滝上湧子(たきがみ わきこ)

歴女のライター&編集者。取材をきっかけに台湾を訪れて以来、台南や高雄などの南部と、日本…

滝上湧子(たきがみ わきこ)

歴女のライター&編集者。取材をきっかけに台湾を訪れて以来、台南や高雄などの南部と、日本統治時代史に心ひかれて現在に至ります。noteは台湾と歴史記事がメイン、旅や雑記メインのアメブロ「海王星の魚座だより」もよろしくお願いします。◎お仕事のご依頼はお気軽にお問合わせください。

マガジン

  • たいわんBOX

    現代の台湾に関する記事のまとめ=歴史テーマは入っていません(別のマガジンに収録)。台湾旅行の参考にしてほしいもの、私が台湾滞在中に感じたことなどを、不定期に増やしていきます。読めば、台湾にもっと行きたくなるかも?

  • 煩悩喫茶Agua(アグア)

    ポルトガル語で「水」という名の小さな喫茶店です。ボサノバの名曲に包まれて、ゆったりとしたひとときをどうぞ。  心の中に・もやもや ・ぐるぐる がたまっている方は、特に歓迎いたします。時には店主が、日々の想いをつぶやくことも。当店でお過ごしの時間が、お客様の心も潤すことができましたら幸いです。

  • タキガミ式★旅の玉手箱

    noteは歴史がメインですが、旅にまつわる記事はこちらにまとめました。思い出深い旅、旅にまつわるエッセイなど、今後も不定期に加えていくので、よろしくお願いします。

  • 代書筆商人風

    台南北西部の善化で1907年に生まれ、2013年に106才の生涯を閉じた台湾人の回顧録の聞き書き。2008年に台湾で出版された同書を、私が日本語に訳し、解説を付けました。一庶民の目から見た日本統治時代から戦後、そして現代の台湾の移り変わりを、わかりやすく紹介しました。

  • 日治台湾よもやま話

    私のライフワークである日本統治時代の台湾史に関する記事のまとめです。歴史の話といっても、気軽に読めるテーマと内容ばかり。歴史はちょっと苦手・・・という方も、ぜひのぞいてみてください。今後も不定期に増やしていきます。

記事一覧

アメブロで、4月に行った滋賀県の旅行記を始めました。いずれそのダイジェスト版を、noteでもご紹介する予定です。写真は竹生島のもの。竹生島、比叡山、長浜の子供歌舞伎など桜と好天に彩られて良い旅でした。

うるわしき台湾東部を想う

日本ほど多くはないものの、台湾も世界有数の地震大国です。特に東部、今回も起きた花蓮(かれん、現地読みでホワーリエン)は多発地帯。「台湾で地震」というニュースを耳…

煩悩喫茶Agua「恨む、憎むはダメですか?」

いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ。 ご注文:アイスコーヒーとバナナパンケーキ 熟したバナナをつぶして生地にたっぷり混ぜたパンケーキは、タイの離島リゾートで初…

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煩悩喫茶Agua「わたしがフリーライターになるまで」

前回の「やりたいことがわかりません」のお客様のご要望に応えてのお話になります。 私の本業はフリーのライター兼編集者です。この仕事についたきっかけをよく聞かれま…

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煩悩喫茶Agua「やりたいことがわかりません」

いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ。 ご注文:レモンティーとサバラン。 ラム酒入りシロップをたっぷりしみこませたサバランは、私がたぶん一番好きなケーキです。シ…

煩悩喫茶Agua「あの子のために泣いてもいいですか?

いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ。 ご注文:アメリカンとチーズサンド。サンドイッチは他に、卵とコンビーフもございます。 「中身は、きゅうりとチーズだけでしょ…

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煩悩喫茶Agua・店主のつぶやき「死刑になりたいあなたへ」

 予報では「昼過ぎから」といっていた雨は、お店を開ける10時頃から降ってきました。窓から外をのぞくと、あちこちに水たまりができ始め、街路樹は大きく揺れています。こ…

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煩悩喫茶Agua「あきらめがつきません」

いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ。 ご注文:ももジュースとバタートースト 「ぼく、果物ではももが一番好きなんです。もものジュースを出すところなんて珍しいです…

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煩悩喫茶Agua「マウントを取られます」

いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ。 ご注文:ブレンドとチェリータルト。アーモンドがほのかに香る台の上に、卵の風味豊かなカスタードクリームと、みずみずしいダ…

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遠野で体験した不思議な出来事

前回の「煩悩喫茶Agua」で、岩手県の遠野についてふれましたが、2023年6月に、私は初めてこの町を訪れました。伝説やスピリチュアル系好きなので、ずっと前から行きたかっ…

煩悩喫茶Agua「なぜか運が悪いんです」

いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ。 ご注文:オムライスのランチセット。今はやりの卵トロトロ型ではなく、薄焼き卵でケチャップライスを包んだオーソドックスなタイ…

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喫茶開店のお知らせ

 このたび、Agua(アグア)という名の喫茶店を始めました。 店名はポルトガル語で「水」。店主の好きなボサノバの名曲『Agua de Beber(邦題:おいしい水)』から取りまし…

代書筆20・完結 孫江淮氏の思い出

孫氏が2013年に亡くなって、早10年になります。  初めてお会いした時の印象は、今なお鮮烈です。100才越えとは信じられない体格と若々しさ(髪が真っ白じゃない…

代書筆19 百歳長寿の秘訣

 私は今年で100才になる(2007年当時)。台湾ではここまでの長寿は、わりと珍しいので「めでたい人」と呼ばれる。私の長生きの方法は、実はとても簡単だ。つまり「…

代書筆18 わが師匠・広瀬秀臣

著者・孫氏の師匠だった日本人  私の代書業の師匠・広瀬との関係は深い。 広瀬は長く変わったヒゲを生やしていた。彼は利口な猫を飼っており、とてもかわいがっていた。…

代書筆17 二二八事件

*二二八(に・に・はち)事件は、「戦後台湾における最大の闇」といわれる出来事です。 その時善化では  事件が起きた時、私は村民代表会の主席をしていた。民国35(…

アメブロで、4月に行った滋賀県の旅行記を始めました。いずれそのダイジェスト版を、noteでもご紹介する予定です。写真は竹生島のもの。竹生島、比叡山、長浜の子供歌舞伎など桜と好天に彩られて良い旅でした。

うるわしき台湾東部を想う

うるわしき台湾東部を想う

日本ほど多くはないものの、台湾も世界有数の地震大国です。特に東部、今回も起きた花蓮(かれん、現地読みでホワーリエン)は多発地帯。「台湾で地震」というニュースを耳にして、「また花蓮ではないか」と思うと半分以上は当たってるぐらいです。

 花蓮に対する私の印象は、「山と岩とワンタンの町」。
台湾島の中央部には、この島の背骨というべき大山脈が走っています。その山脈には富士山以上の高山がいくつもあるのだか

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煩悩喫茶Agua「恨む、憎むはダメですか?」

煩悩喫茶Agua「恨む、憎むはダメですか?」

いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ。

ご注文:アイスコーヒーとバナナパンケーキ

熟したバナナをつぶして生地にたっぷり混ぜたパンケーキは、タイの離島リゾートで初めて食べて以来、私がよく作るおやつです。お好みで、ゆるく泡立てた生クリームをお付けできますが、いかがですか?

 30才前後と思われるその女性のお客様は、小さな声で「じゃ、少し」と答えました。そして召し上がっている間もその後も、スマホも

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煩悩喫茶Agua「わたしがフリーライターになるまで」

煩悩喫茶Agua「わたしがフリーライターになるまで」

前回の「やりたいことがわかりません」のお客様のご要望に応えてのお話になります。

私の本業はフリーのライター兼編集者です。この仕事についたきっかけをよく聞かれますが、「ずっと目指していたんでしょう?」「夢をかなえたのでしょう?」と言われることはもっと多いです。ところが、むしろその逆。こうしてライターになってしまったのが、自分でも不思議です。

学生時代の私は、マスコミ関係者が嫌いでした。テレビ

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煩悩喫茶Agua「やりたいことがわかりません」

煩悩喫茶Agua「やりたいことがわかりません」

いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ。

ご注文:レモンティーとサバラン。

ラム酒入りシロップをたっぷりしみこませたサバランは、私がたぶん一番好きなケーキです。シロップは甘さ控えめ、ケーキのてっぺんに付ける生クリームも無しというリクエストで、知人のパティシエに作ってもらっています。

「ぼく、サバランが好きで、結構あちこちの食べましたけど、これはスポンジ自体が美味しいし、全体的に甘すぎなくていい

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煩悩喫茶Agua「あの子のために泣いてもいいですか?

煩悩喫茶Agua「あの子のために泣いてもいいですか?

いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ。

ご注文:アメリカンとチーズサンド。サンドイッチは他に、卵とコンビーフもございます。

「中身は、きゅうりとチーズだけでしょう? 何でこんなにおいしいのかしら」

 ありがとうございます。おかげさまで評判が良いんですよ、何てことない材料なんですけどね。きゅうりは皮をむいて厚めに切る、ちょっと塩気の強いオランダ産チーズを使う、マーガリンの代わりに塩とマスタード

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煩悩喫茶Agua・店主のつぶやき「死刑になりたいあなたへ」

煩悩喫茶Agua・店主のつぶやき「死刑になりたいあなたへ」

 予報では「昼過ぎから」といっていた雨は、お店を開ける10時頃から降ってきました。窓から外をのぞくと、あちこちに水たまりができ始め、街路樹は大きく揺れています。この分では、当分どなたも見えなさそう。手持ちぶさたの私はスマホを開きました。
 ニュースのトップページは、先日都内の繁華街で起きた無差別殺傷事件の続報。重傷だった一人が亡くなられて、死者がさらに増えたという記事でした。犯人は20代の男。

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煩悩喫茶Agua「あきらめがつきません」

煩悩喫茶Agua「あきらめがつきません」

いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ。

ご注文:ももジュースとバタートースト

「ぼく、果物ではももが一番好きなんです。もものジュースを出すところなんて珍しいですね」

 国内の生産者さんを応援したくて、当店のジュースはすべて国産100%ジュースなんです。そちらは福島のももですが、今日は山形のラ・フランスと山梨の巨峰もありますよ。パンは、近所のベーカリーから取り寄せています。やわらかくてほんのり

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煩悩喫茶Agua「マウントを取られます」

煩悩喫茶Agua「マウントを取られます」

いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ。

ご注文:ブレンドとチェリータルト。アーモンドがほのかに香る台の上に、卵の風味豊かなカスタードクリームと、みずみずしいダークチェリーをたっぷり乗せたタルトです。

タルトを7割がた召し上がったところで、そのお客様は「あの、聞いてもらっていいですか?」と話しかけてきました。
「同じマンションの住人で、子供の同級生のお母さんが、マウントを取ろうとしてくるんで

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遠野で体験した不思議な出来事

遠野で体験した不思議な出来事

前回の「煩悩喫茶Agua」で、岩手県の遠野についてふれましたが、2023年6月に、私は初めてこの町を訪れました。伝説やスピリチュアル系好きなので、ずっと前から行きたかった場所でした。その期待通り?不思議な体験をしたので、そのお話をします。

東京から遠野までは、新幹線で新花巻へ行き、釜石線に乗り換えて約4時間。乗り継ぎ時間さえうまく行けば、意外と早く来られます。遠野の見どころは広範囲に点在していま

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煩悩喫茶Agua「なぜか運が悪いんです」

煩悩喫茶Agua「なぜか運が悪いんです」

いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ。

ご注文:オムライスのランチセット。今はやりの卵トロトロ型ではなく、薄焼き卵でケチャップライスを包んだオーソドックスなタイプです。具を炒めてご飯を投入する際に、バターを多めに加えるのがポイント。コクとまろやかさが出るし、ケチャップの甘みも引き立ちます。

男性の方は召し上がるのが本当に早い。そのお客様も10分ほどで平らげると、「美味しかったです、何かホッとす

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喫茶開店のお知らせ

喫茶開店のお知らせ

 このたび、Agua(アグア)という名の喫茶店を始めました。
店名はポルトガル語で「水」。店主の好きなボサノバの名曲『Agua de Beber(邦題:おいしい水)』から取りました。泳ぐことや温泉につかっていることが好き、水辺にいるとホッとする。そんな私は魚座から始まって、占いではたいてい水のエレメントに属します。なので、店主自身が心地よくいられるよう、こんな店名にしました。各種のお飲み物やスイー

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代書筆20・完結 孫江淮氏の思い出

代書筆20・完結 孫江淮氏の思い出

孫氏が2013年に亡くなって、早10年になります。

 初めてお会いした時の印象は、今なお鮮烈です。100才越えとは信じられない体格と若々しさ(髪が真っ白じゃない!)、声の張り、そして卓越した記憶力、どれもが「超人」を見る思いでした。38才まで日本人でしたから、華人なまり*は皆無で、日本人が話すのと変わりありませんでした。

*私の造語。中華系の方が日本語を話した時の、独特の抑揚を指す。

 台湾

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代書筆19 百歳長寿の秘訣

代書筆19 百歳長寿の秘訣

 私は今年で100才になる(2007年当時)。台湾ではここまでの長寿は、わりと珍しいので「めでたい人」と呼ばれる。私の長生きの方法は、実はとても簡単だ。つまり「平常心」である。何事も中道をいく。偏食しない、無理をしない、求めすぎない。この精神バランスこそ、長寿の秘訣だ。

食事について

 食事は、肉、揚げ物、漬物を食べ過ぎず、たまに魚を食べる程度。代わりに、野菜と果物をたくさん摂る。食べる量は腹

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代書筆18 わが師匠・広瀬秀臣

代書筆18 わが師匠・広瀬秀臣

著者・孫氏の師匠だった日本人

 私の代書業の師匠・広瀬との関係は深い。
広瀬は長く変わったヒゲを生やしていた。彼は利口な猫を飼っており、とてもかわいがっていた。その猫が死ぬと皮を記念に取り、遺骸は埋葬し、読経して葬式を行った。

 広瀬は昭和20年、終戦前に狭心症で亡くなった。ある朝のこと、相談事があって私が訪ねると、熱があると言っていた。午後になると、さらに具合が悪いと言うので、家族は急いで医

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代書筆17 二二八事件

代書筆17 二二八事件

*二二八(に・に・はち)事件は、「戦後台湾における最大の闇」といわれる出来事です。

その時善化では

 事件が起きた時、私は村民代表会の主席をしていた。民国35(1946)年、各町村の代表会ができて、私はその第一期主席に選ばれた。政治に関わりたくないので、さんざん固辞したが、それはかなわなかった。
 二二八事件は台北で起き、次第に南部へも余波が広がった。

ある朝、私が出くわした料理店の小僧は、

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