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多様性〜人と森のサスティナブルな関係

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2021年出版『多様性〜人と森のサスティナブルな関係』に関する記事や書評を集めています。
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書評   「多様性」   by  藤森隆郎さん

書評 「多様性」 by 藤森隆郎さん

藤森隆郎さんは、1938年生まれ、日本を代表する森林生態学者で、国際的にも活躍をされた方です。「気候変動枠組み条約政府間パネル(IPCC)」が2007年にノーベル平和賞を受賞したことに貢献したとして、IPCC議長から表彰を受けられています。
2010年の日本森林再生プラン実践事業の際に、私は藤森さんと数回に渡って交流させていただきました。
藤森さんは、現役引退後も熱心な活動をされており、2015年

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【屋根型路盤作設による災害に強い道づくり】

【屋根型路盤作設による災害に強い道づくり】

林野庁による画期的なプロジェクトです。

https://www.rinya.maff.go.jp/.../kanto_presentation-83.pdf

水のマネージメントをしっかりと施した屋根型の森林基幹道は2010年来、北海道の鶴居村や岐阜県の高山市でモデル的に実践され、その機能性・耐久性・災害への強さが実証されていますが、林道や林業専用道路の作設規定では、いまだに正式な規格としては認

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花粉症対策としてスギ人工林の皆伐を推進する政策には科学的根拠がない(国民森林会議)

花粉症対策としてスギ人工林の皆伐を推進する政策には科学的根拠がない(国民森林会議)

3月14日に日本が誇る世界の森林生態学者・藤森隆郎さんとオンラインで対談イベントを開催しました。私がコロナ禍以来開催しているオンラインセミナーではじめて100名を超える申し込みがあり、大盛況で、嬉しいフィードバックもたくさん届いています。

対談のテーマはここ10年あまり日本で推進されている人工林の「短伐期皆伐造林政策」に関して、森林生態学と社会科学の観点から問題点を明示し、構造豊かな多間伐恒続森

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ドイツ視察セミナー 「世界最大の林業展KWFと南西ドイツの森林業・建築・グリーンインフラ・エコワイン」 2024年6月19日〜25日 (ツアー概要書)

ドイツ視察セミナー 「世界最大の林業展KWFと南西ドイツの森林業・建築・グリーンインフラ・エコワイン」 2024年6月19日〜25日 (ツアー概要書)

ドイツ視察セミナー 「世界最大の林業展KWFと南西ドイツの森林業と木材産業」
期間:2024年6月19日〜25日 (現地6泊7日)
開催場所:中部・南西ドイツ
主催者:Arch Joint Vision 社 代表:池田憲昭 https://www.arch-joint-vision.com
現地コーディネート・専門通訳・ガイド:池田憲昭
参加人数:5〜12名
セミナー料金:2450ユーロ(1人部屋

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ナンバーワンではなくオンリーワンを目指す

ナンバーワンではなくオンリーワンを目指す

巷の資本主義市場経済では、多くのプレイヤーが「競争」を原動力にナンバーワンを目指す。競争に勝つために、大半の人たちが有効だと考える方法は、「均質化」して「効率」を高めること。森での原木生産では、単一樹種の一斉林を造って畑のように管理する。木材加工の分野では、作る製品を数種類に限定する。そうすれば「生産性」が高くなり、価格競争に勝ち、利益率も高くなる、と考える。

しかし実際は、そう単純に物事は進ま

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「研究者は自分の垣根を超えて交流しなければならない」 —世界の森林生態学者・藤森隆郎さんと11年ぶりの再会

「研究者は自分の垣根を超えて交流しなければならない」 —世界の森林生態学者・藤森隆郎さんと11年ぶりの再会

今回の来日のハイライト。2021年に出版した私の『多様性〜人と森のサスティナブルな関係』に詳細で心のこもった素晴らしい書評を書いていただいた藤森隆郎さんに、つくば市で念願の再会を果たし、2人だけで2時間近く、親密に、日本の森のことを中心に、いろんな話をしました。

藤森さんの書評:
https://note.com/noriaki_ikeda/n/n0821d5634526?magazine_ke

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皆伐はもう怖くてやれないんです。

皆伐はもう怖くてやれないんです。

先週、林業から製材業、木造建築までトータルで行なっている会社の社長と従業員2名、ならびにそのパートナー会社の社長1人の計4名で日本から来独され、私がアレンジした南ドイツの森と木材クラスターの視察に参加されました。

その会社の社長は、現状の「一斉に伐って、植えて、育てて、また伐る」という畑作的な林業から、自然の力とプロセスを活用した近自然的な森林業へ転換することを考えられていて、森の視察では、特に

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雑木林

雑木林

日本では、「雑木林(ざつぼくりん)」という言葉が、材としてあまり価値がない広葉樹の森を指す言葉として、とりわけ戦後、林業政策的に流布しました。

世界大百科事典にもこう書かれています。

では「雑木」や「雑木林」の語源はどこにあるのか、気になったのでちょっと調べてみました。下記の帝京大学薬用植物園管理室 木下武司のサイトが詳しく書かれていて参考になると思いました。

http://www2.odn

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【谷や沢が多い日本では】

【谷や沢が多い日本では】

今回の熱海の土砂災害では、谷筋の窪地に埋められた盛土(土木工事の残土など)が主要な原因との推測がされている。また尾根を削って造成されたメガソーラーや、雨が降ると土砂を運ぶ川のようになる水を制御できない構造の林道との関連性も議論されている。

いずれも、雨が多く、繊細な地質と土壌の場所では、やってはいけない開発である。私が住むドイツでは、いずれの類の開発も、幸いなことに、法的に許されていない。

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近自然森林業の先端「リューベック・モデル」 —自然にほとんど気づかれないくらいに自然を利用する

近自然森林業の先端「リューベック・モデル」 —自然にほとんど気づかれないくらいに自然を利用する

現在中欧の森林業で推奨され実践されている近自然的森林業は、古くは山奥の農森家や共有地森での択伐施業の実践などに起源があり、学術的にはおよそ100前に、メラーやガイヤーといったパイオニアが基礎をつくりました。

今日では、枯死木や倒木を意図的にそのまま残すなど、自然のプロセスを最大限に活かして、森の複合生態的なバイタリティとレジリエンスを高め、より一層、エコロジーとソーシャル、エコノミーのバランスが

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ドイツ視察セミナー 【北ドイツ・リューベックの自然森施業と木材加工流通 —環境、社会、経済の融合】(5月15〜19日) — LIGNA、自然森施業「リューベック・モデル」、広葉樹材の地域加工・流通、ハンザ都市ハンブルク

ドイツ視察セミナー 【北ドイツ・リューベックの自然森施業と木材加工流通 —環境、社会、経済の融合】(5月15〜19日) — LIGNA、自然森施業「リューベック・モデル」、広葉樹材の地域加工・流通、ハンザ都市ハンブルク

Picture: Knut Sturm

森がもっとも瑞々しく美しい新緑の5月に、世界中から見学者が訪れる北ドイツ・リューベック市の革新的な広葉樹施業の聖地を中心に、視察セミナーを開催することにしました。

オンライン説明会を2回開催します。テーマ、企画に興味がある方、お気軽にご参加ください。

説明会① 3月12日(日)19時より
https://luebeck-naturwald.peatix

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「森林リトリート」 オンラインセミナー2月1日

「森林リトリート」 オンラインセミナー2月1日

「.....マルクスと私の違い。マルクスは人類を変えたい。私は個々の人間を変えたい」

ドイツの文豪ヘルマン・ヘッセの言葉です。

ヘッセは、「我がまま(自身の心の奥深くにある神聖なものに従うこと)」という心の羅針盤を持った人でした。彼の作品には、世界を変えるためには、個々人の心の持ち様が大切であるという思想が、共通のメロディとして流れています。

私たちの社会が持続するために必須となっているトラ

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セミナーシリーズ「続・広葉樹は雑木ではない」

セミナーシリーズ「続・広葉樹は雑木ではない」

2022年春に好評だったセミナーシリーズの続編を2023年1月中ばから2月始めにかけて開催します。日本の多様で個性ある広葉樹に光を当て、「雑木」という不名誉な呼称から解放することを試みます。今回は、広葉樹施業の実践者、広葉樹原木流通の立役者、苗木生産者、森林の道づくりの専門家でリトリート事業の構築者、森で養蜂と「癒し」の事業者、ナラ枯れの専門家を講師に迎えます。

科学的な知見から実務・実用的な話

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「公共善エコノミー」 〜 中欧でロングセラー、世界的な社会運動にも広がっている本を、日本語に翻訳しました。クラウドファンディングで支援者を募っています。

「公共善エコノミー」 〜 中欧でロングセラー、世界的な社会運動にも広がっている本を、日本語に翻訳しました。クラウドファンディングで支援者を募っています。

これまで学術論文や資料などの翻訳は頼まれて時々やっていましたが、本屋に並べられる一般書の翻訳は、初めてです。翻訳したい、翻訳する意義がある、たぶんうまく翻訳できる、と強く思ったので、2年前に著者に連絡をとり、岩手と宮崎の中小企業家同友会を通じて、意義を理解する出版社を仲介いただき、今年2022年末に日本で出版される、というところまで辿り着きました。
この本に出会ったきっかけは、毎年のように来欧し、

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