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資本主義を考える

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倫理資本主義の必要性と限界

倫理資本主義の必要性と限界

ドイツの哲学者であるマルクス・ガブリエルは、倫理資本主義の必要性を説く。

倫理資本主義とは倫理資本主義とは何か?

ガブリエルは、倫理を普遍的な価値と定義する。倫理は文化圏によって異なることのない普遍的な価値であるから、人類を結びつけることができるという。

人類の結びつきは、経済的な結びつきによって達成しているように思える。しかしながら、経済的な利害関係のみが人類の結びつきを表すのではないし、

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ジジェクのパンデミック論

ジジェクのパンデミック論

今般のコロナ禍下の市場のパニックは、「市場メカニズムに振り回されない世界経済を再組織化する差し迫った必要性を鮮明にしている」と指摘するのは、スロベニアの哲学者のスラヴォイ・ジジェクである。

ジジェクは、パンデミックを乗り越えるためには「完全な無条件の連帯と世界的に協調した対応が必要」であって、「それはかつて共産主義と呼ばれたものの新しい形でもある」と主張する。

共産主義の新しい形とはどのような

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地球が燃えている

地球が燃えている

世界的な環境活動家として一躍有名になった一人の少女がスウェーデンにいる。

名をグレタ・トゥーンベリという。

グレタは、2018年5月、学校に行くことを止めた。気候変動の危機を訴えるためのストライキだった。

グレタは考えた。

万事が順調だというふりを止めなければ、従来通りを続けてしまい、大惨事に突入するのだ、と。

じきになくなる将来のための勉強よりも、学ぶべき将来を残すために行動を起こすこ

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ぼくはミレニアル世代

ぼくはミレニアル世代

1981年から1995年までに生まれ、2000年以降に成人を迎えた人々をミレニアル世代といい、それ以降に生まれた人々をZ世代という。

ミレニアル世代は企業への忠誠心が低い?ニューヨークで執筆活動を行なっている佐久間裕美子の著書『Weの市民革命』では、ミレニアル世代は次のように紹介されている。

ミレニアル世代は企業に対する忠誠心が元来薄い。調査会社のデロイトが毎年行なっているミレニアルの動向を分

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自然災害を引き起こす異常気象の犯人

自然災害を引き起こす異常気象の犯人

漫画『ONE PIECE』の世界には、「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を目指すうえで重要な「偉大なる航路(グランドライン)」という航路がある。

グランドラインでは、季節・天候・海流・風向きのすべてがデタラメで、さまざまな超常現象が発生するのだ。

ところで、今年のわが家の夏の電気代は、昨年と比較して安かった。そう言えば、この夏はぼくの住む地域は雨が多く、ここ例年に比べて平均的に涼しかったよう

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食について考えると、資本主義の矛盾が見えてくる

食について考えると、資本主義の矛盾が見えてくる

国連は、持続可能な開発目標(SDGs)の2番目に「飢餓をゼロに」という目標を掲げている。「飢餓を終わらせ、食料安全保障と栄養改善を達成し、持続可能な農業を促進する」のだという。

『持続可能な開発目標(SDGs)報告2021』は、コロナ禍以前には、6億5,000万人が空腹になり、約20億人が食糧不安に苦しんでいたこと、さらにはこの数字が2014年以降増加していることを明らかにしている。

さらに、

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それでも、「この世界は生きるに値する」と言わなければならない

それでも、「この世界は生きるに値する」と言わなければならない

少子高齢化社会にあって、いまどこの企業も労働者の管理に苦労している。

年金制度の維持という社会的課題も重なり、企業は今後70歳までの何らかの雇用保障を行なっていかなければならない。

高齢者を雇用し続けることでポストに空きが発生せず、若い人を雇用することができない現状がある。

ところが高齢者は、加齢による体力や気力の衰えにも襲われ、若い頃のような十分なパフォーマンスを発揮できない。

そうなる

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眠れない夜には『モモ』を読む(2)

眠れない夜には『モモ』を読む(2)

前回はミヒャエル・エンデの『モモ』の登場人物の魅力と、テーマが「時間」であることを紹介した。

今回はテーマである「時間」をめぐって考えたことを述べてみたい。

時間とは、生きるということ浮浪児の少女モモは、持たざる者である。

衣食住を満足に得ることができないでいた。

服はボロボロ、住まいは円形劇場の一隅。食事はというと、円形劇場に集う親切な人びとからの差し入れで賄っていた。

そんな持たざる

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社会的共通資本(コモンズ)は復権できるか?

社会的共通資本(コモンズ)は復権できるか?

「現代社会における格差社会の原因及びその解決策を述べよ。」

大学入試や大学院入試に出題されそうな問いを立ててみる。

ぼくの答えはこうだ。

「原因は、本来、社会的に共有されているはずの資本が私的に所有されているからであり、それを本来の形に直していくということが解決策である。」

しかし、この解決策に実現可能性はあるか?

これが今回のテーマだ。

社会的共通資本(コモンズ)とは?社会的に共有さ

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脱成長社会の展望

脱成長社会の展望

止まることを知らぬ大量生産と大量廃棄。
減らない長時間労働と広がり続ける格差。
歯止めがかからない気候変動と環境破壊。

これらは資本主義の矛盾や限界と言われる。

だったら資本主義を再構築すればいい。

いや、資本主義の再構築では不十分だ。

資本主義に変わるものが必要ではないか?

資本主義のオルタナティブとして、いま「脱成長論」がにわかに注目を集めている。

「脱成長論」を学ぶことを目的に、

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資本主義の再構築

資本主義の再構築

気候変動や格差社会といった問題の根幹にあるのは、資本主義の矛盾だ。

今日、資本主義の矛盾を解決する考え方として、資本主義とは別の社会、資本主義の次の社会を構想する動きが注目を集めている。

目的意識は同じでも、脱資本主義や超資本主義というら考えとは別の思索がある。

「資本主義の再構築」という思索だ。

「資本主義の再構築」を提唱している一人が、ハーバード・ビジネススクールで経営論、戦略論の教鞭

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コミュニズムに可能性はあるか?

コミュニズムに可能性はあるか?

コロナ禍の不況にもかかわらず、世界的に見て富裕層は資産を増やしているらしい。

富裕層はますます富を蓄え、貧困層はますます生活が苦しくなっていく。

この現実に、ぼくらはどう向き合えばいいのか?

新型コロナウイルス感染症が発生した当初、この新たな感染症は人々を平等にするかのように思えた。

しかし現実に起きているのは、格差社会の拡大である。

残念ながら感染症は平等を実現する救世主ではなかった。

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サンデル先生、「実力も運のうち」ってどういうことですか?

サンデル先生、「実力も運のうち」ってどういうことですか?

社会的・経済的に成功している人について、多くの人びとは次のように考えることだろう。

彼/彼女らが成功することができたのは、それ相応の努力を重ねた結果なのだ、と。

実際に、トマス・J・スタンリー著『1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました』では、次のようなアンケート結果が紹介されている。

このように成功者の多くは、運よりも実力で成功したと考えており、成功するためには、精神的な鍛錬といっ

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つくられた格差-資本主義を考える

つくられた格差-資本主義を考える

アメリカのバイデン大統領は2021年4月28日、中産階級向けの社会保障拡充策を柱とする「米国家族計画」を発表した。

話題となったのは、富裕層向けの増税で1.8兆ドル(約200兆円)の財源を賄い、経済格差の是正を図るというものだ。

バイデン大統領はこのうち、年間所得が100万ドル(約1.1億円)を超える富裕層のキャピタルゲイン税(株式等の売買差益にかかる税金)を引き上げる方針だ。

また計画では

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