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駅のプラットホームで死の可能性を感じた

先に結論を述べます。

あなたの目の前でも起こりうる可能性の一つなので,今回のことを知ってほしい.
そして,人が死ぬ可能性があるかもしれないと確信した時は,勇気を振り絞って行動してほしい.
正直言わずもがななことだし,偉そうに言って恐縮な気持ちですが,ただそれだけを願って書きます.

僕が何者だとか,文体・表現の良し悪しだとか,適切な行動をとることができていないのではないか,などは一旦脇に置きます.

出来事が出来事なので,リアルの場だと話す機会を躊躇ってしまいそうだし,人の解釈によっては「こんなことを書くなんて不謹慎だろ」と言われることもあるかもしれないけれど,noteの可能性を信じてネットの海に放たせてください.

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- 2019年6月21日(金)の午前,とある駅のプラットホーム. 
  僕が目の当たりにした,およそ10分足らずの出来事 -

最近は電車に乗っていなかったが,今日は片道2時間ほどの乗車が必要だった.
乗り換えの駅としても降車する駅としてもよく利用していたことがあった駅.
朝の9時30分前後で乗るのはやはり人が多いので,もう少し遅い時間でもよかったかもしれないと思っていた.

プラットホームに着き,なんとなしに「この辺でいいっか」と階段近くの乗車口で待つ.
次の電車が来るまで,なんとなしにiPhoneのKindleで本を読みだす.

時計を確認しあと1〜2分で次の電車がくるというタイミングで,iPhoneをポケットにしまいリュックを背中から腹側に移した.

ちょうど次の電車がくるアナウンスが聞こえ始めた時,目の前の異変に気づいた.
乗車口で僕の前には女性が一人立っていたのだが,足がふらふらとし始めた.
どうしたのだろうと,2〜3秒ほど思考が停止したままだった.

そして間も無くその女性の足が「ふらふら」でなく「ぐらぐら」に変わった時に,確信した.

「このままだと人が死ぬかもしれない」

そう思った時に,乗車口に2列になって並んでいた女性の隣に立っている男性サラリーマンと目が合った.

女性の顔・表情など,後ろからだと何も分からなかった.
少なくとも分かるのは,足がぐらつき今にもホームの外に身を投げ出してしまいそうだったということだけ.

そこからは体がどう動いたのか覚えていないが,

「大丈夫ですか!?」

と女性の両肩を両手で掴み,近くにある柱の方へ引き戻した.
顔を伏せたままだったので,意識的にも朦朧としていたのだろう.
顔を見た時,蒼白までといかないものの顔色は明らかによくなく,表情もどこか苦しそうであった.

「大丈夫ですか!?」

と柱の近くに引き戻した後にもう一度聞くと,視線の焦点が少し合っていないようだった.
と言うより視線を合わせることができないくらい意識がとびそうだったのかもしれない.

体調が悪いのはここまで見て十分に明らかなのだが,声が出るかどうかも心配で返答を待った.
十分に落ち着いて,怖がらせることのないように配慮できていたかどうかは分からない.

そうして,やっと視線が合い

「ちょっと意識が…,ふらふらしてしまって…」

と弱々しく,返答した.
すかさず,焦らせないように僕は聞いた.

「どこか苦しいところはありますか?」

僕の目を見るなり,嗚咽を漏らしそうなほど何故か泣きそうな顔になっていた.
理由は分からないが,その表情を見ることしか僕にはできない.

「…お腹がすごく苦しくて…」とお腹に手を当てる.

「お腹ですか.ひとまず,しゃがみましょう.柱に背中をもたれさせて.」

「…はい…」

女性はゆっくりしゃがみ,苦しそうにまた顔を伏せる.

これからどうしたらいいのか,今後の判断をサポートしたいと思い,僕はまた質問をする.

「駅員さんを呼んできますね,待てそうですか?」

「…はい…」

また,泣きそうな顔で弱々しく女性は答える.

「一応確認なのですが,これから仕事とかですか? 急いでないですか?」

「…はい,友達に会いに行く予定だったんですけど…,大丈夫です.待ちます…」

急いで駅員がいる場所へ向かい事情を話して,すぐに行きますねと返事をもらったので,すぐに女性がいるところへ戻った.

「すぐに来ると言ってもらえたので,もう少し待ちましょうね. 調子はどうですか?」

「…はい,さっきより少し落ち着いてきました…」

さっきより顔中に汗が吹き出ていて,心配になった.
ティッシュとウェットペーパーを差し出したが,大丈夫ですと.

待つこと,3分ほど経過したが駅員は来ない.

その間に,柱の近くでしゃがみこんでいる女性を見て,心配して声をかけている同性の方も2〜3名いた.
4〜5言ほどの会話をしていて同性の方が勇気づけているような様子もあった.
変な表現であるが,僕にはきっとできないことをしていただけたので,何故か安心した気持ちがあった.

もう一度行って駅員を呼んで戻ってくるよりもしその女性が歩けるならば,100mほどあるが駅員がいる所へ向かったほうが,少しでも早いほうがいいかもしれないと思った.
来ることに希望的観測を抱くのをやめた.

「もし歩けるようでしたら,駅員さんがなかなか来ないので,一緒に改札付近まで行けますか?」

「はい,歩けそうです. さっきより落ち着いてきました.」

そう言って,ゆっくりと立ち上がって歩きだしエスカレーターに乗った.

歩いている途中,敢えて何も話はしなかった.

会話を途中省略したが,そこまで女性が何度も「すいません」と辛そうに言う姿を見るのが気持ち的に辛かった.
辛かったというのは,自分の気持ちに反して体がいうことをきかない経験が少なからず僕もあるので,その気持ちを投影したためだ.
迷惑をかけてしまっている,と思ってのことなのだろう.
女性の体の調子のことだけがただただ心配だった.
迷惑なんて気持ちは全くないし,ここで僕が何もしないほうが後悔すると思った.

たったの100m前後がとても長く感じた.
ゆっくり歩いているからというわけでない.
1秒でも早く,医療分野の人に見てもらえるように到着してほしいという気持ちでいっぱいだったからだと思う.

駅員がいるところに着き,救護室に案内してもらえた.
この瞬間,とても安心した.
自分は確固たる判断軸を持っていないし,即効性のある治療手段を講じることもできない.
何もできない自分が,もしかしたら命に関わるかもしれないこの事態を一体どうすることができるのか.
でも自分がパニックになっても何も事態は改善しない.
この瞬間まで,そんな思いで満たされていた.

では僕はここで,と駅員に伝えた後,その女性が振り絞るように,最後に

「本当に…ありがとうございました」

と言ってくれた.

「体調がすぐよくなりますように.無理しないでください.」

もっと迅速に適切な判断と行動をできたのかという不安に包まれていたので,何を言うべきなのか,そんなことなど考える余地もなく,ただただその時の僕の気持ちを素直に伝えて,僕が把握できる限りのこの件は終了した.

その後,あの女性は何事もなく回復したのか,それともまだ苦しんでいるのか.
気になるけれど,それこそ今の僕には知る術がない.
安寧を祈ることしかできない.

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正直,初期対応として適切な判断を迅速にできたか甚だ疑問である.

そして,これを自慢げに話すつもりなど毛頭ない.
僕の行動の一つひとつに・記述した内容に否定の声もあるかもしれない.
いつかは分からないが人命が助かるかもしれない状況が起こった時に寄与するきっかけになればいいと思い,文字におこした.

すぐに駅員がいる所へおぶってでも連れて行くべきだったではないか,電車がプラットホームに着いていて周りの人々が急いでそうだったからといって,他の人にも助けの声をすぐにかけるべきだったんじゃないか,もっと苦痛を和らげるような声かけができたんじゃないか.とか.

そして意外にも,異変に気付くことができる人は本当に僅かであるということ.
僕がその女性に声をかけてからも,気づいていない人は多いみたいであった.
見知らぬふりをしている人もいたかもしれない.

決してそこにいた他人を批判したいわけなのではない.
ただ,もし誰かの死の可能性を少しでも感じた時に,周りに人がいようがいなかろうが,自分は何をすべきなのかを解釈し,迅速に適切な行動をすることができるかどうかが重要なのでないかと,僕は感じたいうだけ.
周りに人がいる場合には,声をかけるべきだということ.

医療知識を体系的に知りもしない一般人が一人で適切な判断・行動をするには,不足がありすぎるのだと痛感した.

確かなこととして言うことができるのは,女性があのままホームに落ちて一人の命を救うことができなかったら僕は後悔どころではなかったろうということ.
また,僕にとって大切な人がいるように,この記事を読んでくださる人にとって大切な人がいるように,死の危険性に陥っている人が仮に亡くなったら悲しむ人がいるということ.


昔,母が最寄駅のプラットホームで人身事故が目の前で起こったことを話していたことが想起される.
あまりに突然の衝撃で,何ができたとかでなく,ただただ茫然自失としていたとのこと.とてもショッキングであったことも.


あくまで今回の件を経験して僕が感じた,次に同じような人の命に関わる事態が起きたら,確実に抑えたいこと

①すぐに本人の状態を確認し,安全を確保すること(悪化させないようにすること+精神的に励ますことができるのであればそうするべき【悪化防止・苦痛軽減】)
②いの一番に気づいたら,周りの2〜3人に一緒に助けてほしいように伝えること(僕が周りの人であったら,何ができるかすぐに提案するか指示を待つ)
③公的な第3者に可及的速やかに情報伝達をする→何をするべきか判断を仰ぐ


一般的に公的な機関が示していることを再確認するのがベターであることは間違いない.

▼[PDF]救急体制 - 総務省消防庁

▼[PDF]第1章 救急医療の現状 と課題 - 総務省


もしかしたら,あなたにとって大切な人が死の危険に陥る可能性があるかもしれない.
或いは,今回の僕のように目の前で知らない他人が死の危険に陥る可能性はもっとあるかもしれない.
そして,あなたにとっては他人かもしれないけれど,その他人の大切な人が悲しまないように.

僕も,読んでくれた方々にとっても,
いつかは分からない,
人が死ぬかもしれない事態の時に,微力かもしれないけれど,確かに人の命を救う初期対応ができますように.
誰も悲しまずに済むような適切な行動をとることができますように.

【!】以下,追記

『集合的無知』という概念があるらしいです.

どんなことを指すのか結論から言うと,
「人数が多ければ多いほど,自分ではない誰かが対処してくれると思いやすい」ということ.

感覚的になんとなく分かる…
エビデンスは,心理学者ラタネとダーリーの実験より

実験A
仕掛け人の学生が,路上でてんかんの発作に見舞われたふりをする.
そこを通りかかった被験者が仕掛け人を助けるかどうかを調査.
■被験者が1人だった場合
 仕掛け人を助けた人は8割以上.
 3分以内に助けを求めた.
■被験者が5人以上のグループだった場合
 仕掛け人を助けた人は約3割.
 どうすればいいか分からなかった.

実験B
被験者に部屋で作業をしてもらう.
その部屋に煙を流してもらう.
■被験者が1人だった場合
 通報した人は7割以上.
■被験者が3人(そのうち2人がサクラ/気にしないそぶりをする)だった場合
 仕掛け人を助けた人は約3割.
 どうすればいいか分からなかった.

とのこと.

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