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某所のポスドク手話/言語学研究者。子が1人夫が1人。こちらには長めの文章を書いたものを…

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某所のポスドク手話/言語学研究者。子が1人夫が1人。こちらには長めの文章を書いたものをとりあえず集めておきます。 最近の研究については→https://researchmap.jp/yufuko/

マガジン

  • 日がな一日言語学

    認知言語学者の日常的ことば遊び場的ななにか

  • 丸山正樹/デフ・ヴォイス考察

    2023年12月にNHKドラマ化された丸山正樹(2011)「デフ・ヴォイス」についての考察など

  • 博士の異常に○○な子育て

    とある先輩に、FBに書いていた子供の観察を「博士の異常に冷静な子育て記」といわれたのですが、冷静であるよりは親ばかであるように自身では感じている。 ぼちぼち記録を残していこうと思ってまとめようとしてはいるのだが、そんなに暇じゃないのでありました。

  • ニューメキシコ滞在記 with 1歳児

    砂漠の都市、メキシコ国境のアメリカ、アルバカーキ滞在記。

記事一覧

手話に興味を持った人のための和書本棚

長屋さんの言語学書紹介がおもしろかったので,私も手話に関する本を少し整理してみました。 各見出しの一番上が基本図書,それを読んでから次に進むみたいな感じで行くと…

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1日前
54

まずいトローチに目を覚まさせられる

伊丹空港を経由して帰ってくると大抵変な風邪になる。なんか相性が悪いんだろうか…… そういえば、2019年の12月の日帰り阪大授業のあと、今思えばあれはコロナ?って風邪…

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1か月前
4

情報保障と合理的配慮の関係 その2

前回からの続き。 合理的配慮の義務化という急ピッチな展開 もうこの4月から、合理的配慮はどんな事業者に対しても義務化します。といって、いろいろな発信が行われてい…

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2か月前
14

情報保障と合理的配慮の関係 その1

実は、情報保障については、公的な支援として、「意思疎通支援」という制度がありますが、これは生活に必要なものに限られます。病院への通院や、子の学校PTA、役場での手…

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2か月前
30

「3000万語の格差」

結構前に買っていたけれども、さらっと見て放置していた本。夏の出張の時にも言及されたので読まなきゃ読まなきゃと思っていて、つい後回しになっていた。とはいえ、必要な…

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3か月前
8

ギフテッドに対する誤解と理解不足

先週、ギフテッドに対する支援が失敗しましたという記事が出ていてXでバズっていた。 10歳そこらの子が、高専生レベルだからイノベーションというほどではない できると…

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3か月前
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デフ・ヴォイス:小説とドラマのテーマの違いについて

「デフ・ヴォイス」後編は、草彅剛さんが、船越英一郎に見えるシーンが多くて、とてもよかったですね(ただの火サスファンのおばちゃんの言←言うほど見てない)。鬱屈した…

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4か月前
59

手話を見ていると聴覚の回路がオフになるような感覚

先週から界隈が祭りの「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」で本物のろう者がたくさん画面に出てくるドラマをNHKでやっていたのだけれど、制作陣は「衣擦れの音」まで拾って…

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4か月前
9

文化の盗用をしないために—ご都合主義を乗り越えろ

ドラマ「デフ・ヴォイス」が終わり、祭りのあと。いろいろ思うところはあるが、気を取り直して、「文化の盗用」でなく「社会問題の提起」を選んでくれたNHKドラマ制作陣に…

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4か月前
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手話小咄:聴者の手話学習者の私の目と映像メディア

今年もやってきました、まつーら先生主催のアドベントカレンダー「言語学な人々」2023です。「言語学な」話をどうしようと思いましたが、そういえば昨日の「日本手話は顔め…

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4か月前
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デフ・ヴォイス(4):愛想のない人ですね?

今まで、手話が出てくるドラマで「なにこれ」となっていた大衆向け作品には、歴史がある。長い間、聞こえない=孤独=手話 みたいな。手話を孤独のシンボルとしてつかおう…

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4か月前
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デフ・ヴォイス(3):いじけんぼ荒井とエスノグラフィー準拠のストーリー展開

去年流行した手話を扱ったドラマのご都合主義が目につく、という話を今年の正月に書いていた。誰のための「障害者の表象」なのか、読み解いていくと「孤独のアイコンとして…

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4か月前
116

デフ・ヴォイス:「ただの本物」益岡さんと、荒井の通訳技能を見せる

12年もの間「鬼が笑う」と思いながらもずっと待ち望んできた「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」がついにドラマ化され、先週12月16日に前編が放送されました。今日12月23…

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4か月前
386

ドラマ版デフ・ヴォイス待機中

ついに1週間後に、10年以上前から待っていたデフ・ヴォイスのドラマが放映される。 私たち、ずーっと待ってたね。2011年の夏にネット立ち読みを読んで、次の日には買って…

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5か月前
67

海外出張覚え書き2

前回の記事(4年前のだ) コロナ後になり、もはや旅の仕方もアップデートがあったので覚え書きをば。 ESTA アメリカ入国に必要な、ビザ不要で入国できる仕組み。ビザを…

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9か月前
4

手話通訳付きオンライン会議覚え書き

手話通訳付き対面発表覚え書きが割と好評だったのでオンラインのやつも書いておく。 1. 通訳者を選定前回、通訳の選定が何より大事という元も子もないことを一応最後に書…

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10か月前
4
手話に興味を持った人のための和書本棚

手話に興味を持った人のための和書本棚

長屋さんの言語学書紹介がおもしろかったので,私も手話に関する本を少し整理してみました。

各見出しの一番上が基本図書,それを読んでから次に進むみたいな感じで行くと良いかなと思います。

手話の研究を知る

手話言語学のはじまり,そしてギャローデット大学で起こった「デフ・プレジデント・ナウ」という公民権運動について,つまりアメリカ手話話者の自己決定権を得るための運動に繋がるストーリーを読むことができ

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まずいトローチに目を覚まさせられる

まずいトローチに目を覚まさせられる

伊丹空港を経由して帰ってくると大抵変な風邪になる。なんか相性が悪いんだろうか…… そういえば、2019年の12月の日帰り阪大授業のあと、今思えばあれはコロナ?って風邪になってた。今回は喉、しかも下顎の方が腫れて眠れないほどの変な症状。熱が上がるでもなく…。とにかく気が散るほど痛い。寝付きにくくなるくらいには痛い。

喉が痛すぎるのでかかりつけ医にかかったら「まずいけど効くトローチ要る?」と聞かれ、

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情報保障と合理的配慮の関係 その2

情報保障と合理的配慮の関係 その2

前回からの続き。

合理的配慮の義務化という急ピッチな展開

もうこの4月から、合理的配慮はどんな事業者に対しても義務化します。といって、いろいろな発信が行われている。「努力義務」だと「努力はしました〜」で終わるから実効性がないことが問題視されてきたのだ。さらにいうと「過重負担」もやらない理由になるので、問題視されている。

とはいえ、事業者側に立てば、過重負担の記述がなければ、際限なく対応を迫ら

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情報保障と合理的配慮の関係 その1

情報保障と合理的配慮の関係 その1

実は、情報保障については、公的な支援として、「意思疎通支援」という制度がありますが、これは生活に必要なものに限られます。病院への通院や、子の学校PTA、役場での手続きなど。これは障害者総合支援法の地域生活支援事業というくくりで行われます。この「意思疎通支援」は「公的派遣」と呼ばれており、自己負担ゼロで派遣してもらえます。

ただし、定期的に学校に通ったり職場に行ったりすることには使えないところが多

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「3000万語の格差」

「3000万語の格差」

結構前に買っていたけれども、さらっと見て放置していた本。夏の出張の時にも言及されたので読まなきゃ読まなきゃと思っていて、つい後回しになっていた。とはいえ、必要なのでようやく読んだ。

タイトルの「3000万語の格差」というのは、この人がやった研究ではなく、ハートとリズリーという研究者が、乳幼児期の子どもの家庭に定期的に記録を取りに行ってみて、親が専門職、普通、貧困(ただし定期的に家に行けるくらいに

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ギフテッドに対する誤解と理解不足

ギフテッドに対する誤解と理解不足

先週、ギフテッドに対する支援が失敗しましたという記事が出ていてXでバズっていた。

10歳そこらの子が、高専生レベルだからイノベーションというほどではない

できるという意識が高すぎて、ちょっとでもできないとすぐ諦めてしまう

みたいな記事に対して、ギフテッドに村でも焼かれたんですか? というコメントがずらり。

どうも一番バズってたのはこれかなあ。

そもそも、ギフテッドというのは、知的能力が年

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デフ・ヴォイス:小説とドラマのテーマの違いについて

デフ・ヴォイス:小説とドラマのテーマの違いについて

「デフ・ヴォイス」後編は、草彅剛さんが、船越英一郎に見えるシーンが多くて、とてもよかったですね(ただの火サスファンのおばちゃんの言←言うほど見てない)。鬱屈した中年おじさんだと思ってたら、突如探偵になる草彅さん、もっと見たい。美和ちゃんと遊んでるとことのギャップもよかった。原作で訴えたかったろう者の不遇はだいたいカバーされていたし、2.5時間でよくあそこまでまとめたなあというのが正直な感想だ。10

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手話を見ていると聴覚の回路がオフになるような感覚

手話を見ていると聴覚の回路がオフになるような感覚

先週から界隈が祭りの「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」で本物のろう者がたくさん画面に出てくるドラマをNHKでやっていたのだけれど、制作陣は「衣擦れの音」まで拾ってろう者のいる空気感を伝えようとしているようだ。

しかし、不思議なことに、「よし、それを聞いてやるぞ」と思ってテレビの前に座っていて、音量もいつもより大きくしているはずなのに、それはまったく記憶に残らない。かなり集中して見ていると思うの

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文化の盗用をしないために—ご都合主義を乗り越えろ

文化の盗用をしないために—ご都合主義を乗り越えろ

ドラマ「デフ・ヴォイス」が終わり、祭りのあと。いろいろ思うところはあるが、気を取り直して、「文化の盗用」でなく「社会問題の提起」を選んでくれたNHKドラマ制作陣に感謝したい。そして、手話指導の米内山陽子さん(コーダ)のnoteがとてもよくて。もう何回も読んでいる・

舞台のひとつとなっている手話通訳学科の社会学の先生としては、ある程度この「文化の盗用」については授業のネタ帳がある(私は社会学者じゃ

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手話小咄:聴者の手話学習者の私の目と映像メディア

手話小咄:聴者の手話学習者の私の目と映像メディア

今年もやってきました、まつーら先生主催のアドベントカレンダー「言語学な人々」2023です。「言語学な」話をどうしようと思いましたが、そういえば昨日の「日本手話は顔めっちゃうごくやつです」みたいな解説は言語学ベースでした(かなりかみ砕いてますが)。興味がある方は是非。

今年は、「言語学な」があっという間に埋まったので、別館(言語学なるひとびと)もあります。

去年もドラマの話を書いているから、ドラ

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デフ・ヴォイス(4):愛想のない人ですね?

デフ・ヴォイス(4):愛想のない人ですね?

今まで、手話が出てくるドラマで「なにこれ」となっていた大衆向け作品には、歴史がある。長い間、聞こえない=孤独=手話 みたいな。手話を孤独のシンボルとしてつかおうとしてきた。

そして、俳優が手話を上手く使っている(ように見える)のを、ファンたちが賞賛する。私の推しは手話も上手。手がセクシーとかなんとか。うーん困った。

そこを越えるための試みを、「デフ・ヴォイス」の制作陣はしているのに、なぜかこの

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デフ・ヴォイス(3):いじけんぼ荒井とエスノグラフィー準拠のストーリー展開

デフ・ヴォイス(3):いじけんぼ荒井とエスノグラフィー準拠のストーリー展開

去年流行した手話を扱ったドラマのご都合主義が目につく、という話を今年の正月に書いていた。誰のための「障害者の表象」なのか、読み解いていくと「孤独のアイコンとしての手話」と「業界関係者へのアピール」に見えてちょっとなーと。じゃあ「デフ・ヴォイス」はそれとどう違うのよ? というのを書いてみよう。

丸山正樹の謎「デフ・ヴォイス」の原作者の丸山正樹さんは、一体どうしてこんな小説が書けたのだろう? という

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デフ・ヴォイス:「ただの本物」益岡さんと、荒井の通訳技能を見せる

デフ・ヴォイス:「ただの本物」益岡さんと、荒井の通訳技能を見せる

12年もの間「鬼が笑う」と思いながらもずっと待ち望んできた「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」がついにドラマ化され、先週12月16日に前編が放送されました。今日12月23日には後編が放映されます。原作本を読むのを強くお勧めしています。一応前編までの情報で書いてみます。

「デフ・ヴォイス」という原作小説は、「ろう文化」の記述に準拠して練り上げられたミステリー小説で、作家・丸山正樹の学究肌なところが

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ドラマ版デフ・ヴォイス待機中

ドラマ版デフ・ヴォイス待機中

ついに1週間後に、10年以上前から待っていたデフ・ヴォイスのドラマが放映される。

私たち、ずーっと待ってたね。2011年の夏にネット立ち読みを読んで、次の日には買って、そして読み終わっている私……

そして、このあたりで、すでに我々、日本手話関係者である岡さん、木村晴美先生とドラマ化の話をしているときた。

そして、確かに人気のある俳優である草薙剛さんが主演で、ろう者や難聴者が当事者の演技で、ド

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海外出張覚え書き2

海外出張覚え書き2

前回の記事(4年前のだ)

コロナ後になり、もはや旅の仕方もアップデートがあったので覚え書きをば。

ESTA

アメリカ入国に必要な、ビザ不要で入国できる仕組み。ビザを取った人は不要。昔からあるけど、相変わらずオフィシャルのサイト以外の代行業者が蔓延している。だまされないように。オフィシャルアプリがあるので、そっちの方がいいかもしれない。(ただ、入力はPCからのほうが簡単)

Visit Jap

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手話通訳付きオンライン会議覚え書き

手話通訳付きオンライン会議覚え書き

手話通訳付き対面発表覚え書きが割と好評だったのでオンラインのやつも書いておく。

1. 通訳者を選定前回、通訳の選定が何より大事という元も子もないことを一応最後に書いたけど、オンライン会議の場合、通訳者の環境は通訳者が整えるしかないので、オンライン会議をやり慣れている人にお願いするのがいいです。

オンライン会議? やったことないけど、どうしてもというなら対応しますよ、という人にお願いすると、

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