青木勇気

一般社団法人メディカル・フェムテック・コンソーシアム 常務理事/Midnight Ex…

青木勇気

一般社団法人メディカル・フェムテック・コンソーシアム 常務理事/Midnight Express 代表/ロビイスト/文筆家。医療・ヘルスケア、FemTech領域における事業開発、政策企画。医療DX(PHR、オンライン診療等)、SRHR、疾患啓発。物語が好きで小説も書きます。

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  • ペニー・レイン

    若かりし頃に書いた短編小説です。全22章+あらすじ

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固定された記事

デビュー作「梨花、」 を無料でDLできます

「梨花、」は僕が一番初めに書きたかったものです。 面白いかどうか、うまく書けたかどうかなどは分かりません。 ただ、自分の“処女作"にふさわしい物語ではあります。 と…

青木勇気
5年前
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「先生のようにはできません」と離れていく研修医。小児科医が語る、医師と母親を両立させる難しさ

女子や浪人年数の多い男子の合格を抑制する目的で、不利な得点調整を行ったとされる「東京医科大不正入試問題」は記憶に新しい。 いかなる理由があろうとも不正は不正であ…

青木勇気
1年前
6

出会いの場であり、職業訓練所でもある。寝たきりになっても働ける「分身ロボットカフェ」とは?

寝たきりの、先へ行く−− これは「人類の孤独の解消」を目指す、オリィ研究所によるプロジェクト「分身ロボットカフェDAWN」のキャッチコピーだ。たとえ寝たきりでも仲間…

青木勇気
1年前
11

患者は生きるか死ぬかの選択をするのではなく、いかに自分らしく生きていくかを模索していると知ってほしい

6月21日は世界ALSデー、全身が動かなくなってしまう難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の啓発活動が行われる日だ。 これまで私は、このタイミングにあわせていくつか記事…

青木勇気
1年前
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病と闘うのではなく、自分自身と向き合い、生きる。ALS患者・藤元健二さんから教わったこと

6月21日は、世界ALSデー。文字通り、世界中で難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の啓発活動が行われる日だ。 私は以前、ALSにおける疾患啓発について書いたが、今回は疾患その…

青木勇気
1年前
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疾患啓発は一日にして成らず。「アイス・バケツ・チャレンジ」のその先にあるものとは?

6月21日は何の日か知っているだろうか。「世界ALSデー」である。 ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは、筋肉を動かす神経の障害により全身が動かなくなってしまう、効果的な治…

青木勇気
2年前
6

徘徊事故、認認介護…暗いニュースばかりでも、認知症の人たちと一緒に笑顔になれる場所がある

超高齢化と核家族化が進む中、日本は深刻な状況にある。2025年には、第一次ベビーブームの時期に生まれた世代が後期高齢者(75歳以上)になり、介護・医療費等の社会保障費…

青木勇気
2年前
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風化する震災の記憶とどう向き合うべきか。~観光客として2度、石巻を訪れた理由

「震災の記憶は風化してしまった。」「復興は遅々として進まず、今も多くの人が不便な生活を強いられている。」 このような誰ともなく向けられた怒りにも諦めにも似た言葉…

青木勇気
2年前
9

3.11が遠い記憶になってしまっても、震災遺族のためにできることがある

東日本大震災から7年。警視庁によると、2018年3月1日現在の東日本大震災における死者は1万5895人、身元不明のご遺体は62人(岩手県52人、宮城県10人)いる。 また、行方不…

青木勇気
2年前
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3.11から10年。双葉町は浜通りにおける復興のシンボルに

2020年10月某日、天気予報は曇りだったが清々しい晴天に恵まれ、双葉駅に降り立つ。 2017年6月の福島第一原発の視察以来3度目の浜通り(福島県の東部にあたり、太平洋側沿…

青木勇気
2年前
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福島に芽生える2つの復興「Jヴィレッジ」と「廃炉資料館」

福島における復興を語るとき、廃炉や除染済み土壌の扱いなど難題ばかりが取り沙汰され、着実に元の姿を取り戻しつつあるもの、もしくは新たに形を変えて生み出されたものに…

青木勇気
2年前
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子どもは、現実と向き合い、新しい物語と出会うための“ノイズ”である

衆議院選挙の争点ともなった、少子高齢化。様々な観点から活発な議論が交わされているが、その要因は多面的で根深く、複雑に絡み合っている。果たして有効な解決策はあるの…

青木勇気
2年前
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“ファンダメンタル”の誘惑。FREITAGが提案する革新的な購買体験とは?

「チューリッヒなう」 ある人がこうツイートすると、特定のフォロワーたちの反応でタイムラインがざわめき立つ。チューリッヒとは、言うまでもなくスイス最大の都市のこ…

青木勇気
2年前
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私たちは本当に「全人格労働」を強要されることで、人間らしさを失っているのか。

「全人格労働」という言葉をよく目にするようになった。 人生の一部であるはずの仕事にすべてを捧げ、心身ともに壊れてしまう。そのような状況に陥る原因として、ネガティ…

青木勇気
2年前
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村上春樹『1Q84』の「マザ」と「ドウタ」が意味するもの

以前、『1Q84』のレビューを書いたが、今回はその続編であり、前回と同様に書評というよりは物語との向き合い方についての話である。 まず、『1Q84』は決して優しい(あ…

青木勇気
2年前
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村上春樹『1Q84』をありのまま受け入れるということ

『1Q84』について少し書きたいことがある。書評というよりはむしろ構造的な話であり、物語との向き合い方についてだ。 まず、私は村上春樹ファンである。彼の小説はすべて…

青木勇気
2年前
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デビュー作「梨花、」 を無料でDLできます

デビュー作「梨花、」 を無料でDLできます

「梨花、」は僕が一番初めに書きたかったものです。
面白いかどうか、うまく書けたかどうかなどは分かりません。
ただ、自分の“処女作"にふさわしい物語ではあります。
とにかく、こうして形になり 読んでいただけるということは本当に幸せなことだと思います。
梨花、ありがとう。

【作品紹介】
「本名っていうのは嫌ってくらいその人の国籍になっちゃうんだよ」。──彼女の名前は「梨花」。日本では「りか」と言うが

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「先生のようにはできません」と離れていく研修医。小児科医が語る、医師と母親を両立させる難しさ

「先生のようにはできません」と離れていく研修医。小児科医が語る、医師と母親を両立させる難しさ

女子や浪人年数の多い男子の合格を抑制する目的で、不利な得点調整を行ったとされる「東京医科大不正入試問題」は記憶に新しい。

いかなる理由があろうとも不正は不正であり、女性差別であると厳しい批判を受けることは免れないが、「女性は結婚や出産で長時間勤務ができない」とその理由が語られたことで、医師と母親を両立する難しさもまた一筋縄ではいかない課題として浮き彫りになった。

育児と仕事を両立することの大変

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出会いの場であり、職業訓練所でもある。寝たきりになっても働ける「分身ロボットカフェ」とは?

出会いの場であり、職業訓練所でもある。寝たきりになっても働ける「分身ロボットカフェ」とは?

寝たきりの、先へ行く−−

これは「人類の孤独の解消」を目指す、オリィ研究所によるプロジェクト「分身ロボットカフェDAWN」のキャッチコピーだ。たとえ寝たきりでも仲間と共に働けるカフェとは、どんなものなのだろうか。

ALS患者の声を救うサービスなど、以前からオリィ研究所のプロジェクトに注目している筆者は、今回もまた「障がい者支援」という言葉では片付けられないポテンシャルを秘めていることを確信して

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患者は生きるか死ぬかの選択をするのではなく、いかに自分らしく生きていくかを模索していると知ってほしい

患者は生きるか死ぬかの選択をするのではなく、いかに自分らしく生きていくかを模索していると知ってほしい

6月21日は世界ALSデー、全身が動かなくなってしまう難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の啓発活動が行われる日だ。

これまで私は、このタイミングにあわせていくつか記事を書いてきたが、今回はALSデーの前日に参加した二つのイベントを通して、難病を抱える人たちがいかにして自分らしく生きているのか、生きていこうとしているのかフォーカスしたいと思う。

■ “自分の一部”を永久に失うことと、それを取り

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病と闘うのではなく、自分自身と向き合い、生きる。ALS患者・藤元健二さんから教わったこと

病と闘うのではなく、自分自身と向き合い、生きる。ALS患者・藤元健二さんから教わったこと

6月21日は、世界ALSデー。文字通り、世界中で難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の啓発活動が行われる日だ。

私は以前、ALSにおける疾患啓発について書いたが、今回は疾患そのものではなく、ある患者さんにフォーカスしたいと思う。

2017年3月31日、ALS患者の藤元健二さんが亡くなった。3月25日には初の著作『閉じ込められた僕』を上梓しており、出版記念パーティーを目前に控えた矢先のことだった。

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疾患啓発は一日にして成らず。「アイス・バケツ・チャレンジ」のその先にあるものとは?

疾患啓発は一日にして成らず。「アイス・バケツ・チャレンジ」のその先にあるものとは?

6月21日は何の日か知っているだろうか。「世界ALSデー」である。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは、筋肉を動かす神経の障害により全身が動かなくなってしまう、効果的な治療法のない難病だ。昨年、アメリカからはじまり世界的なムーブメントとなった「アイス・バケツ・チャレンジ」は記憶に新しいだろう。

アイス・バケツ・チャレンジは、ALS患者と患者団体を支援する募金イベントで、企画内容としてはALS協会

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徘徊事故、認認介護…暗いニュースばかりでも、認知症の人たちと一緒に笑顔になれる場所がある

徘徊事故、認認介護…暗いニュースばかりでも、認知症の人たちと一緒に笑顔になれる場所がある

超高齢化と核家族化が進む中、日本は深刻な状況にある。2025年には、第一次ベビーブームの時期に生まれた世代が後期高齢者(75歳以上)になり、介護・医療費等の社会保障費が急増すると懸念され、高齢者は約3,500万人(人口比約30%)、さらに認知症の患者数は約700万人、つまり5人に1人になると見込まれている。

これは遠い未来の話ではなく、認知症患者が徘徊中に電車にはねられ死亡、介護疲れによる心中事

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風化する震災の記憶とどう向き合うべきか。~観光客として2度、石巻を訪れた理由

風化する震災の記憶とどう向き合うべきか。~観光客として2度、石巻を訪れた理由

「震災の記憶は風化してしまった。」「復興は遅々として進まず、今も多くの人が不便な生活を強いられている。」 このような誰ともなく向けられた怒りにも諦めにも似た言葉が、繰り返し語られてきた。

しかし、現実はそう単純ではなく、時間が経つからこそリアリティを持って語られることや、より正確な情報として整理、共有される事実もある。総じて他人事と捉え、無関心になっているわけではない。

また、個別で見ていけば

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3.11が遠い記憶になってしまっても、震災遺族のためにできることがある

3.11が遠い記憶になってしまっても、震災遺族のためにできることがある

東日本大震災から7年。警視庁によると、2018年3月1日現在の東日本大震災における死者は1万5895人、身元不明のご遺体は62人(岩手県52人、宮城県10人)いる。

また、行方不明者は2539人で、警察はこれまでにのべ67万人以上を投入して捜索し、この1年では15人(うち死者2人)の身元が特定できたとのことだ。

所持品や身体的な特徴、歯型鑑定、DNA鑑定により99.6%以上の身元が判明している

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3.11から10年。双葉町は浜通りにおける復興のシンボルに

3.11から10年。双葉町は浜通りにおける復興のシンボルに

2020年10月某日、天気予報は曇りだったが清々しい晴天に恵まれ、双葉駅に降り立つ。

2017年6月の福島第一原発の視察以来3度目の浜通り(福島県の東部にあたり、太平洋側沿岸の地域を指す)エリアだが、来るたびに復興を体感してきた。

まず最もわかりやすいのが、目的地へのアクセスで、2019年6月にJヴィレッジと東京電力廃炉資料館を取材した際には、まだ富岡駅までしかいけなかったが、2020年3月に

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福島に芽生える2つの復興「Jヴィレッジ」と「廃炉資料館」

福島に芽生える2つの復興「Jヴィレッジ」と「廃炉資料館」

福島における復興を語るとき、廃炉や除染済み土壌の扱いなど難題ばかりが取り沙汰され、着実に元の姿を取り戻しつつあるもの、もしくは新たに形を変えて生み出されたものには、なかなか光が当たらない。

そこで私は、過去に福島第一原発に視察に行った経験をふまえて、交通インフラや施設が再開し地域が活性化していることや、新たな役割を担いつつあることを紹介しながら、未来への期待感を伝えたいと考えた。

訪問先として

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子どもは、現実と向き合い、新しい物語と出会うための“ノイズ”である

子どもは、現実と向き合い、新しい物語と出会うための“ノイズ”である

衆議院選挙の争点ともなった、少子高齢化。様々な観点から活発な議論が交わされているが、その要因は多面的で根深く、複雑に絡み合っている。果たして有効な解決策はあるのか、何から取り組むべきなのか、非常に悩ましい。

まず、当たり前のことだが、高齢化そのものは止められない。理由は単純で、現代における医療、社会保障、インフラ、治安等であれば、平均寿命が下がることはないからだ。現にこの50年平均寿命は上がり続

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“ファンダメンタル”の誘惑。FREITAGが提案する革新的な購買体験とは?

“ファンダメンタル”の誘惑。FREITAGが提案する革新的な購買体験とは?

「チューリッヒなう」

ある人がこうツイートすると、特定のフォロワーたちの反応でタイムラインがざわめき立つ。チューリッヒとは、言うまでもなくスイス最大の都市のことだ。誰もが憧れる観光立国に行くこと自体は、特段変わったことではない。ただ、それが「カバンを買いにいくため」だったらどうだろうか。

彼は世界を股にかけるビジネスマンでもなければ、北欧エリアを担当するバイヤーでもない。あるバッグブランドの

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私たちは本当に「全人格労働」を強要されることで、人間らしさを失っているのか。

私たちは本当に「全人格労働」を強要されることで、人間らしさを失っているのか。

「全人格労働」という言葉をよく目にするようになった。

人生の一部であるはずの仕事にすべてを捧げ、心身ともに壊れてしまう。そのような状況に陥る原因として、ネガティブな文脈で語られる全人格労働とは、何なのか。いわゆるブラック企業と言われる会社などは、社員に全人格労働を強要し、搾取しているのだろうか。

厚生労働省による2015年度の労働紛争に関する調査では、民事上の労働相談のうち、上司による暴言や無

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村上春樹『1Q84』の「マザ」と「ドウタ」が意味するもの

村上春樹『1Q84』の「マザ」と「ドウタ」が意味するもの

以前、『1Q84』のレビューを書いたが、今回はその続編であり、前回と同様に書評というよりは物語との向き合い方についての話である。

まず、『1Q84』は決して優しい(あるいは易しい)物語ではない。

「1984」と「1Q84」が交錯する物語の中で、『空気さなぎ』という物語が描かれる。そして、「リトル・ピープル」なるものがつくり出す「空気さなぎ」は、ある物語を書き換える「もうひとつの物語」として機

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村上春樹『1Q84』をありのまま受け入れるということ

村上春樹『1Q84』をありのまま受け入れるということ

『1Q84』について少し書きたいことがある。書評というよりはむしろ構造的な話であり、物語との向き合い方についてだ。

まず、私は村上春樹ファンである。彼の小説はすべて読んでおり、ストーリーテラーとしての村上に全幅の信頼を寄せている。しかも、本作は主人公が小説の中で小説を書くという好みのストーリーだったから、おもしろくないはずがないと思っていた。だが、読み進めるほどにある種の違和感を覚えることとなっ

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