れ、
会場は一気に盛り上がりをみせた。

地元のローカル番組『なんと素敵テレビ』が
マルシェの取材に訪れており、
撮影をしながらNANTOくんの紹介をしている。

子供達も興奮して
NANTOくんに声援を送ったり、
記念撮影などを始めた。

侑芽)NANTOくん、人気者だなぁ

侑芽がそう呟くと高岡がドヤ顔

もっとみる
【小説】連綿と続け No.54

【小説】連綿と続け No.54

開場前から続々と来場客が集まりだしている。
当初の予定では
来場者数は200名弱と想定されていた。
だがこの時点で
明らかにそれを上回ることが見えた。

富樫)これはえらいことになるが〜

侑芽)大丈夫です。なんとかなります!

富樫)何でそんなことわかるがよ

侑芽)SNSの反響で大体は予想してました。それと、ここ数年のマルシェの統計をとっていたので、たぶん今日は、少なくとも500名はお越しにな

もっとみる
【小説】連綿と続け No.53

【小説】連綿と続け No.53

離したくない、離れたくない。
あらためて思いを確認し、夜が明けた。

この日はマルシェの前日。

侑芽は会場設営に駆け回る。
参加者達は
そんな侑芽の姿を見て安堵している。

「やっぱアンタがおってくれて良かった」
「明日も必ず来てくれるんやちゃ?」

会う人会う人が声をかけてくる。
一時はマルシェ開催が危ぶまれたから、
不安が大きかったのは
むしろ出店する側だった。

久しぶりに参加者達の顔を見

もっとみる

三島由紀夫の潮騒を久々に読み返した。3回目の読了だが、歳を重ねる度に瑞々しい純愛に心が洗われる。これ以上のラブストーリーに出会える気がしないし、自分の小説がチープに思えて心が折れそうになる。いや当然なんだけど。私は私だし。しかしこの作品は永遠の憧れであり目標

【小説】連綿と続け No.52

【小説】連綿と続け No.52

すぐにスマホを確認すると、
待ち焦がれていた侑芽からのLINEだった。

『マルシェに出られることになりました』

航は迷うことなく返信する。

『良かったな 侑芽が頑張っとったからや』

『いえ、私は何も…』

『ちゃんと飯食うとるんけ』

『はい。航さんは?』

『こっちは心配せんでええ』

他愛のないやり取りが
テンポよく続いたが少し間があき、
またメッセージが届いた。

『ちょっと声が聞き

もっとみる
【小説】連綿と続け No.51

【小説】連綿と続け No.51

侑芽)どういうことですか?

富樫)それがねぇ、準備で集まった人らに、一ノ瀬さんが担当から外れて当日も来れんくなった事を伝えたら……

富樫が事の顛末を説明している。
それはマルシェの参加者達から
不満の声が上がっているという内容だった。

「一ノ瀬さんが何べんも通うてくれて、きちんと説明してくれたさかい参加を決めたんや!」
「あの人を信用して任せたがに、こんながは話が違う!」

といったクレーム

もっとみる
【小説】連綿と続け No.50

【小説】連綿と続け No.50

キスを避けた侑芽。
航は呆然とした。

侑芽)少し……考えさせてください

航)考えるて……何を?

侑芽)これからのこと。仕事も……航さんとの事も……

航)俺との事て何を?まさか、別れるて言うんか?昔のこと……そんな気になるんか?

侑芽は黙ったまま何も答えない。

航)俺は嫌や。こんな時にこんな事で。侑芽がしんどい時に1人にはできんちゃ

強引に抱き寄せる航。
ずっと人に無関心だった男が、

もっとみる
【小説】連綿と続け No.49

【小説】連綿と続け No.49

侑芽は城端のアパートに戻った。
航が役所まで迎えに来る事になっていたが、
とても会う気にはなれない。

部屋に入ると同時に
スマホがブルブルと鳴っている。
航からの着信であった。

何度もかけてくるから、
思い切って電話にでる。

侑芽)はい……

航)やっとでた。今どこにおるが?役所で待っとれ言うたがに

焦っている様子の航。
侑芽はか細い声で答える。

侑芽)ごめんなさい……

航)なんで泣い

もっとみる
【小説】連綿と続け No.48

【小説】連綿と続け No.48

航は侑芽からの連絡に
事態を知る。

メッセージのやり取りで、
航はすぐに誰の仕業か検討がついた。

航)アイツや……

その瞬間、
青筋を立てるほど怒り心頭になり、
拳を床に叩きつけた。

正也)おい、何やっとんが。怪我するぞ

航)これ終わったら、ちょっこし出てくる

正也)なんや急に……まぁ、きりもええし、たまにはリフレッシュも必要やちゃ!今日はもう上がれま

航は昼食も食べず自宅に戻り、

もっとみる
【小説】連綿と続け No.47

【小説】連綿と続け No.47

会議室に通された侑芽は
黒岩と共に席に着き、
険しい表情をした副市長から問われる。

副市長)君が観光推進課の一ノ瀬さん?

副市長は50代半ばの中年男性である。
普段はまず会う事もない副市長に
萎縮してしまう侑芽。

侑芽)はい。一ノ瀬侑芽と申します。

副市長)ここに呼ばれた理由はわかっとる?

侑芽)いえ……

すると副市長の秘書が
パソコンを傾けて侑芽に見せてくる。
画面を覗くと市民を名乗

もっとみる
【小説】連綿と続け No.46

【小説】連綿と続け No.46

いつも通りの侑芽に、
騒ついていた心が穏やかになる航は、
彼女を迎え入れて、
すぐにギュッと抱きしめた。

侑芽はその胸に埋もれながら抱きしめ返す。
そして体を離した後、
持ってきた保冷バッグを持ち上げ

侑芽)今日、早く終わったので夕飯作ってきました!

航)おぉ。いつもありがと

侑芽はキッチンに立ち、
慣れた手つきで料理を皿に盛りつける。

最近はこうして
航に手料理を振る舞う機会が増えた。

もっとみる
【小説】連綿と続け No.45

【小説】連綿と続け No.45

その頃、
航は五箇山の秋祭りで使われる
獅子頭の修復作業を行っていた。

集中し、正也と確認をしながら細かい部分を補修し、
目の前の仕事と向き合っている。

あらためて紹介するが、
皆藤家がある八日町通りは、
瑞泉寺の表参道である。

この瑞泉寺の裏山は八乙女山という。
山の向こう側には庄川が流れ、
その上流を辿っていくと五箇山と呼ばれる山深い地域がある。

三角屋根の合掌造りで知られ、
山を隔て

もっとみる