冷たい雨が降っている。

酷い夢を見た。

私は全身に汗をかいていて、シーツが水浸しになっている。月明かりでうっすらと時計の針が見えた。

ーー2時40分。

また、この時間だ。
私は悪夢を見ると決まって、この時間に起きる。

※

夜は孤独だ。

みんな寝ているから、この世界に存在しているのは、私だけ。一人。私一人。


寂しい。
思わず、叫びそうになる。

嫌！
誰か私を迎えに来て！

誰にも届くはずのない言葉を、私は胸の中で叫ぶ。
苦しくって、また寝付けなくなる。

※

私は瞼を閉じる。
すると、彼の息遣いが聞こえてくる。

思い出せば、じんわりと彼の温もりが蘇ってくる。
そして、うっすらと消えていく。

手のひらに乗っていたはずの大切なものが少しずつ透明になって消えていくあの感覚。

私は、すり潰したような呻き声を上げて啜り泣く。




※

「また会えるよ」
優しく彼は私に言う。

「次は、いつ？」
「うーん、まだ忙しいから直ぐには分からない。会えそうな日が分かったらまた連絡する」

「分かった。じゃあ何か分かったら教えて」

凛とした顔で私はあなたを送り出す。

私はあなたの好きな、強い女。
演じるうちに、もう慣れちゃった。

「行かないで......」


本当は彼に縋りついて止めたいのに、「じゃあね」と言われると、「うん」と答えてしまう。

また、私は嘘をついた。
本当は、ずっと触れていたい。

キィィィ、、、ガチャ。

扉の閉まる音は嫌い。

ただの薄い板でしかないはずのに、
私はこの音だけで寂しさで狂ってしまいそうになる。

私の頬を一筋の涙が伝う。

何度も誓った。
次こそは、「もう少しここにいて」と勇気を出して伝えるって。

※

彼は何を考えているのか分からない。
ときどきびっくりするほど冷たい時がある。

苦しい。

でも、私は彼が好き。
彼は優しいの。

私の心を満たしてくれる。
でも、寂しい。

どれだけ満たされようとも、それだけ彼が居なくなったとき、私は胸の真ん中がまるまるくり抜かれてしまったような息苦しさを感じる。

好きになればなるほど、私はおかしくなっていく。
重い女だと思われたくない。

あぁ、もうやめよう。

より好きになった方が負けなんて、本当によく分からない。

なんで、どうして？
私は、彼を好きでいたい。

なんでダメなの？
大好き、が一番いいに決まってるじゃない。

※

私は夢を見る。

彼がまだすぐ側にいた頃の夢を。
彼がまだ、私に会いに来てくれていた頃の夢を。

忘れてしまえば、記憶はどんどん美化されていく。

苦しかった記憶が、無かったものになっていく。
代わりに、嬉しかった記憶、愛していた記憶だけが鮮明に残っている。

遠すぎると綺麗になって、近づきすぎると真っ暗になる。

人との距離は、相手が少し汚く見えるぐらいがちょうどいい。

※

私は明日の仕事のことは考えないようにしようと、スタンドライトをつけて本を読み始めた。

一人の夜は長い。