徳間書店児童書編集部

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徳間の児童書にまつわるさまざまな情報を発信していきます。試し読みも公開中。https://www.tokuma.jp/kodomonohon/

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徳間書店の子どもの本30周年記念ページ

徳間書店児童書編集部は、1994年5月に児童書の刊行を始めました。みなさまのご愛顧のおかげで、今年で30周年を迎えることができました。感謝の気持ちをこめて、いままでの児童書編集部の足跡をご紹介いたします。 【1994年 児童書創刊】 徳間書店は1993年に児童書の編集部を作り、児童書創刊の準備を始めました。それまでもすでに、『となりのトトロ』など、アニメ絵本を出版していましたが、さらに本格的な児童書を出版するため、態勢を整えたのです。 この決断をしたのは、「子どもの本は

    • 著者と話そう 長友恵子さんのまき

       2023年3月に刊行した『ブックキャット 〜ネコのないしょの仕事!』の翻訳をされた長友恵子さんにお話をうかがいました。 Q どんなお子さんでしたか? A 大人になってからは、自己主張が強い、と言われますが、子どものころは内気で、友だちの少ない子どもでした。それにはわけがあって、小学校6年生まで夜尿症で、いつも布団に地図を描いていたんです。それで内にこもってしまい…。学校の成績はよかったので、両親はさほど気にしていなかったみたいです。六年生の修学旅行は不安で、行かないことに

      • 本の中から出てくるのは…?/『本だらけの家でくらしたら』/文:編集部 小島範子

         本をふると、中からその本の登場人物があらわれる…そんなことができたら、素敵だと思いませんか? 『本だらけの家でくらしたら』(N.E.ボード 作/柳井 薫 訳/ひらいたかこ 絵)の主人公のファーンは11歳の女の子。両親は仕事熱心できちょうめん すぎ、ファーンからすると「タイクツ」な人たち。父親は庭の芝生のことばかり気にしているし、母親はバーゲンのチラシばかり見ています。でもファーンは、見た目も両親とまったく似ていないうえに、「すごく変わった子」。小さいころから、身の回りでは

        • 【子どもの本の本屋さん 番外編】    ミュンヘン国際児童図書館 訪問記

           2022年10月、フランクフルトブックフェアへの出張の際、少し足を伸ばして、ミュンヘン国際児童図書館に行ってきました。今回はその様子をご報告します。 〈ブルーテンブルク城へ〉  イェラ・レップマンによって1949年に創立されたミュンヘン国際児童図書館は、世界最大規模の児童図書館として、世界中の子どもの本を収集・所蔵し、さまざまな企画展、原画展を行っています。一般の方も利用でき、また、児童文学研究を支援する図書室も備えています。  この図書館があるのは、ミュンヘン郊外の「ブ

        徳間書店の子どもの本30周年記念ページ

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        • 著者と話そう
          8本
        • 徳間のゴホン!
          6本
        • 上大崎発読書案内
          6本
        • 子どもの本の本屋さん
          6本
        • 竹迫祐子の「絵本の魅力にせまる! 絵本、むかしも、いまも…」
          6本
        • 私と子どもの本
          6本

        記事

          著者と話そう 早川世詩男さんのまき

           第68回青少年読書感想文全国コンクール高学年の部の課題図書になった児童文学『ぼくの弱虫をなおすには』(K・L・ゴーイング作、久保陽子訳)の挿し絵を描いてくださった、イラストレーターの早川世詩男さんにお話をうかがいました。 Q どんな子ども時代でしたか? A 暇さえあれば絵を描いていました。最初は絵が得意な兄の影響だったと思いますが、実際ぼくも絵を描くのが好きで、らくがき帳に好きなものをずっと描いていました。「キン肉マン」や「アラレちゃん」など、アニメや漫画のキャラクター

          著者と話そう 早川世詩男さんのまき

          できるってどういうこと?/『体はゆく』/文:上村 令

           小学3、4年生のころ、スポーツが得意な男子と、同じSFのシリーズにはまり、本を貸し借りするなどして急に仲よくなったことがあります。どういう話の流れだったのか、あるときその子がわたしに、「なあ、おまえ、どうして逆上がりができないの?」と尋ねました。全然意地悪ではなく、心底不思議がっている口調だったので、わたしも真剣に考えました…どうしてかな? するとその子は、「オレ逆に、もうできなかった時の感じが思い出せない」と言いました。その後SF好きの二人は、「もし脳みそだけ入れ替われた

          できるってどういうこと?/『体はゆく』/文:上村 令

          翻訳の楽しさと難しさを知った本/『時をさまようタック』/文:松波佐知子

           『時をさまようタック』は私の最初の翻訳書です、と言うと語弊がありますが、翻訳を学び始めた頃に、『海辺の王国』等の訳者である恩師の坂崎麻子先生から、好きな原書を丸々一冊訳して、翻訳された本と自分の訳を比較する練習を勧められて選んだ本でした。  日々に退屈していた少女ウィニーが、泉の水を飲んだために不老不死となった一家との交流を通じて、自分自身や死生観と向き合い、成長する姿を丁寧に描いた良作です。  ナタリー・バビットを知ったきっかけは、坂崎先生の翻訳クラスで課題に出された

          翻訳の楽しさと難しさを知った本/『時をさまようタック』/文:松波佐知子

          今村葦子『はつ子とひな子』(1989年/理論社)/野上暁の児童文学講座「もう一度読みたい! ’80年代の日本の傑作」

          この連載では、1980年代の当時は話題になったけれど、今は書店で手に入りにくくなっている作品を紹介していきます。 『ふたつの家のちえ子』で、いくつもの児童文学賞を受賞して話題になった今村葦子が、小さな二羽のヒヨドリの冒険をエキサイティングに描いたお話です。  ヒヨドリのはつ子は、ひな子と南に向かってまっしぐらに飛びながら、すぐ横を飛んでいる北風に「おまえは、だれだ?」と名前を聞かれ、つらい気持ちになります。でも、「…ぼく、男なのに『はつ子』って名前なんです」と、正直に答え

          今村葦子『はつ子とひな子』(1989年/理論社)/野上暁の児童文学講座「もう一度読みたい! ’80年代の日本の傑作」

          「魚の存在感に迫るクレヨン画家」加藤休ミ『おさかないちば』

           青光りする背に、ふっくら白い腹をした大きく立派なブリ。薩摩焼の黒い釉薬のような艶やかな体でパックリ口を開けている大層大きなヒラメ。鱗取りを使えば、それぞれにきらきらした鱗が景気よく舞い上がりそうです。 魚市場を描いた絵本はいくつかありますが、加藤休ミの『おさかないちば』(2013年・講談社)は一味ちがいます。  寿司屋でタイラギのにぎりを食べた男の子は、それがもとはとっても大きな貝で、魚市場に行けば実物が見られる。そう聞いて、お父さんと早朝の魚市場へ出かけることに…。

          「魚の存在感に迫るクレヨン画家」加藤休ミ『おさかないちば』

          斉藤洋『ベンガル虎の少年は……』

           この連載では、1980年代に話題になり、今は書店で手に入りにくくなっている作品を紹介していきます。  斉藤洋は、1986年に『ルドルフとイッパイアッテナ』でデビューし、翌年には講談社児童文学新人賞を受賞するなど、一躍人気者になります。デビューから2年後の6冊目に出版したこの作品も、それまでの作品同様に、独特のユーモラスで饒舌な文体を駆使してサービス満点。徹頭徹尾、面白く読ませる仕掛けが満載です。  まず、虎についての色々なウンチクが披露されます。虎は8から10種類いて、

          斉藤洋『ベンガル虎の少年は……』

          「怖い+可愛い化け猫・妖怪ワールド」石黒亜矢子『ねこまたごよみ』

           コロナ禍で、広く知られるようになった妖怪アマビエ。江戸時代の摺物には、肥後(現代の熊本)の海に現れ、6年間の豊作とともに疫病の流行を予言し、疫病の流行時には自分の姿絵を見るように託宣した、と紹介された妖怪です。災害や疫病など人知を超える災禍に見舞われたとき、古人は神力とともに、異界の存在を思い描き、納得したり慰められたりしたであろうことは想像に難くありません。妖怪や異形の絵と言えば、室町時代の「百鬼夜行絵巻」以降、江戸時代には曽我蕭白、鳥山燕石、河鍋暁斎、近くは『ゲゲゲの鬼

          「怖い+可愛い化け猫・妖怪ワールド」石黒亜矢子『ねこまたごよみ』

          三十三年目のレンコ/『お引越し』(ひこ・田中作)/文:西田俊也

           『お引越し』との出会いがなければ、ぼくは児童書を書くことはなかっただろう。    平成の初めの日曜の朝、新聞書評欄の「子どもの本」コーナーに『お引越し』が載っていた。  関西弁で書かれた、小6の少女の話らしい。ぼくは関西弁で書いた小説でデビューしたので興味がわき、本屋の児童書の棚で手にとった。  『お引越し』とは、少女の引越し体験話ではなく、彼女のお父さんだけが「お引越し」したという話だった。というのは、両親が離婚したからだ。少女はそのことを、「お引越し」ととらえ、大人

          三十三年目のレンコ/『お引越し』(ひこ・田中作)/文:西田俊也

          子どもの本の専門店 エルマー

           福岡県春日市にある子どもの本の専門店「エルマー」にお邪魔し、1989年の創業当時から代表を務められている前園敦子さんにお話をうかがいました。編集部がエルマーを取材するのは、1996年、2006年に続けて3回目です。 Q 前園さんが子どもの本のお店を始められたのは、親子劇場の活動で本の係を担当されたことがきっかけだったそうですね。 A 当時、親子劇場の会場では、本の販売もしていました。劇の原作以外の本も売っていて、たまたま私は販売する本を選ぶ係になったんです。それで、どんな

          子どもの本の専門店 エルマー

          かめが語る戦争/『ひろしまの満月』/文:編集部小島範子

           物語は、ある池の庭にいるかめのモノローグ、「わたしは、かめです。」で始まります。かめは、だれも住んでいない家の古い池に何年も何年も前からずっとひとりで暮らしていました。  けれどもある日、その家に引っ越してきた家族の、小さな女の子の声で、かめの記憶がよみがえります。  月を見上げると、満月。かめの思い出ドアのかぎがあきます。かめには、心がばりばりとやぶれてしまいそうな思い出があるのです。  引っ越してきたのがどんな子か見てみよう、と思ったかめは、池を出て、女の子と出会

          かめが語る戦争/『ひろしまの満月』/文:編集部小島範子

          著者と話そう 鵜木 桂さんのまき

          2023年6月に刊行した『月のボールであそぼうよ パンダとリスのはなし』はベルギーの作家とオランダの画家による低学年向けの物語です。翻訳を担当されたオランダ在住の鵜木桂さんにお話をうかがいました。 Q 子どもの頃のことをお聞かせください。 A 生まれは松本ですが、父の仕事の関係で、小学校に入るときに千葉に引越しました。一人っ子で引っ込み思案なうえ大学の付属小学校に入学したため、近所に友だちがいませんでした。学校で仲のいい子は家が遠く、子どもだけで家に遊びに行ったりもできな

          著者と話そう 鵜木 桂さんのまき

          フラックの名作を、今の子どもたちに/『ウィリアムの子ねこ』/文:編集部 高尾健士

           友だちと遊んだりひとりで小さな冒険をしたり、「行って帰る」ことを繰り返しながら成長する子どもたちにとっては「行きて帰りし物語」がいちばん受け入れやすい形なのだろう、という仮説を、評論家・翻訳家の瀬田貞二は唱えました。そのヒントを得たきっかけは、自ら訳した絵本『アンガスとあひる』(福音館書店)だと言います。作者のマージョリー・フラックは体験に基づき、「行って帰る」構造を巧みに利用して、たくさんの素晴らしい絵本を生み出しました。子どもを本当に理解していると深く感心させられるアメ

          フラックの名作を、今の子どもたちに/『ウィリアムの子ねこ』/文:編集部 高尾健士