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エッセイ集

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ほろ苦い恋の味がした

ほろ苦い恋の味がした

この世界は嘘と本当で成り立っている。誰かが本当だと思っていたことが嘘だったり、嘘だと思っていたことが本当だったりする。誰かを疑って辛くなったり、誰かを信じて安心したりして、笑みを浮かべる人や涙を吞む人が無数に散らばるのがこの世界だ。

信頼を築く行為は、人間関係において非常に重要なものとなる。逆に人を騙して欺き続ける人間は、いつかどこかでしっぺ返しを食らう。嘘など必要ないと思いはするものの、やさし

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なんとかなるさ、なんとかなるよ

なんとかなるさ、なんとかなるよ

朝、目が覚めるといつも隣でスヤスヤ寝ているはずの猫がいなかった。そうだ。僕は今日から入院するんだった。昨晩、姉に猫を預けたのである。いつもは深夜に暴れまわる猫と格闘しているのに、たった1人で物音すらしない部屋でただ眠りに落ちた。

猫がいないだけで、ありふれた日常が非日常になった。それはとても儚くて寂しい。いつもあるはずのぬくもりがそこになく、ただそれだけで、どこか物足りない感覚になって、猫のぬく

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おばあちゃんのサンドイッチ

おばあちゃんのサンドイッチ

携帯のアラームが「ブーブー」と鳴るいつもと変わらない普段どおりの朝。寝ぼけ眼でやけに音量の大きいアラームを手を伸ばして止めた。そのまますぐ起きるかというと、30分近くはベッドでだらだらしている。すると、猫がお腹の上に乗ってきた。ご飯を寄越せとでも言わんばかりの顔で、こちらの顔をクリッとした目でのぞいている。

まだ起きたくないのに重い体を引きずって、猫のためにキャットフードを容器の中に入れた。その

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ろくでもない女の羨望

ろくでもない女の羨望

深夜25時、「会いたい」の四文字につい浮き足立って、当たり前のようにタクシーに飛び乗る。都合のいい女だと理解しつつも、都合のいい返事しかできない自分に飽き飽きしては、そんな自分も悪くないと無理矢理自分を納得させる。世間的な常識を持ち合わせた人なら絶対に深夜に呼び出すような真似はしない。それに本当に会いたいのであれば、呼び出すのではなく、自分から相手の元に行ってしまえばいい。それなのに、男って生

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恋の「謎解き」はいつも難解で

恋の「謎解き」はいつも難解で

運命だと思った人が運命じゃなかったり、好きでもない人に好かれてしまったり、恋はなにかとうまくいかない場合が多い。それに運命など当人同士がそう思いたいだけのただの錯覚なんだろう。運命だと思い合うことで絆を深めていく。そして終わりを迎えた瞬間に、また新しい運命の人を探し始めるのがオチなのに、運命をいとも簡単に信じてしまう人間は愚か者なんだろう。

いつか終わりが来ると知りながら人は簡単に恋に落ちていく

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恋愛のすべてはMr.Childrenから教わった

恋愛のすべてはMr.Childrenから教わった

「ただのクラスメイト」そう呼び合えたあの頃はa long time ago

Mr.Childrenの「クラスメイト」のように、僕たちはただのクラスメイトだった。でも、恋に落ちて、その恋が終わった瞬間に、二人はただのクラスメイトではなくなった。

恋に落ちたのはどちらからだったかはもう覚えていないけれど、二人の思いが一度重なった事実は、いまでも鮮明に覚えている。好きだからすれちがい、嫌いになりたく

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僕らの青春は終わらない

僕らの青春は終わらない

先日、高校時代の友人と会った。10代の青春を共にした仲間たち。楽しいことだけでなく、喧嘩したりもして、酸いも甘いもたくさん一緒に味わってきた。

「俺らもう出会って10年以上経つんだよな」

僕らの出会いは15歳。高校を卒業してから10年以上の月日が経つ。いまは別々の道を歩んでいるけれど、こうして定期的に会えるのはどう考えても幸せだ。

毎日のように顔を合わせていたあの頃は、たしかに青春そのものだ

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あの頃、僕らは笑い合っていた

あの頃、僕らは笑い合っていた

いつの間にか終わっていた恋。ずっと笑い合っていたあの頃がまるで嘘みたいに、出会う前、いや、それ以下の関係に成り下がった。一緒にいるという願いは同じだったのに、少しのすれ違いがこの恋を終わらせた。どちらかが折れればすぐに解決するような問題。それでもお互いに引けない状態になったのはたしかに事実だ。

ずっと結婚願望を抱いていた彼女と結婚願望がまったくなかった僕。ゼクシィを読んで、将来の結婚生活を想像し

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ずっと主人公になれなかった君へ

ずっと主人公になれなかった君へ

鏡の前に映る自分。いつもよりもすごく疲れている顔をしているのがわかった。目の下のクマは日に日に悪化している。唇はカサカサで、頬も少しばかり痩せている。なんだろう、顔に生気と呼ばれる存在がない。でも、生きている感覚というものはちゃんとあった。

鏡の前に映る自分をもう一度見る。一粒の雫が頬を伝う。綺麗な直線で落下する雫は、どこまでも落ちていきそうな勢いだ。これは何に対する雫なのだろうか。悲しみか、そ

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たとえもう2度と会えなかったとしても、思い出せる人がいることは幸せなのかもしれない

たとえもう2度と会えなかったとしても、思い出せる人がいることは幸せなのかもしれない

あるときは毎日のように、顔を合わせていたのに、別れがやってきた途端に、もう2度と会わなくなってしまった人がたくさんいる。いまもたくさんの人に囲まれているから毎日が幸せなんだけれど、ふとしたきっかけで、もう2度と会わなくなった人たちとの思い出が蘇ってくる。

別れの中には悲しい別れもあるけれど、学校の卒業とか、会社を退職とかある種の卒業をきっかけに別れてしまった別れの方が多いような気がする。卒業のタ

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亡くなったおじいちゃんの夢を見た

亡くなったおじいちゃんの夢を見た

昨日、おじいちゃんと一緒に過ごす夢を見た。子どもの頃の夢だ。若かりし頃のおじいちゃんに引き連れられて、お菓子を一緒に選んでいる。おじいちゃんの夢を見た理由は、5年前の8月におじいちゃんが亡くなったからだと思う。8月になるたびに、亡くなったおじいちゃんの夢を見る。

おじいちゃんはいつも僕を褒めてくれた。そして、僕のやりたいことを全力で応援してくれた。はじめて恋人ができたときもおじいちゃんに報告した

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浅田家の末裔

彼女と結婚して15年の月日が経つ。結婚10年目までは良好な関係だった。いつからか会話が弾まなくなり、喧嘩も増えてしまった。マンネリ化してしまっているんだろう。仕事をして、家に帰って会話のない食卓を2人で囲む。その繰り返しの中で、少しずつ歯車は狂っていった。

どうすれば2人の関係は修復するのだろうか。いろいろと模索してきたけれど、いまのところどの手段も役に立っちゃいない。今日もうまくいかなった。後

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失恋が人を成長させるって話は本当だと思う

失恋が人を成長させるって話は本当だと思う

誰かを好きになる。

恋は報われる経験よりも、報われない経験のほうが多いのかもしれない。いま恋が報われている人も、それが泡のように消えてしまう可能性も否めない。

だからこそ恋が終わらないように、誰もがお互いに相手を思いやっている。生まれも育ちもちがう2人が懸命に寄り添う姿は、外から眺めているだけでいいなと思ってしまう。恋人がいないことに、焦りなんてないんだけれど、ずっと1人のままはさすがに寂しす

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「行動がすべて」って言葉の意味はわかるけど、じゃあ実際どうやって行動すればいいんですか?

「行動がすべて」って言葉の意味はわかるけど、じゃあ実際どうやって行動すればいいんですか?

学生時代は「教育界を変える」みたいな大きな夢があった。夢を叶えるために、教員免許を取得したのに、内側からでは教育は変わらないと教育実習で感じ、別の角度から教育を変えるために、就職を選んだ。

忙しい日々の中で、いつのまにか夢を忘れたどころか、「教育界を変える」は自分の夢ではなくなっていた。いまでは教育界を変えたいとはまったく思わないし、夢を追うために必死になっていたあの頃を懐かしく感じてしまう。

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