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映画『春画先生』をみる。

「ファルコン・レイク」以来となる大阪ステーションシティシネマです。

日本における春画の始まりについては、諸説ある。中国から、医学書の一部(正確には房中術の解説図)として伝えられたのが平安時代、そこから室町〜江戸時代にかけて少しずつ庶民の間に広まったとされている。性的題材ではありながら、時には災難除けのお守り代わりとして、あるいは人を笑わせる「滑稽な絵」として姿形を少しずつ変容させながら長い歴史を紡いできた。

ところが京保7年(1722年)「春画は風紀を乱すもの」だという理由から初めて公権力が介入したことをきっかけに、春画は"わいせつ"の対象物へと変化。西洋文化の大きな波が押し寄せた明治時代には厳しい規制の標的となった。本作は映倫審査でR15+に指定され、商業映画としては日本映画史上初めて無修正の浮世絵春画がスクリーン上映される。いわば「初物」作品。

しかしこういった歴史認識あるいは春画の知識はあまり入れ過ぎずに、割合まっさらな状態で鑑賞されることを強くお勧めしておきたいです。あるいはカップルでの鑑賞、パートナーとの鑑賞に関しましては厳しく注意喚起しておきたい。何かこう、行き違いが起こってしまっては大変ですからね。葛飾北斎といったらそりゃあ富嶽三十六景でしょ、そのくらいで十分楽しめる。

内野聖陽演じる春画研究家・芳賀一郎は、行きつけの店では「春画先生」の愛称で親しまれる存在だった。店で働く春野弓子(北香那)はある日、鑑賞のイロハを教わろうと彼の元を訪ねる。春画への偏愛っぷりを共有できる芳賀という存在にもまた次第に恋心を抱くようになるのだが…亡くなった芳賀の妻に瓜二つな一葉(安達祐実)や編集者の辻村(柄本佑)の登場で、状況は一変。

空色Tバック。へんちくりんなサングラス。鰹節。回転ベッド。蝋燭。裸足に目隠し。甲冑。謎の黄色い飲料。映画全体が一つの"笑い絵"になっているいわば「入れ子構造」であることは伝わったが、しかし後半から一体我々は何をみせられていたのだろうか。隣のスクリーンでは丁度、岩井俊二の新作が上映初日を迎えている。すずちゃんのファンが大勢来てたことでしょう。

「春画の映画だって」スクリーン入口のポスターを指差しながら嘲け笑った青年が一人いた。しかし主宰もまた随分と偏屈を拗らせたよな人間ですから正直、こちらを選んで大正解でしたと豪語しておきます。三の線の内野さんが大好きですし、情緒のぶっ壊れた北香那さんの芝居も底抜けにキュートで佑さんの演じる"妖艶なのだけどテキトーな人間像"ももはや職人芸の領域。

完璧な人間なんていない、それにしたって変人の巣窟過ぎるのではないか。小津安二郎的画づくり、あるいは鈴木清順の大正浪漫三部作を彷彿とさせる情緒があって。日活ロマンポルノの名手・白川和子を、家政婦役に抜擢するところまで含め確信犯的な一本。評価はまさに賛否真っ二つといった様相。塩田昭彦監督自身の"フェティシズム"を芳賀に重ねてみることも可能かと。

ゲラゲラ笑いながらみてましたがそれもそれで癖か何かと勘違いされそう。

(※追記。11月にも春画にまつわる映画が公開されるようですよ…!!なおR18)


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