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地域の日本語教育・日本語活動に関わるコーディネーターに求められる力とは
はじめに2023年6月10日(土)に、地域日本語どっとねっとのシンポジウム「あらためて、地域日本語教育の『場づくり』を考える」に登壇しました。僕は基調講演として「『地域日本語教育の役割は,日本語を教えるだけじゃない』ってどういうこと?」という長いタイトルでお話をし(資料はresearchmapの社会貢献活動にアップしています)、その後、実践報告のみなさんと一緒にパネルセッションにも参加しました。現
もっとみる日本語教育の現場を見て話を聞くシリーズ1
はじめに
今の4年ゼミ生の中に,日本語教育に興味を持っている学生がいます。僕のゼミに入ってくる学生は,日本語教育にはあまり興味がないという学生が,実は多いのです。
ゼミでやっていることが,幅広く共生社会の実現に関する取り組みなので,日本語教育の色があまり濃くないということがあるんでしょう。学生たちの興味関心も,障がいとか性的多様性,地域づくり,映像制作など多様です。
まあ,僕自身が本務校で日
続・日本語教師の資格の話
2022年度の新会議2022年5月31日に「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議(仮に「質の会議」と言います)」の第1回が開催されました。日本語教育を実施する組織・団体等を類型化して法的枠組みの中に位置づけることと,それに付随する形で教師の資格について議論する会議体です。
この会議について報道された記事を読んで,混乱している関係者が一定数いるようなので,現状を簡単にまとめます。
日
日本語教育機関の類型化の難しさ〜制度化のよい面と課題
日本語教育機関の類型化の議論にはどうしても「日本語教育とは」という議論がつきまといますが,その定義が非常に難しいという話です
日本語教育機関とは前回のnote(日本語教育機関の類型化〜なぜ教師の資格と一緒に議論するのか)にも書いたとおり,日本語教育機関の類型化は,「留学」「就労」「生活」という三つの大枠に分けるということで進みそうです。
日本語教育の推進に関する法律や日本語教育の推進に関する施策
日本語教育機関の類型化〜なぜ教師の資格と一緒に議論するのか
今回は日本語教師の資格の議論と日本語学校の類型化の議論をなぜ一緒にするのかについて,私の考えの変化をまとめました。
会議の流れ日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議第3回が2月26日に開催されました。オンラインでも傍聴可能でしたので,傍聴した方もいらっしゃると思います。
少しおさらいをしますが,この会議,第1回が開かれた後でしばらく間が空きました。そしてその間,資格化の動きが進展していると
一般社団法人ings設立について
オープニングイベント実施します!
団体の設立と僕らのこと大学時代からの友人,岩瀬直樹と二人で,一般社団法人ingsを設立しました。
名称の由来について,ホームページのトップに以下のようなメッセージをアップしています。
「いんぐす」と読みます。英語の「ing」からつくった造語です。
学ぶとは、何かに没頭「している」状態のこと。それがingsです。
私たちは、学び続けている、成長し続けている人が社
日本語教師の資格と言語政策
資格の議論の背景・経緯noteは本当に久しぶりの投稿になります。
久しぶり投稿の主たる理由はさぼっていたということなのですが,何度か続けて書いていた「日本語教師の資格」について,その後,状況がどんどん変化していて書きようがなかったというのもありました。
ちょっとおさらいをすると,2019年度の文化審議会国語分科会日本語教育小委員会に「日本語教育能力の判定に関するワーキンググループ」という会議体が
日本語教師の国家資格について(2)〜資格の位置付けと範囲
この記事は,日本語教師の国家資格に関する「日本語教育小委員会」の議論をもとに書いています。「日本語教育小委員会」は政策や法律を作るところではなく,政府に対する意見をとりまとめる専門家による会議体です。そういった前提は「日本語教師の国家資格について(1)」に書いてありますので,まず(1)を読んでからこちらに飛んできてください。そうでないと,いろいろと誤読してしまうと思いますので,よろしくお願いします
もっとみる日本語教師の国家資格について(1)〜日本語教育小委員会の役割と今後の動き
いよいよ日本語教師の国家資格の実現が見えてきた日本語教師の資格について,国家資格にしようという話があり,いろいろと報道もされています。この議論,当然のことながら,日本語教育関係者や日本語教師を目指す人たちにとって,大変注目されていると同時に,不安が巻き起こっていると聞きます。そこで,国家資格の議論に委員として参画した立場から,このことについて何度かに分けて書きたいと思います。なお,本件については今
もっとみる試験結果で学習者や教育機関の良し悪しを決めるって〜それダメでしょ
久しぶりのエントリーです,いろいろ考えるところがあり(サボっていたこともあり),しばらく書いていませんでした
さて,久しぶりの投稿では,ジャーナリストの出井康博氏の記事に関する私の見解を通して,試験結果で学習者や日本語教育機関の質を測定することに対する問題提起をしたいと思います。
ことの発端2019年5月10日に,日本語学校を国が評価する際の基準として,CEFRのA2レベルで行うことが妥当かど
カポエイラを見逃した〜わかりやすく伝えること
カポエイラ都内でいろんなことをして辻堂に帰ってきました。家に帰る前に,駅前のモールで晩御飯の買い物をして駐輪場に行こうとしたら,日曜だからか,何かのイベントをやっていました。僕がそこの前を通りかかった時,ちょうどカポエイラの演舞が終わって,出演者があいさつをしているところでした。「ああ,もう少し早く通ればカポエイラが見られたのになあ」とちょっと残念に思いました。カポエイラとは,ブラジル発祥と言われ
もっとみる自己実現と日本語教育
法案の審議や外国人増加に伴って,ここのところ,ニュースやネットの記事などで,日本語教育に関するものを多く目にするようになりました。日本語教育の取り組みが活性化することで,人々にどのような幸せを提供でき,どのようによい社会を作っていくことができるのか,改めて整理してみました。大きく分けると,学習者個人の生活を豊かにする「個人にとっての効果」と,社会にとっての「社会的効果」が考えられます。今日はまず,
もっとみる日本語教育学会と人事の話
春季大会無事終了しました週末(2019年5月25日,26日)は,日本語教育学会春季大会でした。猛暑の中,約1000人の参加がありました。ありがとうございました。一方で,外国人受け入れに関する政治的動きが活性化している中,隣接領域の学会である移民政策学会・日本言語政策学会共催の年次大会が,まったく同じ日程で開催されたのは,本当に残念でした。なんか,調整できないのかなあ,これ。ちなみに,日本語教育学会
もっとみる日本語学校の質保証とCEFRのA2について(3)
(1)(2)の続きです
今回は,法務省が募集しているパブリックコメントに関して,日本語学校の質保証に際してCEFRのA2レベルが妥当なのかについて書いてみたいと思います。
CEFRのA2とはCEFRについては前回触れましたが、そこでCEFRには言語教育・言語学習の具体的なレベル設定(A1〜C2までの6段階)と,各レベルでできることの能力記述文(Can-Do Statements;CDS)が提示